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画期的な網膜走査型レーザーを採用するアイウェアがまもなく発売に

VRもARも圧倒的な自然感 「RETISSA Display」の実力

どこにでもピントが合っている不思議な装着感

電源が入ったHMDを撮影してみた。反射光に見えるが、中が光っている

電源が入ったHMDを撮影してみた。反射光に見えるが、中でオレンジに光っている点がレーザー光だ

 前説が長くなってしまったが、ここからは実際使ってみての印象を書いてみたい。電源が入ったHMDを装着しようと目の前に持ってゆくと右目(筆者の利き目が右目であるため右目モデルを準備いただいた)のプリズムの奥に明るい点が光っているのがわかる。

 HMDを目に近づけると点光源がスルスルと大きくなった感覚があり、気がつくと右目の視界の中に映像が浮かんでいるのがわかる。なお、表示解像度は1024×600ドットだ。

 筆者は普段メガネをかけているのだが、このときには裸眼である。にもかかわらずデスクトップの映像ははっきりと見えている。ちょっとした驚きだ。

 スクリーンの真裏は見えないが、それ以外の部分は透過しており向こう側が見える。ただ、前述の通り筆者は普段メガネをかけている。

 このため、HMDを裸眼で装着しているとスクリーン以外はピントが合わずボケてしまっている。この点は使用者がメガネを掛けているがゆえの不都合だろう。HMD側のレンズに度を入れる必要があるかもしれない。

 右利き目の前の画面は鮮明で、現時点の機材ではまだ若干のにじみが感じられるが、製品版では改善されるそうだ。

 筆者はソース映像としてPCの画面、テレビ画像、ビデオカメラからの入力映像を試した。結果は非常にクリアな画像を得られた。これはなかなかに新鮮な体験である。

 なにせ近視の筆者がメガネをしていないのだ。さらに、右目の視野に浮かんだ動画や静止画画像の周囲には、その向こうがうっすら見えており、視界全部を入力画面に取られず周囲の状況がつかめた。

 このあたりは従来のゴーグル型ディスプレーとは大きな違いだった。その分没入感のようなものは減じるがそこは「ながら操作」向きとも言えるだろう。

VISIRIUMテクノロジという衝撃的な仕組み

VISIRIUMテクノロジと従来のHMDのAR用途での見え方の違い。前者の方がより融合された映像として見られる

VISIRIUMテクノロジと従来のHMDのAR用途での見え方の違い。前者の方がより融合された映像として見られる

同じVR用途での見え方の違い。VISIRIUMテクノロジだと目と映像(ディスプレー)までの距離がないため、忠実に映像の距離感を再現できる

同じVR用途での見え方の違い。VISIRIUMテクノロジだと目と映像(ディスプレー)までの距離がないため、忠実に映像の距離感を再現できる

 前述のVISIRIUMテクノロジがこの不思議な感覚を実現している。人間の目は角膜の次にある水晶体レンズが筋肉に引っ張られ、厚みを変えることで網膜上にピントの合った映像を映し出すという仕組みになっている。

 VISIRIUMテクノロジではこのピント調整の部分を省略してピントの合った画像を網膜の上に直接映しこむ動きをする。

 一方で、肉眼は従来の仕組みを使って残りの視野の部分では任意の場所にピントを合わせて映像を網膜に映しこんでいる。

 つまりは、プロジェクター画面部分とそれ以外の通常視、両方同時にピントを合わせることができるのだ。

 さらに言えば、プロジェクター画面部分については上記の通り「ピントを合わせる」という行為を意識する必要もない。また、いわゆる視力とは一切関係ないため、目が悪くともメガネなどの視力矯正を伴わずにピントが合うのだ。

 この特徴はかなり衝撃的である。理屈で言えば眼球水晶体のピント調整力が不調で見えていない人であっても「見える」はずなのだ。

 また、角膜の損傷や水晶体レンズの濁りなどからくる視力低下が発生している人であっても、レーザーが濁っていない場所を透過できるならきれいに画像が「見える」可能性が高い。

 直接網膜に映像投影するということの意味はこのあたりにも影響してくる。これらの特徴は本製品の将来適用分野として医療分野への応用が期待されている理由の1つでもある。

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