7月31日予約開始! 鹿野司氏、西田宗千佳氏がQDレーザのRETISSA Displayを語る
気分はもうボトムズ! 2018年、網膜投影型がVRブームを革命する
網膜投影ならば、近視乱視関係なくピントが合う!
西田 あえて網膜に映す理由ってあるのでしょうか?
手嶋 我々は、「ロービジョン」と呼ばれるメガネなどをかけても矯正視力が0.3以下というような方々への支援デバイスとしても開発を進めています。医療機器の扱いになるのですが、具体的には、メガネの眉間の部分に実装したカメラで視線に近い映像を撮り、網膜にダイレクトに映すという方法です。人工水晶体と言いますか、人間の眼の代わりにピントを合わせてくれるものですね。また、ハンズフリーも特徴の1つです。
鹿野 じつは僕、これ使えないかもしれません。網膜症で右目の視野が一部欠けているんです。
手嶋 なるほど……残念ながら鹿野さんが仰るように、網膜症の方には技術の特性が出にくいのです。前眼部、つまりレンズの部分に疾患がある方々へは視力の向上も期待できるのですが。
西田 搭載カメラはどのくらいの視野をどんな風に撮っているんですか? というのは、もともと目に入る視野の広さは決まっているじゃないですか。それに対して、入ってくる映像をどうマップするかという問題なんですけど。
手嶋 ピクチャ・イン・ピクチャのように、視野角25度の範囲に16:9の映像が投影されます。カメラの位置と倍率を調整し、視界の一部にほぼ重なるよう、カメラを実装しています。
西田 基本、ワン・バイ・ワンのイメージということですね。
手嶋 そうですね。
鹿野 中心暗点(視野の中心部分が見えない)の場合、字が読めなくなりますが、このRETISSA Displayで補助できますか?
手嶋 やはり難しいですね。眼科医ではないのであまり突っ込んだお話はできないのですが、周辺視野ですと「何かある」と感じることはできますが、大きく拡大しないと字が読めるまでには至らないようです。視野の中心だと、現在、カメラが付いた医療用モデルでの見え方は視力に例えると0.4~0.5程度ですが、1.0を目指して研究・開発を進めています。
一方で、今回発売するRETISSA Displayはカメラが付いていない民生用です。要は、「HDMIのコネクタから映像を受け取って網膜投影で見るだけの機械」と割り切った製品です。これは、医療に限らず広く使ってもらうことで、このデバイスの可能性を市場に問いかけたいという想いを込めています。今回アスキーストアで販売する理由もそこにあります。大学やメーカーが購入して検証や研究に使うのもアリですが、ぜひギークな方々に遊んでもらいたいですね。
レーザーの天敵は睫毛!?
鹿野 網膜に対するダメージはどのような。
手嶋 まずオフィスなどの照明が目に入ってくる強さと、RETISSA Displayから入ってくる光の強さを比較すると、同等かRETISSA Display出力のほうが弱いです。また、レーザービームは網膜上をラスタースキャンしますので、単位時間あたりのレーザーの照射量はさらに下がります。
西田 なるほど。数ミリ角の面積に対して、レーザーが往復スキャンすると。
鹿野 (RETISSA Displayを掛けながら)亀の写真が見えますね。
手嶋 よかった! 見えているようですね。
鹿野 (網膜症で)左下がダメなんですよ。中心が欠損していなければ見られるようですね。
手嶋 はい。そしてRETISSA Displayの特徴をわかりやすく体験していただくために、「普通の視力の方が覗くと、強度近視と同じぐらいの焦点距離になるレンズ」を持ってきました。これをRETISSA Displayに取り付けて……もう一度掛けてみてください。
鹿野 ああ、レンズを付けると周りの風景は(近視のように)ボケるのに、RETISSA Displayから投影された映像はピントが合ってますね。
手嶋 これがフリーフォーカスという特徴です。視力の影響を受けにくいということがおわかりになられると思います。
西田 若干気になっているのが睫毛の影響なんです。瞳孔の上に睫毛がかかっていても、普通の視野だと人間は睫毛を無意識にキャンセルするじゃないですか。ところがRETISSA Displayは……。
手嶋 睫毛には問題が2つあります。まず部品に睫毛が引っかかって物理的に痛くなる可能性。そして細いビームを使っているので睫毛の影が映りやすいことです。我々はこの問題を解決すべき問題と真剣に捉えていまして、睫毛に接触しかねないリフレクターを薄くする研究を進めています。もう1つは睫毛が引っかかりにくくなるような形状に変更することです。
西田 右目だと結構睫毛が邪魔するのですが、左で見てみたら、生え方が違うからなんでしょうね、断然きれいに見えました。
手嶋 人間の顔は上から見ると、鼻を中心に左右対称ではなく、平行四辺形だったり、台形だったりとわずかに歪んでいたりするんです、そういったことも原因の一つかもしれませんね。ちなみにRETISSA Displayでは片目にモジュールを搭載していますが、両眼モデルも簡単にできます。2台買っていただいて、2つ組み合わせると両眼用になります(笑)
鹿野 先ほど視野角25度ぐらいの空間と仰いましたが、これを拡げることはできますか? あまり映像が大きいと瞳孔が動いて見えなくなってしまうとは思いますが。
手嶋 多少は可能ですが、限界があります。可能性としてはアイトラッキングを実装して、かつ目の移動量に合わせて投影画像も変えるという、結構ハードなシステムを作ればさらに広げられると思います。
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