NTTドコモ 代表取締役社長、吉澤和弘氏が27日、スペイン・バルセロナで開幕した「Mobile World Congress 2018」の基調講演に登壇。2020年に開始予定の5G商用サービスに向けた取り組みを紹介した。
内容の中心は、同社が2017年4月に発表した中期戦略2020「beyond宣言」だ。「これまではネットワークが開始してサービスが登場したが、5Gではネットワークとともにサービスが利用できるようにしたい」と述べた。
5Gは最初から新しいサービスとともに開始
そのために多様な企業とパートナーを組む
昨年の来場者は10万人。モバイル業界最大のイベントMWCが幕を開けた。前日からメーカー各社の端末発表が続く中、吉澤氏はMWCの初日午前の基調講演に登壇した。MWCは4日間の会期に連日基調講演が開かれるが、その初回となる。
今年のMWCのテーマは”Creating a Better Future”。吉澤氏は「5Gで”Better Future”を作るにあたっての取り組みを紹介する」と切り出した。
NTTドコモはネットワークの構築と提供だけでなく、1999年にスタートしたiモードではプラットフォームに拡大するなどビジネスを変革させてきた。「dマーケット」でサービスに乗り出したのち、現在のビジネスのキーワードは「Co-creation(協創)」だ。
新しい中期計画はその流れにあり、来たる5G時代に向けたものだ。「5Gを利用してパートナーと共に新しい価値を提供し、顧客をインスパイヤする」と吉澤氏は趣旨を説明する。具体的には、顧客向けに「お得、便利」「エンターテインメント、驚き」「満足、安心」と3種類の価値を、パートナーと共に創造する価値を通じては「産業への貢献」「社会的課題の解決や地方創生」「パートナーのビジネス拡大」を実現していきたいとする。
beyond宣言は6つの宣言で構成されるが、この日は宣言4「産業創出」、それに宣言6「パートナー商流拡大」を取り上げた。
宣言4の産業創出は5Gを土台とするもので、吉澤氏は「NTTドコモは2020年に5Gをロールアウトする」と会場に向かって語る。
一方で、5Gの開始はこれまでの3G、4Gとは違うものにしたいとの考えも打ち出す。「これまで3G、4Gと高速通信技術を導入する時、その必要性があるのかと疑問の声が聞かれた。結局、その後SNSやストリーミングサービスなど(高速通信を活用するサービスが)誕生することで、人々の生活に不可欠なものとなっていった」と吉澤氏、”ネットワーク先、サービスが後”というパターンから、「5Gでは最初から新しいサービスが使える状態にしたい」とする。
「ネットワークとサービスを同時にローンチする必要がある。そのために、さまざまなパートナーとコラボレーション、協創が重要だ」と吉澤氏。
具体的な取り組みとしては、2月に発表した「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」、そして「5Gトライアルサイト」を挙げる。5Gオープンパートナープログラムは600以上の企業・組織が参加意図を表明しており、15社がドコモの5Gトライアルサイトを使ってサービスの開発を進めているという。
協創の例として、コマツ、和歌山県と和歌山県立医科大学の2つの事例を紹介した。
コマツとは、5Gを使って60km離れたところにある建設機械を遠隔操作するというもので、5Gにより周囲の詳細な状況がわかるようになったという。コマツにとってこのような機能は海外展開を進めるうえでも重要な差別化になるとのことだ。なお、コマツとはIoTプラットフォームでも協力関係にあるという。
和歌山県、和歌山県立医科大学とは、5Gを使った遠隔医療の可能性を試している。4Kテレビ会議システムを使うことで患部を詳細に見ることができるという。4K動画のような大容量データをやり取りするアップリンクは5Gならでは。これにより、医療やケアの地理的制限が大きく緩和されると期待できそうだ。
吉澤氏はまた、1月に発表したセルラーV2Xの実験も紹介した。車と車、車と人など、さまざまなものの間で通信することで、自動車の安全を強化できるという。
宣言6のパートナービジネスについては、5Gだけではなく、IoT、ドローン、AIエージェント、フィンテックなど「ドコモのアセットを使って自分たちのビジネス活動を拡大し、売り上げをアップさせ生産性を改善することができる」と吉澤氏は、パートナーにアクセスしやすくするとした。
最後に、「5Gの潜在性に、パートナーと協創を通じて構築する新しいモデルが組み合わせることで、豊かな将来を実現できる」と述べ、会場に集まった世界の業界関係者に対して新しいドコモの方針をアピールした。
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