「CES 2018」では「HDR10+」の認証・ロゴプログラムが公式に披露された。20世紀フォックス、パナソニック、サムスンの3社が2017年のIFAで発表した、既存の「HDR10」を拡張する規格だ。
HDR10+は、既存のHDR(ハイダイナミックレンジ)のスタンダード規格であるHDR10に対してメタデータを加えることで、薄型テレビによる高画質なHDRの表示を目指す技術。
規格は最低限の年間管理費用のみで、ユニット当たりのロイヤリティーフリーで提供される。
現在のHDR10の仕様は最大10000nits(輝度の単位)のピーク輝度の収録ができるが、この仕様はHDR10+でも映像ストリームを含めてまったく同じ。
異なる点はHDR10はコンテンツ(例えば、映像配信の1作品、UltraHD Blu-rayの1タイトル)の作品全体に対して最大輝度のメタデータをスタティックに提供するのに対して、HDR10+はシーン単位(技術上はフレーム単位まで可能)でメタデータが提供される事だ。
ミドルクラス以下のテレビでHDR効果を発揮!?
HDR10+で提供されるシーン単位でメタデータには、どんな効果を期待できるのだろうか?
映像配信、UltraHD Blu-rayのコンテンツに実際にされている輝度信号は1000nits、または一部作品では4000nits。
HDR10のHDRコンテンツのスタテックメタデータの最大輝度は、これに伴い1000nits、一部コンテンツは4000nitsと設定されている。
一方、薄型テレビはOLEDや液晶ハイエンドの輝度スペックは1000nits。エントリからミドルは500nits程度だ。
現在、問題となっているのは輝度スペック500nitsのミドル機だ。実際にHDR10で500nitsで入力された輝度信号を500nitsで表示すれば明るさは問題ないはずなのだが、常にスタティックでメタデータに記載されている最大1000nitsの信号が入力される可能性があるため、1000nitsまでを想定し、明所階調のロールオフ(丸め込み)が行なわる。
つまり、HDR10の映像表示では、500nitsの輝度信号は500nitsのモデルであれば本来そのまま表示できるにもかかわらず、輝度信号の丸め込みが行われ、結果本来より暗くなる弊害を産んでいたのだ。
HDR10+ではシーン単位でメタデータの伝送が可能となるため、こうした無駄な輝度信号へのロールオフを回避できる。
結果、500nitsクラスのミドルレンジでも映像を正しく表示できる。
実際にパナソニックのプラベートブースで出展されていたデモは、液晶テレビのスペックが550nit。HDR10とHDR10+を見比べると、強い光の差す砂浜のような500nits付近の映像の明るさを映像の意図通りに表示できていたのはHDR10+の方のみだった。
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