NTTドコモ(以下ドコモ)は1月30日、31の専門チャンネルを楽しめる多チャンネル型の動画配信サービス「dTVチャンネル」の提供を開始した。月額780円(ドコモ回線のみ、税抜)で、スマートフォンやタブレットなどでテレビのようなリアルタイム配信番組を楽しめるサービスだ。
だが、ドコモはすでに「dTV」や「dアニメストア」「DAZN for docomo」と人気の有料動画配信サービスを揃えている。なぜ新たに「dTVチャンネル」を開始するのか。また、同時発売のAndroid TV搭載端末「ドコモテレビターミナル」を投入した狙いはどこにあるのか。NTTドコモ コンシューマビジネス推進部 デジタルコンテンツサービス担当部長の山脇 晋治氏に話をうかがった。
――ドコモではdTVをはじめ、動画配信サービスがかなり充実しています。有料かつ多チャンネル配信の「dTVチャンネル」を追加する理由は?
山脇氏:目的は2つあります。まずひとつ目ですが、「dTV」はサービスを開始して6年ほど経ちますが、近年のVOD(※1)市場は競争が激しく、機能や買い付けるコンテンツでライバルとの差が出にくくなってきました。今ではオリジナルコンテンツ合戦になっていて、もちろんdTVでも力を入れています。ですが、消耗戦になりつつあるのは否めません。
一方でリニア配信(※2)を見たところ、スマホでの配信は「AbemaTV」ぐらいしかプレーヤーがいないのです。詳しく調べると、多チャンネル放送に興味があるユーザー層は約2000万世帯で、その中の約1000万世帯がすでに固定網の「JCOM」や「スカパー」「ひかりTV」などに加入されています。ですが、残りの1000万世帯は、料金の高さや特別な機器の設置にめんどうくささを感じられている。ならば、スマホで気軽に見られる多チャンネルサービスに一定の市場があるだろうと。
もうひとつは「dTV」の魅力向上です。「dTVチャンネル」には「dTV」や他社のVODサービスにはあまりない趣味の番組が充実しています。将棋や麻雀、「Discovery TURBO」という車やバイクのチャンネルなどですね。すでにある「dTV」の18ジャンルに「dTVチャンネル」の趣味の31チャンネルを加えることで、映像市場の需要のパイをしっかり取っていくところを目指しています。料金面もドコモユーザー限定ですが、「dTV」と「dTVチャンネル」を合わせて月額税抜1280円のところを、月額税抜980円というお得な料金で提供させていただいています。
※1 VOD(ビデオ・オン・デマンド):観たい時に好きな映像を視聴できる方式
※2 リニア配信:テレビのように番組をリアルタイム配信する方式
――無料のリニア配信で先行するAbemaTVに対して、有料サービスの「dTVチャンネル」はライバルとして勝算はあるのでしょうか?
山脇氏:逆に、リニア配信は「AbemaTV」という存在があったからできた、というところがあると思います。VOD市場でも「Netflix」が日本に参入する際に各メディアやサービスは戦々恐々としましたが、結果的にVOD市場全体が活性化しました。リニア配信でも「AbemaTV」があるから盛り上がる、市場が活性化すると思います。我々が単独でリニア配信に参入しても、認知はされにくかったでしょう。
ライバルについては、ほかのVOD事業者だと考えています。VODの価格レンジは500~1000円だと思うのですが、ドコモユーザーなら「dTV」と「dTVチャンネル」を合わせて月額税抜980円です。この価格帯で「Hulu」(月額税抜933円)や「Netflix」(月額税抜650~1450円)にはない強力な武器を手に入れたかな、と考えています。
Amazonも勢いがあって意識をしていますが、こちらは特殊な戦い方なのでドコモが同じことを簡単にできるわけではありません。ただ、映像の「Amazonプライム・ビデオ」と「dTV」「dTVチャンネル」だけが戦うという世界の話ではないので、ドコモはモバイル回線や「ドコモ光」「dポイント」などさまざまな商材と合わせて当面は戦っていくのだと思っています。
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