総務省は2013年、情報通信審議会諮問「イノベーション創出実現に向けた情報通信技術政策の在り方」の提言を受け、ICT成長戦略の1つとして、イノベーション(社会経済変革)創出を目的として「異能(Inno)vationプログラム」をスタートさせた。
ICT分野にチャレンジする「異能」の人たちに集まってもらい、応援しようというプログラム。「ICT分野において破壊的な価値創造を生み出す可能性がある奇想天外でアンビシャスな課題に挑戦する人を支援する」ものだ。このプログラムがユニークなのは、失敗を恐れず、とりあえずやってみるということを許容している点。総務省が手掛ける活動で、失敗を奨励する、と言うのはとても珍しい。
2014年に第1回が開催され、今年は第4回目。まずは、「異能(Inno)vationプログラム」の業務実施機関である角川アスキー総合研究所の専務取締役、福田正氏が開会のあいさつ。続いて、高市早苗前総務大臣が登壇。2014年9月から2017年8月までの2年11ヵ月、総務大臣を務められ、プログラムの生みの親として駆けつけてくれた。
「(参加企業の)展示を見せていただいたんですが、面白すぎて。それぞれのアイディアがどんなものに使えるのかな、と夢がいっぱいふくらんでおります。今年は半分の期間しか総務省にいることができませんでしたが、『異能ジェネレーションアワード』を新設しました。これまでの破壊的技術課題だけでなく、それに加えて面白いアイディアは世の中にたくさんあるはずだ、と募集したところ、なんと去年の約7倍となる8000件近い応募があり、うれしく思っています。私は、行き過ぎた結果平等よりも、機会平等を重視しておりました。出る杭を打つのではなく、うんと伸ばしていける日本になれば、可能性は広がっていくと思います」とあいさつした。
今年の「異能(Inno)vationプログラム」への応募はなんと7949件。4年前の710件と比べると大幅に増えている。自薦だけでなく他薦でも応募できるのもユニークだ。応募数が増えたことで、女性や若年層の応募も増えたという。一番下はなんと8歳だという。
アワードは16分野用意されたが、やはり情報通信分野がダントツ。続いて、「アプリ」「ロボット・AI」「医療」となっている。少ないのは、「流通」「センシング・データ」「宇宙」などだが、それでも応募はそれぞれ100件を超えている。
まずは「破壊的な挑戦部門」の最終選考通過者が発表された。最終選考を通過すると、政府から年間300万円の開発支援金が出る。失敗してもいいからとりあえず挑戦してみようというのは、総務省としては初めてのことだったそう。
最終選考で、以下の13名が通過した。
あるしおうね氏
高度なインタラクションを可能にするセマンティックARのための環境識別技術の開発
小川 晋平氏
聴“心”器の開発
坂本元氏
人間が乗り込み操縦する、巨大人型ロボットの実現に向けて、二足歩行技術の研究
島影圭佑氏
OTON GLASS-読む能力を拡張するスマートグラス-におけるインターフェースとサービスの研究開発
髙橋宣裕氏
Acoustic Fart Wave Generating System
田沼英樹氏
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鳥光慶一氏
電気を流す伸縮自在の糸で体の動きを知る
西田惇氏
装着型デバイスによる身体認知機能の最大化に基づく人々のエンパワーメント
濱田健夫氏
臀部清拭代行装置のための操作インタフェースの開発
福重真一氏
世界の好きな場所に意識を転送し現地の人と対話できるTele-ghostシステムの開発
的場やすし氏
粉粒体を液状化する「流動床」現象を用いたインターフェースの開発
村木風海氏
温暖化対策を身近に ― CO2直接空気回収マシーン CARS-α ―
山西陽子氏
気泡インジェクターによる情報発信
この中で、会場では「粉粒体を液状化する「流動床」現象を用いたインターフェースの開発」を手掛ける的場やすし氏にブース取材できた。大きなボックスに大量の砂が入っており、そこにおもちゃがたくさん載っている。小槌でたたくと、大量の砂ならではの固い手ごたえ。しかし、的場氏が装置のスイッチを入れると、一気に砂全体が液体のようにさらさらになる。ボールは沈むし、もちろん手も突っ込める。抵抗がほとんどなく目を疑う。
スイッチを切ると瞬時に普通の砂場にもどり、掘り返すのさえ手間がかかるようになる。手を入れた状態でスイッチを切ると、引き抜くのにも苦労する。
仕組みとしては、水槽の下から空気を出すことで、砂の流動性を向上させているのだ。砂に秘密があるのかと思いきやなんでもいいとのこと。ただし、砂場の砂を利用すると砂煙が舞ってしまい、吸い込んでしまいかねないので、高価な砂を使っているという。
これはとても面白い技術と感じた。個人が遊ぶというより、イベント会場では引き合いが強そうだし、規模を大きくできるなら大規模イベントでの視覚効果にも使えそうだ。
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