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文化財+ARの新しい観光の形、レノボのTango対応スマホによる二条城ツアーを体験

2017年10月28日 15時00分更新

 レノボ・ジャパンは、集英社刊の人気コミック「ONE PIECE」とコラボし、京都にある国宝の建築物、二条城・二の丸御殿の内部を作品のキャラクターがガイドするアプリ「ロビン&フランキー 二条城歴史ARツアー」を開発。10月7~22日の期間、二条城を訪れた来場者が体験できるイベントを開催した。ASCII編集部でも期間中に参加してきたので、そのレポートをお届けしよう。

ONE PIECEのキャラクターが国宝の二条城をガイド。端末はオリジナルのケースに入れられたレノボ「PHAB2 Pro」だ

10月半ばの京都はONE PIECEとコラボ!
二条城をそのキャラクターがガイド

 今回のARツアーは、ONE PIECE 20周年記念キャンペーンの一環として、京都市内で上記期間に実施されたイベント「ONE PIECE 20th×KYOTO 京都麦わら道中記~もうひとつのワノ国~」の1つという位置付けだ。

多くの人が1度は修学旅行で来たことがあるであろう二条城・二の丸御殿

平日にも関わらず、9時からのツアーに参加すべく、朝早くから行列が。参加費用は通常の入場料のほかに特別寄付金として500円が必要だが、これは普段の音声ガイドのレシーバー利用料と同額。二条城は京都市が管理しているが、多額の修繕費が必要な一方で寄付集めに苦戦している。体験料はその寄付にも用いられるとのことだ

 期間中は京都市街の各所に人気キャラクターが潜伏しているという設定のもと、キャラクターを探すスタンプラリーが開催。さらに京都市営地下鉄ではキャラクターによる注意アナウンスが流されるなど、各所でコラボの存在を見ることができた。ちなみにONE PIECEの今後のストーリーとして、日本を舞台をしたワノ国編が展開されることが予告済。作者の尾田栄一郎先生はすでに京都の各所を取材しているとのことで、スタンプラリーの台紙にはその取材スポットも記されていた。

こちらがスタンプツアーの台詞。市内の各所にあるスタンプを集める

 さて、本題のアプリだが、レノボのAndroidスマートフォン「PHAB2 Pro」に搭載された、グーグルのAR技術「Tango」の機能と性能を生かして開発されている。今回のARツアーに参加するユーザーには、専用アプリがインストールされるとともに、作品をイメージしたケース(大工であるフランキーが制作したという設定ゆえに手作り感を出している)に収められたPHAB2 Proが渡され、これを見ながら二の丸御殿内を歩くことになる。

作品内の設定を活かしたオリジナルケース

 そして特定のスポットに来るとガイド役である考古学者のロビンが、そこで起きた歴史などをアニメと同じ声優による音声で詳しく説明してくれる。また本来は入れないスポットから見渡した景色を、360度のVR動画で視聴できるシーンなども用意されている。

入口でガイドをスタートするとロビンが場内を歩きながらスポットの前で解説してくれる

立ち入り禁止エリアからの360度動画を見られる。写真は大政奉還に参加した大名がいた視点からの周囲の様子

Tangoにしかできない正確な空間認識
そのために二の丸御殿をくまなくエリアラーニング

 Tangoならではの性能を感じるのは、ガイド時のキャラクターの表示。深度センサーにより、被写体との距離や空間上の位置を正確に測定できるため、たとえばキャラクターが壁の向こうにいる場合はその部分だけが隠れたり、自然な立ち位置になったりと、人の目から見て変な表示にならないのが大きなメリットとなる。同様のことはたとえばiOSのARKitなどではまず不可能とのことだ。

ロープの位置を正確に認識し、キャラクターの前に表示されていることがわかる

建物に隠れる部分はキャラクターの表示が消える

 今回主にアプリ部分を担当したNECパーソナルコンピュータ 商品企画本部 CXデザイナーの岩本義樹氏によると、この正しい空間認識のために開発者が1週間ほど京都に泊まり込んで、エリアラーニングの作業を行なうなど(PHAB2 Proのカメラをそのまま用いたとのこと)、一番労力が必要な部分だったという。二条城は修学旅行生や観光客が多数来場する人気スポットゆえに、そのような作業ができるのは開場前の朝に限られる(今回の取材も8時前から行なった)。「朝6時からの作業と言われたときは……」と二条城を管理する京都市の担当者は苦笑していた。

 また、アプリで工夫が見られたのは、じっくりと建物を鑑賞していて、やや移動が遅れてしまった際。一方的に次の解説を進めてしまうのではなく、キャラクターが待ってくれたり、セリフでさりげなく次のスポットへの移動を促してくれる。また、暗い場所でキャラクターが光りすぎて表示されて不自然にならないよう、外光に合わせてテクスチャーの明るさも変化しているという。

ガイドから遅れてしまっても一方的に説明をしてしまうのではなく、キャラクターが待ってくれる

 本サービスとして展開するには、キャラクターや3Dモデルの制作(今回はバンダイナムコエンターテインメントの協力が得られたという)、多言語対応など、さまざまな課題もあるものの、通常のレシーバー型の音声ガイドや紙のパンフレットにはない説得力や楽しさがあるのは事実。また、Tangoを活用した今回のシステムは十分実用的と感じられた。今後のさらなる進化と実際の導入に期待したい。

キャラクターとのARによる記念写真は無料で可能だった。撮影した写真はQRコード経由でスマホからダウンロードできる


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