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含蓄だらけのMANABIYAのパネルディスカッションを詳細レポート

クックパッド、VOYAGE、メルカリが語るエンジニアにとって理想の制度

エンジニアは制度設計やマネジメントに向いている

 面白いのは技術評論会では評価レポートが公開されているという点。始まった当初は小賀氏とCTOだけがレポートを閲覧していたが、最近は社内のGitHubリポジトリを介して、全社員に公開されているという。「レポートが公開されれば、評価する側も手も抜けない。評価者からも他の評価レポートを参考にしたいという声が挙がり、評価スキルを上げるために公開することにした」(小賀氏)

 一方でメルカリとクックパッドは評価を公開していない。梶原氏が、「公開が行きすぎると、評価されることがミッションになってしまいませんか?」という疑問をぶつけると、小賀氏は「僕は評価される側のアピール力を上げた方がよいと思っている。エンジニアは制度もハックするし、ハックすることによって成長できるのであれば、どんどんハックしてもらいたい」と答えた。

メルカリ Engineering Operations Teamマネージャー 梶原 賢祐氏

 成田氏は、「コメントがそのまま見えることが評価の透明性につながるとは言えない。それよりもフェアに評価される方が重要で、突き詰めれば本人に見せないことすら必要かもと思っている。本人に見せると、評価者もわかってしまうし、フィードバックが馴れ合いにつながってしまう」と危惧する。人間関係と評価という課題は、エンジニア界隈だけでなく、人事の永遠の課題だ。「やっぱり人間なので、嫌われたくない。だから、評価レポートも最後は私がレビューしている」と小賀氏はコメントした。

 こうしたVOYAGEの技術力評価会について、梶原氏は、「いろいろな角度で評価できるところがとてもよい。今の市場や流行を持ち込んで評価できるところが素晴らしい」とコメント。成田氏も「うらやましい。1人のエンジニアとして、あったらうれしいだろうなと思う反面、運用する側を考えると大変そうだなとは思う。運用体力からすると、うちはまだ無理。外部のエンジニアを巻き込むとか、小賀さんの人脈がすごいとしか言いようがない(笑)」とコメントした。

 モデレーターのオオタニが、「どう考えても小賀さん大変そうですが、楽しさとか、モチベーションってなにかあるんですか?」と運用負荷について聞くと、「楽しいかと言われると、楽しいわけじゃないんですが、基本的にはエンジニアリングは好き。制度は会社をよくするためのエンジニアリングだと思うので、前向きに取り組む価値はある」とコメントする。

 実は小賀氏は前日のエンジニアの生存戦略セッションでも「エンジニアは制度設計やマネジメントに向いていると思っている」と指摘している。1人でできないことをチームで実現したり、メンバーからもアラートが上がるような仕組みが組み上げるのは、いわばシステムの構築や運用と同じという意見だ。

「仕組みに落とせるというエンジニアの持つ力は強力。僕も長らくエンジニアだったけれど、この2年は採用や技術の見せ方、評価などの仕組みを作る側に回っている。エンジニアがマネージャーに寄っていくという方向性は全然ありだと思う」(梶原氏)

エンジニアで大事なのは自主性。教育は制度として用意するものではない

 3つめのお題は、エンジニアの教育制度について。先に言ってしまうと、3社とも教育制度と呼べるモノは存在せず、教育に関しては、会社が制度として設けるより、意欲のあるエンジニアを後押しできる仕組みの方が重要というのが共通の意見だった。

「エンジニアで大事なのはやはり自主性。自分が成長するにはどうしたらよいか自分で考えるというのは、僕がエンジニアに求める条件。結局、本人がなにを一番やりたいかが重要。その点、流行の早いIT業界においては、若い人が一番、技術動向の変化を感じているはず。一歩遅れで、会社で研修や勉強会やるより、若い人たちが外の勉強会に出て行って、どんどん知識やノウハウを得られるよう後押しする方が、持続可能だし、機会を引き出せる」(成田氏)

「うちも教育制度のようなものはない。エンジニアは日々の業務でレビューを繰り返す方がよいと思っている。チーム内で困ってそうな人に声をかけるとか、定期的にレビューするといった文化を作る方がよっぽど大事」(小賀氏)

「僕も新卒の時に研修とか受けていたけど、ほぼほぼ寝てたり、別のことやってたりしてた(笑)。やっぱり自分が興味があることじゃないと、集中できないと思う。新入社員と3ヶ月かけてアプリを作ってみるとかやってみようと思ったけれど、谷底に突き落とすようなOJTの方がよっぽど身になると思い直した。メルカリの場合、新入社員にはメンターが付くので、入社した際に困難をどうやって対処するかも相談できる」(梶原氏)

 一方で、新入社員がいち早く業務につけるようにするための研修や、グローバル企業として重要な語学に関しては一部制度化しているようだ。

「うちも英語しか話せないようなメンバーが徐々に増えてきているので、日本語しか話せないメンバーに対してはオンライン英会話サービスを利用できるを受けられるような制度がある。会社全体としてもグローバルオペレーションチームがあるので、バイリンガルメンバーのミーティングに参加させる機会を用意したりしている」(梶原氏)

「グローバルチームもあるけど、メルカリさんほど語学サポートは充実していない。うちは能動的に勉強させたい方向なので、英語でのレビュー依頼がいきなり海外から飛んでくるみたいな機会をいかに増やすかを重視している。危機感を自分で感じれば、勉強への一歩を踏み出せるはず」(成田氏)

「語学に関しては特に制度化はしてない。事業責任者のMBA取得を支援するような制度はある。基本は必要に応じてという感じ」(小賀氏)

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