アスキー主催「IoT&H/W BIZ DAY 5」基調講演レポート
経産省が語るConnected Industriesプレイヤーを勝たせる支援策
2018年3月22日、KADOKAWA アスキー編集部は恒例となる「IoT&H/W BIZ DAY 5」を開催。会場を飯田橋から赤坂インターシティカンファレンスに移した今回の基調講演では、経産省で情報政策を担当する河野孝史氏が登壇し、Connected Industriesを実現するスタートアップの支援策を披露した。
データの利活用が進まない課題先進国の日本
IoT&H/W BIZ DAY 5の基調講演に登壇した経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 課長補佐(統括)河野孝史氏は、昨年のドイツCeBITで発表された「Connected Industories」を実現するスタートアップ施策について説明した。
市場原理とテクノロジーをベースにネットからリアルに展開する北米や、産業分野でネット化を推進するIndustry 4.0をドイツに比べて、少子高齢化や労働力不足など社会課題の先進国である日本は、AIやIoTなどをいち早く社会実装できる環境にある。しかし、データの利活用に関しては、諸外国に比べて大きく遅れをとっているのが実情。「統計的に見れば、データを集めているユーザーは多いが、それをうまく組み上げ、新しいものを作るには至ってない」(河野氏)という認識だ。
こうした課題感を背景に、昨年のCeBITで日本政府として発表したのが「Connected Industries」のイニシアティブだ。日本ならではの産業コンセプトを押し出した「日本版Industiry 4.0」とも言えるConnected Industriesは、今までバラバラに管理されていたデータをつなぎ、有効活用することで、社会課題解決を進めるコンセプト。海外プラットフォーマーに強みがあるWebやスマホなどのデータだけではなく、産業データやパーソナルデータまで視野を広げて、活用を進めて行く方向性だ。
2017年10月にはConnected Industriesの重点5分野である「自動運転・モビリティ」「ものづくり・ロボティックス」「プラント・インフラ保守」「スマートライフ」「バイオ・素材」を発表。また、横断的政策として「リアルデータの共有・利活用」「研究開発や人材育成、サイバーセキュリティなどの基盤整備」「幅広い組織や企業へ裾野の拡大」なども掲げられている。2018年度はConnected Industriesを中心に据えた経済の成長戦略を策定するとともに、民間企業や有志などでConnected Industries自体を考えるシンポジウムやパネルディスカッションなども進めているという。
データの共有・活用を進める企業やベンチャーを強力に支援
後半は経産省が手がける具体的な法制度や支援策の説明に移る。まず産業データの活用に関しては、個社のデータの囲い込みを防ぐため、セキュリティ確保を要件としてデータ活用を行なう民間事業者を認定・支援する制度を進める。いわゆる「Connected Industries税制」も検討されており、データの連携や利活用により生産性を高める事業計画に対して優遇税制を適用する予定だ。
さらに補正予算において、系列を超えたデータの連携を推進する産業データ活用促進事業として18億円、大手企業とベンチャーとのAIシステム共同開発支援事業で24億円を用意する。後者に関しては、「データを持っている大手企業とAIベンチャーとの連携を進める。一対一の深い協業関係の構築を支援する」(河野氏)という。短期のPoCのみでプロジェクトが終了してしまう、成果物の評価が難しい、ベンチャーが下請けになりやすいなどのIoTやAI関連の課題を解消し、共同開発を推進する狙いだ。
ベンチャー施策に関しては、36億円超の「グローバルベンチャー・エコシステム加速化事業費」を計画する。こちらは「Startup Japan」(仮称)としてグローバル企業に勝てる日本のベンチャーを集中投資し、ブランディング支援や量産化に向けて試行錯誤をできる場所を作っていくという。
さらにハードウェアという観点では、IoTの進展でハードウェアが身近になってきたが、ものづくりの量産化には大きな壁があると指摘。「今までは大企業の下請けしてきた町工場に若者が飛び込んできて、このデバイスを1万個作ってくれという話が起こりうる」(河野氏)とのことで、スタートアップのものづくりを容易にする「スタートアップファクトリー構築支援事業」を計画している。日本の経済産業施策としてConnected Industriesへ注力する方向性と具体的な振興策を披露した河野氏は、各種支援事業への理解と応募に向けた検討を依頼しつつ、講演を終えた。
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