前回の記事では、10代のスマートフォンユーザーにおける動画の投稿や視聴できる動画専用SNSについての認知率を見ていくと、7割以上がショートビデオコミュニティ「Tik Tok(ティックトック)」を認知していることはとても注目すべき点であることを紹介しました。
前回に紹介をした株式会社ジャストシステムが実施した17歳から69歳の男女1100名を対象とする「動画&動画広告 月次定点調査(2018年6月度)」の結果を見ていくと、Tik Tokを「現在利用している」と答えた10代は10.5%、「以前は利用していたが、今は利用していない」は10.5%、「知っているが利用したことはない」は50.5%となっています。
「現在利用している」「以前は利用していたが今は利用していない」「知っているが利用したことはない」のいずれかに答えた人たちをまとめて、サービスの存在を知っていることを表す「認知率」はあわせて7割以上となります。
一方、Tik Tokを「知らない」と答えた30代が48.0%、40代は52.2%、50代は53.3%、60代にもなると68.0%です。これに「よくわからない」と答えた人を加えると、30代は各世代で7割以上、40代以上の各世代の大人たちは8割以上がTik Tokを「知らないorよくわからない」のです。
なぜ面白い? Tik Tokに触れて感じる「手軽に見てもらう」ための工夫
とはいえ「Tik Tokがなぜあそこまで人気なのかよくわからない」という大人も多いように感じます。正直、わたしもその一人でした。
前回の記事で紹介をした調査の結果を受けて、Tik Tokへ改めて触れてみました。これまでは、なにげない瞬間を写真や動画で気軽にシェアできるInstagramのStoriesを見ることが多かったのに対し、Tik Tokでも同じように動画を見るようになったことに気がつきました。
その要因を考えてみるとTik Tokには「閲覧の手軽さ」がありました。
Tik Tokはスマートフォンを持ち変える必要が無いタテ長の動画で、ひとつひとつの動画の長さは10秒程度の短尺。なにもせずそのまま見ているとその動画はループ再生を続けます。また、スマホの画面を指で下から上へスワイプ動作すれば次の動画へ移動。逆に上から下へスワイプすると前の動画に戻ります。Tik Tokには次々とスワイプをしながら、投稿された短尺の動画をどんどん見ていくことができる手軽さがあるのです。
もちろん、Instagram Storiesにも画面右側をタップすれば次の動画へ移り、左側をタップすれば前の動画へ移ることができる仕組みがあり、早いテンポで動画を見ることができる手軽さはあります。ただ、Instagram StoriesよりTik Tokのほうが優位であると感じるのは「動画(やTik Tokへの投稿者)の新たな出会い(発見)がとても容易」であることです。
アプリを起動して最初に目に入るTik Tokの「おすすめ」タブでは、人気のある動画はもちろん、いま流行しているのはどのような動画なのかも知ることができます。さらには、Tik Tokへ動画を投稿している投稿者(Tiktoker)も見つけていくことができます。
もちろん、お気に入りのTiktokerをフォローして「フォロー中」タブから動画を見ていくことが楽しみ方の基本です。それに加えて、「おすすめ」タブの動画をチェックして、新たにお気に入りとなるTiktokerを探して(フォローを)いくことも楽しくなります。こうした、動画やTik Tokへの投稿者の新たな出会いが容易であることも、Tik Tokを覗いていて感じる人気の理由でもあるのです。
「ウザい(しつこい)」とまで言われ、広告をネタにしたパロディも登場した
この1年ほどの間、Tik TokはライバルとなるYouTubeへ積極的に広告を展開していました。YouTubeで動画を頻繁に視聴している10代の若い世代の人たちを多く取り込むことに成功しているように感じる一方で、広告がいろんなところで展開されたことによって「Tik Tokの広告動画がウザい(しつこい)」とネット上で言われることもありました。
それが結果的に、人気YouTuberのゆきりぬさんを始めとした多くの動画投稿者の人たちが、Tik Tokの広告をネタにしたパロディ動画をこぞってYouTubeへ投稿したぐらいです。YouTubeを見る人たちには、これでTik Tokの名前を知ったきっかけにもなったのかもしれません。
しかし、積極的に広告を展開しただけでは、ここまで10代の子どもたちの人気なサービスとはなりえないはずです。
先に挙げた、次々とスワイプをしながら、早いテンポで投稿された短尺の動画をどんどん見ていくことができる「閲覧の手軽さ」や「新たな動画やTiktokerの新たな出会いの容易さ」など、Tik Tokには動画を視聴する「受け手」に気軽に見てもらうための工夫が凝らされています。さらに、動画を投稿する「作り手」のための工夫もいろいろ考えたものであると感じます。
次回はTik Tokへ動画を投稿する作り手、いわゆる「Tiktoker」がTik Tokへ気軽に、できるだけ多くの動画を頻繁に作って、投稿し続けてもらうために工夫されていると感じることを中心に、Tik Tokが人気な理由をもう少し深く考えていきます。
ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda)
ソーシャルメディアとライブ配信・動画メディアが専門のクリエイター。2010年よりスマホから業務機器(Tricasterなど)まで、さまざまな機材を活用したライブ配信とマルチカメラ収録現場をこなす。これらの経験に基づいた、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアに関する執筆やコンサルティングなど、その活動は多岐にわたる。
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