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人気YouTuberがプレッシャーと日々戦っている理由

2018年03月27日 17時00分更新

文● ノダタケオ(Twitter:@noda) 編集●ちゅーやん

 動画共有サイト「YouTube」へ投稿された動画がネットやマスメディアで話題になることがあります。それが、“良い話題となる動画”であれば良いのですが、残念ながら、話題となる動画のほとんどは“悪い話題となる動画”であることが多いのかもしれません。

 最高速度が80km/hとされている高速道路で、その最高速度を159km超える239km/hで大型バイクを運転し、速度計を映し出した動画をYouTubeへ投稿したことがきっかけで、3月23日に、運転した(投稿をした)男性が道路交通法違反(速度超過)で書類送致されたというニュースが話題となりました。

 報道によれば男性は「高評価を得てコメントを増やし、広告収入を得たかった」と供述。普段はツーリングなどの動画を投稿していたものの、コメント数が少なく、今回の投稿に至ったとされています。

収益を得ることができるマネタイズ手段そのものを「悪」と結論づけるには早計

 いま、YouTubeには「YouTubeパートナープログラム」と呼ばれる動画の総再生時間やチャンネル登録者数などの基準をクリアした上で、たくさんの人に動画を再生してもらうことで、収入を得ることができる仕組みがあります。その結果、YouTuber(YouTubeクリエイター)という職業も生まれました。

 さらには、ニコニコ生放送やSHOWROOMのようなライブ配信メディアやブログメディアでも、広告収入やギフティング(投げ銭)の仕組みが生まれ、YouTuberと同じようにライブ配信をしたり、ブログを書いたりすることによって、クリエイターがマネタイズの手段(=お金を稼ぐ)をもつことができるようになっています。

 しかし、それをYouTuberのように“職業”としていけるぐらいの人気となるには、コンテンツをよりたくさんの人に見てもらえないといけません。たくさんの人に見てもらうために、更なる創意工夫が正しい創造性ある方向へつながれば良いのですが、残念ながらそうならないルールやモラルに反した方向につながってしまうことがあるのも事実。その結果、炎上(悪い意味での話題)となり、速度制限を大幅にオーバーしたニュースのようなマスメディアに取り上げられてしまうぐらいの大きなトピックになってしまうことがあります。

 ここで勘違いしてはいけないのは、ネット上でのマネタイズそのものを「悪」と結論づけてはいけないということ。ネット上で活動することによって生計を立てている人は皆全てが悪目立ちしたことでお金を稼いでいる、と誤った理解をしている人は考えを改めるべきです。

 創意工夫があり、クリエイティブ性のある良質なコンテンツを生み出すクリエイターには、見ている人から正しく評価されます。その結果、なんらかの形で収入を得て、職業とすることができる仕組みは必要です。このような仕組みは一過性のものではなく、これからの時代ではごく当たり前のこととなっていくはずです。

いま人気のYouTuberのように、簡単には「人気」にはなれない

 ただ、YouTuberのようなクリエイターを目指すこれからの人たちは、ルールやモラルを守らなければならないことはもちろん、地道な努力も必要であることは改めて知っておいてほしいのです。いま人気のYouTuberのように、「人気」になるための近道はないのです。

 これは、学校生活における「定期テスト」と似ているように思います。

 普段、テストでなるべく良い点をとるために、地道な努力(勉強)をしています。そして、効率良く勉強をするために、創意工夫をして勉強方法を模索する人も多いでしょう。

 良い点をとるための創意工夫が正しいものであれば良いのですが、「カンニング」などというルールやモラルに反した誤ったものであれば、もちろんこれまでの努力は無効となってしまいます。それだけでなく、その人自身に対する周りからの信頼も失ってしまいます。たとえ、カンニングがその時にバレず、試験で良い点を出したとしても、結果的には「その人自身の力で得た本当の力(成績)ではない」はずです。

 その一方で地道な努力や正しい創意工夫を続けてきても、良い点をとることがなかなかできなかったり、一度良い点をとれても継続して取り続けていくためのプレッシャー(焦り)を感じたりすることもあるかもしれません。

 いま人気のYouTuberも定期テストで良い点を継続して取り続けていくためのプレッシャーと似た「常に高評価を得られるようなコンテンツを生み出せるかどうか」のプレッシャーを感じながら、毎日のように地道な努力をし、創意工夫をしている人がほとんどです。

 ルールやモラルに反したコンテンツを生み出してしまえば、そのコンテンツはまったく評価もされませんし、そのクリエイターは周り(ファン)からの信頼を失います。仮に、炎上するかもしれない悪い動画で人々からの話題を得たとしても、それは瞬間的で一時的なものですし、その人自身の名が広まったとしても、本当のファンをつかむことは不可能なのだと思うのです。

 「好きなことで、生きていく」ことができる時代だからこそ、ルールやモラルに反することのない創意工夫のあるコンテンツを生み出していく必要があるはずです。その結果、YouTuberのような新しい職業がごく当たり前の職業としてなっていくためでもあるのではないでしょうか。

興味を惹くコンテンツを作り出す難しさはどのメディアも同じ

 とはいえ、定期的に継続して視聴者や読者などのファンの興味を惹き続けるコンテンツを生み出していくことの難しさは、YouTubeなどの動画メディアに限らず、新聞や雑誌、テレビなとのマスメディアにも共通して言える「悩み」でもあります。

 読者などから関心を惹き続けるため、ルールやモラルに反したり、事実に基づかない内容だったり、内容が過激な方向へ向かってしまったりということはどのジャンルのメディアにおいても起こり得ます。

 コンビニで買うことができる週刊誌やインターネット上で見ることができる記事も、多くの人に見てもらう(買ってもらう)ことによる収益を得るために、タイトルやコンテンツがやや過激なものとなることがあるのと同じです。

 コンテンツを生み出すクリエイターが自分自身で誤った道に進まないようにすることは最も大事なことです。それでも、YouTubeなどのプラットフォーム自体がクリエイターが投稿する内容を精査するなどの対応が必要になってくるのかもしれません。今後はネットでお金を稼ぐという行為がいま以上に老若男女問わず一般化すると思われます。そうしたとき、クリエイターが誤った道に進むのを食い止めるプラットフォームこそが新時代の立役者になるでしょう。

ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda

 ソーシャルメディアとライブ配信・動画メディアが専門のクリエイター。2010年よりスマホから業務機器(Tricasterなど)まで、さまざまな機材を活用したライブ配信とマルチカメラ収録現場をこなす。これらの経験に基づいた、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアに関する執筆やコンサルティングなど、その活動は多岐にわたる。
nodatakeo.com

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