アップルは米国現地時間の6月4日10時、日本時間の6月5日早朝2時に米国カリフォルニア州サンノゼにてWWDC 2018を開催します。WWDCというのはご存じWorldwide Developers Conferenceの略で、アップルが次世代のOSやサービスを開発者に向けて発表する重要なイベントです。
また、最近ではコンシューマー向けのプロダクトが発表される場としての一面もあります。昨年はこのWWDCで、10.5型のiPad ProやXeon W搭載のiMac Proのほか、Kaby Lake世代のiMac/MacBookシリーズ、音声アシスタントのSIriを搭載したスマートスピーカーのHomePodなどのプロダクトが発表されました。さらにWindowsに大きく遅れをとっていたVRの開発環境についての紹介もありました。
では今年はどうなるでしょうか。確実に発表されるのは毎年恒例となっているmacOS、iOS、watchOS、tvOSなどの次世代バージョン。その詳細な機能もデモが披露されることでしょう。とはいえ、macOS、iOSについては成熟した感もあり、見た目が派手な機能が搭載されることは考えにくいです。最近は、iPad用に組み込まれた機能が、次期OSでiPhone向け、もしくはMacに向けに実装されるいう傾向もあります、iPadのDockや画面分割などの機能がiPhoneに取り入れられるのかもしれません。
ハードウェアに関しては、MacBookシリーズ、iMacシリーズとも昨年同様、プロセッサーまわりのアップデートがあるかもしれません。これは基調講演などでの発表ではなく、プレスリリースレベルになるかもですが。さすがにCoffee Lake世代のプロセッサーは載せてくると思いますし、後述するVR視聴環境用にCTOでハイエンドのGPUを選べるようになればうれしいです。
また、昨年のiMac Proのように2019年に登場予定のMac Proについてもなんらかのアナウンスがあってもおかしくないです。Xeon W搭載のiMac Proを超えるパワフルなモンスターマシンであってほしいです。
ついでといってはなんですが、2014年から長らくアップデートが止まっているMac miniについても、いい加減どうするかはっきりしてほしいところ。軽量コンパクトな据え置き型Macとして、スタックして使ったり、サーバーとして使ったりと一部ではいまだに根強い人気がありますからね。ごく少数かもですが、待ち望んでいるユーザーは確実にいるのです。
iPhone関連では、iPhone SE 2の発表が期待されていますが、例年9月に旗艦モデルを発表するので、3カ月前の6月にわざわざ旗艦モデルと競合するかもしれない廉価・小型モデルを発表することはないと思われます。
iPadについては、昨年登場した10.5型を含む新iPad Proシリーズの性能強化版や新しいカラバリが追加されるかも。とはいえ性能強化については、SoCにアップル独自のApple Aチップを搭載していることもあり、インテルCPUを搭載するMacに比べると1年おきに性能強化したところで市場に与えるインパクトは弱いか。ロジテック(ロジクール)の「Crayon」のようなApple Pencil準拠の廉価なスタイラスが出てくるとうれしいです。カラバリはやはり(PRODUCT) REDですね、デカイiPadであの鮮烈な赤はかなりグッときます。
Siri搭載のスマートスピーカーであるHomePodについても、欧米、オーストラリア以外、つまり日本、中国を初めとするアジア語圏のサポートを発表してほしいところです。これまた後述するVR視聴環境にも絡んでくるのですが、HomePod経由でVR視聴環境を操作できるようなオプションが用意されると素晴らしいかも。
開発者向けにウワサされている目玉的な内容としては、macOSとiOSの開発環境の融合です。現在でもアップルが無償で提供している統合開発環境「Xcode」を使って両OSのアプリを別々プロジェクトファイルで開発可能ですが、次期Xcodeでは同じプロジェクトファイルを使ってソースコードレベルでの互換性が保たれる感じなるならビッグニュースですね。
同時開発できる環境が整うことで開発意欲が高まるのは、iPad用アプリとmacOS用アプリの融合じゃないでしょうか。iPadとMacBookシリーズは同じような画面サイズでUIを設計できるので開発できるので、これまでiPadやmacOSで人気を博してきたテキストエディターや画像編集ソフトなどがより移植しやすくなるでしょう。この流れが進んでいくと、iPad ProシリーズとMacBookシリーズの使い分けがさらに悩ましくなりそうです。この先にはやはり、かねてからウワサされているMacBookシリーズへのApple Aチップの搭載があるんじゃないかと。Xデーまでに、macOSアプリとiPad系iOSアプリをもっと融合しておこうという狙いがあるはず。
そのほかWindowsに大幅に遅れをとっているVR開発環境、VR視聴環境についてもなんらかの発表がほしいところです。マルチプラットフォーム開発を前提とするとアプリの開発環境は純正ではなくUnityなどの開発環境をメインしてアップルはサポートに回るほうが現実的かと思います。視聴環境については、純正のヘッドマウントディスレプレー(HMD)を発表するか、Made for iPhoneのような認証制度を設けて、没入感の高いVR環境を提供してほしいところ。ここでもHMDは有線でごちゃごちゃつなげるような環境ではなく、AirPlayでワイヤレスですっきりさせ、かつスタンドアロンで動作するものが望ましいです。個人的には、ディスプレー内蔵型のHMDで、コンテンツはiPhoneやApple TVからAirPlay出力、操作はiPhoneやSiri Remoteを使うというのがアップルっぽいかなと。
しかし、喜んでばかりもいられない事実もあります。順当なバージョンとしては10.14になると考えられる次期macOSでは、32ビットアプリのサポートが完全に廃止されるからです。「いまさら32ビット?」と思う読者もいるかと思いますが、32ビットのCarbon API(Mach-O Carbon)を利用しているアプリはいまだに多いのです。人気もしくは定番となっているアプリは早くから64ビット化を進めているので混乱は少ないかもしれません。Mac App Storeも2018年の1月からは32ビットアプリの新規配布を中止しましたしね。しかし、長らくバージョンアップされていないアプリや、業務用などですでに誰が開発したかわからずだましだまし使っているアプリは32ビットアプリのままだったりします。
自分が使っているアプリが64ビットに対応しているかどうか調べるには、Finderのアップルマークをクリックして「このMacについて」を選び、現れたウィンドウ内にある「システムレポート」をクリックしましょう。左側にあるサイドバーの下のほうに「ソフトウェア」→「アプリケーション」を選べば、64ビット未対応のアプリが一目瞭然です。アップル純正では「DVDプレーヤ」や「InkServer」などが該当しますね。もし愛用アプリが32ビットのままだとわかったら、開発者に開発継続を要望する熱烈なメールを送るか、代替アプリを探す必要があるでしょう。
というわけでみなさん、5日午前2時に開催されるWWDC 2018を期待して待ちましょう!
【追記】
現地時間の朝5時前(日本時間の5日21時ごろ)に、WWDCの会場からオレンジのTシャツを着たスタッフが拍手しながら外に出てきました。気がつくと、開発者のみなさんも長蛇の列でした。
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