週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

中島美嘉からバッティストーにまで必聴盤10選

麻倉推薦:ジャズなのにド演歌な八代亜紀、でも本質は魂

2017年11月04日 12時00分更新

 評論家・麻倉怜士先生による、今月もぜひ聴いておきたい“ハイレゾ音源”集。おすすめの曲には「特薦」「推薦」のマークもつけています。10月ぶんの優秀録音をお届けしています。e-onkyo musicなどハイレゾ配信サイトをチェックして、ぜひ体験してみてください!!

『トーキョー・ワンダラー』
渡辺香津美

 渡辺香津美がアコースティック・ギターにて、オリジナルとスタンダードナンバーを、ストリングスと共に奏でる。

 冒頭の「哀愁のヨーロッパ」。甘く、切ないストリングスがヨーロッパの暗く、よどんだ雰囲気を醸し出し、アコギが、すっきりとした透明なタッチで、淀みなくスムーズに進行する。オリジナルのサンタナのこってりした濃密な味わいとは違う、透明度の高い哀愁表現だ。

 5曲目「君の瞳に恋している」。ストリングスが躍動し、ギターがラブリーに心地良く躍進。ボーイ・タウン・ギャングのバージョンのリフをそのまま軽妙に演ずるストリングスは、本作品の第2のメインロールだ。アクティブリスニングにも、またBGMにも最適な一品だ。懐かしのカルメン・マキは最後の11曲目。「花ごよみ~七つの水仙」にようやく登場。アルトのこってりとしたブルージーな歌唱だ。

FLAC:96kHz/24bit
ワーナーミュージック・ジャパン、e-onkyo music

『ストラヴィンスキー:バレエ音楽《春の祭典》/バーンスタイン:《ウエスト・サイド物語》よりシンフォニック・ダンス(96kHz/24bit)』
アンドレア・バッティストーニ、東京フィルハーモニー交響楽団

 アンドレア・バッティストーニと東京フィルのサントリーホール・ライブ録音は名アルバムとの評価が高いが、私に言わせるとまるでお風呂で録っているような残響過多で、せっかくのバッティストーニの鮮烈な切れ味が鈍る。

 ところが本作は違う。目が冷めるような鮮烈さ、細部までの細かな彫塑は、このコンビ録音の新しいページを開く。ライブならではの豊かなソノリティを保ちながら、ハイレゾならではの細部までのこまやかな目配りが聞ける。バッティストーニならではの色彩感も本作の楽しみ。会場がサントリーでなく、オペラシティタケミツホールであるのも、違う音響の一因だろう。

 オーケストラは上手いが、さらなる切れ味とスケール感が欲しい。高解像度なので、このオーケストラの音響的な持ち味がより明確になる。「春の祭典」は2017年5月、オペラシティタケミツホール録音。

FLAC:96kHz/24bit、WAV:96kHz/24bit
DENON、e-onkyo music

『A or B』
中島美嘉

 3曲収録のミニアルバム。『A or B』は「花王フレアフレグランス」CMタイアップ曲。重たい金管とドラムスだが、音の進行は躍動している。中島のヴォーカルは、透明感に加え、どこか突っかかるようなトゲがあり、特に高音の硬質さが、大いなる魅力だ。

 曲は、ウァースとサビの対比が見事なポップなトーンで、確かにこのハッピー度からして、花王CMのタイアップに起用されたのも分かる見事な仕上がりだ。ただし私の認識からすると、この曲は中島のイメージとしては過度に元気過ぎる。もっと影が濃いのが、中島の本領だ。

FLAC:96kHz/24bit
Sony Music Associated Records、e-onkyo music

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事