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ゴジラとドヴォルザークの異色のコラボ、渡辺美里ほか

麻倉推薦:史上最高のピアノ録音に触れた!! 5月の必聴ハイレゾ新譜

2018年06月10日 11時30分更新

『Bruckner: Symphony No. 1』
Valery Gergiev

 ブルックナーがオルガンを弾いていたリンツの聖フローリアン教会でのライブ収録。教会録音というと、長い残響と奥がひじょうに深い音場を思い浮かべるが、本録音は、ソノリティも十分にありながら、オーケストラ自体の明瞭度も高い。

 もちろんスタジオでの高解像度録音とは異なるライブネスだが、ブルックナー+教会録音というスペックから想像するような、お風呂的な音場では、ない。チェリビダッケの薫陶を受け、当時「世界最高のブルックナーオーケストラ」と称されたミュンヘンフィルならでの密度感の高い演奏だ。2017年9月25日、リンツ、聖フローリアン修道院でのライヴ録音。ミュンヘン・フィル自主制作録音盤。

FLAC:96kHz/24bit
Waner Music、e-onkyo music

『Johnny Cash: Forever Words』
Various Artists

 2003年、ジョニー・キャッシュが亡くなった後に発見された詩や歌詞、手紙をもとに編纂された未発表詩集【FOREVER WORDS:THE UNKNOWN POEMS】を元に、ウィリー・ネルソン、クリス・クリストファーソン、エルヴィス・コステロ、クリス・コーネル……などの16人のアーチストが作曲、自ら歌った話題のアルバムだ。ひじょうに楽器とヴォーカルの音像が鮮明で、輪郭が明確に描かれる。複数アーチストのコラボレーションアルバムとなると、音調もバラバラが予想されるが、見事に違った。明確で、明瞭な音調は統一されている。各歌手のヴォーカル音像は安定的にセンターに定位し、全編共通して質感が透明で、音場の見渡しもすっきりとしている。

FLAC:96kHz/24bit
Legacy Recordings、e-onkyo music

『ribbon -30th Anniversary Edition-』
渡辺美里

 ニューヨークのスターリングサウンドで、今回、アナログテープからリマスタリングされた。第1曲「センチメンタルカンガルー」は明確で明瞭な音調。前向きな音楽進行と共に、音作りも前傾姿勢で、ぐんぐん進んでいく。ボーカル音像は、バックのビックバンドにうまく溶け込む。つまりヴォーカルが大きくフューチャーされるわけではなく、まるでバンドの一員になったような整然としてバランスだ。ヴォーカル芸だけでなく、バックのミュージシャンの芸も同時に聴くべきアルバムだ。輪郭が明確で、音のひとつひとつに隈取りが与えられ、ひじょうにくっきりとした音だ。F特的なキャラクターが少ないので、ハイレゾ向きだ。

FLAC:96kHz/24bit
Sony Music Labels、e-onkyo music

『MIGNONNE (Mastered by Bernie)』
大貫妙子

 RCAに移籍した二枚目のオリジナルアルバム。ロサンゼルスのバーニー・グラントマンスタジオでリマスタリングされた。78年のアナログマスターテープを96kHz/24bitに変換した音源からリマスタリング。ひじょうにすっきりとして、透明感の高い音調。特定のF特的、Dレンジ的な強調が少なく、フラットで、伸びやかな印象。彩度感も平明だ。バックもストリングス、ギター、ドラムス……と楽器は多いのだが、前面のヴォーカルを阻害することなく、良きバランスを保っている。爽やかなビート感が、この時期の大貫らしさを醸し出している。

FLAC:96kHz/24bit
Sony Music Direct、e-onkyo music

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