不十分な日本のデータ活用に一石を投じるデータビークル
最強の統計学をビジネスに活かせる、専門スキル不要のデータ分析ツール
データ分析を十分に活用するためのノウハウ
データダイバーは継続して使用することで次のような効果を発揮する。
1つ目は市場の変化を検知できるようになるという点。市場は目まぐるしく変化するため、これまで勝ちパターンだった手段が次の瞬間逆効果に転じることもある。長期的に使用することで、それまでと違う変数を検知し、次の一手が打てるようになる。
また、企業としてデータ分析に慣れてくると、分析結果を反映させる行動そのものについての敷居が低くなるため、今までと違う領域について新しく分析をする際のハードルが下がる。これまで顧客を軸に分析をしていたものが、商品を軸としてデータを見ることで在庫管理から物流までのコストにも目が向くようになる。
データダイバー導入後の効果としてわかりやすいのは、過去の経験則からではなく、現状つながっているデータや顧客コミュニケーションから、次なる行動を予測し、そこに手が打てるという点にある。
スーツを販売する株式会社はるやまホールディングスでは、データダイバーを使ってデータ分析を繰り返し、顧客の動向をつかんでいる。
たとえば、茶色い靴を購入している人、500円分のポイントを利用した人、ニットのワイシャツを購入した人などは来店頻度が高い傾向が見られる。この顧客の傾向から、新たにターゲットを絞り込んでダイレクトメールを出したり、店舗での商品配置の工夫をしたりといった施策を行い、施策の結果を検証し、さらにデータ分析を繰り返している。
売り上げ変動が見込めるターゲットに対して、「こうすれば来店回数が何回増えると具体的な表現で結果が出る」。データを分析しファクトで顧客を見られるのは、勘と経験に頼って時間をこれまでかけてきたコストの解消につながっている。
日本の企業にデータ分析が浸透しない理由
近年、世の中がエビデンスベースになり、データ分析の需要が加速している。また、データ分析を打ち手に活かせる会社が増えてきたと実感しているという。しかしながら、データ分析が十分に日本企業に浸透しているとは言い難い。その原因として、油野氏と西内氏は次の2点を挙げる。
1つ目は、意思決定のフェーズで詰まってしまうという点。
データ分析はそれをして「おしまい」ではなく、導き出された分析結果から次の打ち手を考えるまでがセットだ。だが、あらゆる打ち手は「既存の方法を否定すること」になるため、一歩を踏み出す意思決定ができずに尻すぼみとなってしまうケースが少なくない。それはAIの現場でも起きており、機械学習でのブラックボックスな技術で決定された事項について、その裏付けをするために人々は改めてデータ分析に戻ってきているというのだ。
この点について西内氏は、「データサイエンスは効率的にイノベーションを起こすための技術だと考えている。我々がお手伝いしているデータ分析というのは、非定型的に、戦略やオペレーションを変更したらいいかという部分に貢献する。これはいわば”ゆるやかなイノベーションを起こせるかどうか”ということ。一方AIを使う場合は、外販できるようなプロダクトを新しく切り出してスケールメリットを考えたほうが効率はいい」という。
2つ目には、そもそも日本にはデータサイエンティストがいないという問題点がある。
データサイエンティストを多数抱えていると喧伝する企業もあるが、一言に「データサイエンティスト」と言ってもさまざまなスキルがあり、得手不得手がある。たとえばデータ整備や、高速な処理基盤を作ることが得意な人ばかりがいても、ビジネスでの打ち手につながる分析結果は出てこない。一方で、データ整備や基盤の構築ばかりが自己目的化して膨大な時間と手間を費やすケースもある。
当初、油野氏らはこの問題を提供するソリューションのみで解決できると考えたが、データサイエンティストを教育する必要性を感じ、現在ではソリューション自体の導入期間に4ヵ月間のハンズオン研修を設けている。
もともと統計学と並行して行動科学を専門としてきた西内氏は、データサイエンティストの教育について次のようにも述べる。「データサイエンティストといえば、社員の中から理数系の人間を見つけて分析を教えるとか、ポスドクの人をがんばって採用しているが、意外とみんなが無駄にしているリソースというのが、文系の心理学を専攻していて、卒論で調査と統計解析の経験がある人だったりする」(西内氏)
データ分析を十分に活用するために、データビークルではコンサルテーションをはじめる前に、組織の中で4つのポジションを決めてもらうように伝えている。
直接ツールを使ってデータ分析をすることになる分析担当者/社内のデータを管理しているデータマネージャー/現場の事情を把握しているエキスパート/データ分析をもとに意思決定をするボス。この4役がデータ分析ではそれぞれ重要な役割を果たす。特に、ボスとエキスパートに就任する人物は適性を見極めることが大切だ。
逆にその理解が足りなければ、データ分析でのメリットを十全に生かすことは難しいようだ。
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