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育児の記憶は「上書き保存」だなーと離乳食デビューで感じた

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34歳の男が家事育児をしながら思うこと。いわゆるパパの教科書には出てこない失敗や感動をできるだけ正直につづる育休コラム。

初めてイスに座った赤ちゃん(このあと泣く)

 家電アスキー編集部の盛田 諒(34)です、おはようございます。水曜日の育児コラム「男子育休に入る」の時間です。赤ちゃんが2月22日(ねこの日)に生を享けて7ヵ月、すっかり移動も上手になり、気づけば部屋の端までずりずり行けるようになりました。赤ちゃんが寝ていただけの時期がおぼろげにしか思い出せません。「育児のつらさ・楽しさは上書きされるものですよ」と先輩の親御さんたちに聞いていたのですが、こういうことかと実感します。育児の記憶は上書き保存なのですね。

 赤ちゃんは6ヵ月ちょっと前くらいから離乳食もはじめました。最初はおかゆをぐりぐりつぶしてのばした「十倍がゆ」からはじめ、バリエーションを増やしてます。梨、ほうれん草、卵黄、タイなど、新しいものを食べてもらうたびにiPhoneで動画を撮ったりしています。赤ちゃんは食べることが好きなようで、今のところはどんなものも「ンニャンニャ」と食べてくれています。アレルギー反応も出ていません。7ヵ月になり、赤ちゃんは1日に2回、離乳食を食べるようにもなりました。

 食事方法としては、ベビービョルンのバウンサーに座ってもらい、布製よだれかけ、シリコン製よだれかけをダブルで装着した上で、木製のスプーンから召し上がっていただいています。食べるのは上手な方だと思うのですが、それでもドバドバこぼすので顔をふくタオルは必須です。

 もうちょっと成長したら、メリーゴーランド京都で買った山加商店のユニバーサルプレートを試そうと思っています。ふちにへりがあるのでスプーンですくいやすく、粉ミルクのように離乳食の“すりきり”ができるのが便利です。底にシリコンがついているのでテーブルに置いておいてもズレにくく、自分でスプーンをもって食べられるようになったときも使いやすいのではないかと思います。

Image from Amazon.co.jp
ユニバーサル・プレート(SS)

 バウンサーだとリクライニングチェアのような角度になるので赤ちゃんが飲みこみづらいところがあり、そろそろベビーチェア買わなきゃね、などとも妻と話しています。ストッケというブランドのいすが欲しいのですが、約3万円と高級で、育児はとかく物欲との戦いです。

Image from Amazon.co.jp
STOKKE ストッケ TRIPP TRAPP Chair Classic トリップトラップ チェア クラシック Natural ナチュラル NONE Harness ハーネス無し 144401 並行輸入品 【EUモデル】

●離乳食作りはぜいたくな時間

 離乳食の調理主任は妻です。

 「大人のごはんも作りたてのほうが美味しいから」という妻の意向で、離乳食は基本的にイチから作っています。ほぼ毎朝おかゆを炊いて、だしをとり、野菜をゆで、当日食べる。冷凍ではなく冷蔵。この方法だと準備・食事・片づけにざっと1時間ほどかかります。妻が育休中でないとなかなか難しい、ぜいたくな時間です。

★朝の時間(例)
7:00 起床、洗濯、布団片づけ
7:30 朝食準備、身支度
8:00 大人朝食、離乳食準備
8:30 赤ちゃん朝食、洗濯物干し
9:00 夫出勤、離乳食片づけ

 調理道具は、すり鉢やおろし金をセットにしたコンビの「離乳食じょ~ず」(実勢2000円程度)。「離乳食のおかゆをつくるのに使うから」ということで10cmサイズの小さな鋳物鍋「ストウブ ピコ・ココット ラウンド」(実勢6000円程度)も親に買ってもらいました。オリーブオイルをひたひたに入れるとアヒージョがおいしくできるそうなので、今度ためしたいと思っています。赤ちゃん関係ないですね。

Image from Amazon.co.jp
Staub ストウブ ピコ・ココット ラウンド 10cm ブラック 1101025 (40500-101-0) [並行輸入品]

 出産祝いにコードレスのハンドブレンダーもいただいているのですが、1~2日間程度の少ない分量だと使うのが難しいためまだほとんど出番がありません。大量につくって冷凍するフリージング離乳食をはじめたときには便利だと思います。

Image from Amazon.co.jp
mhエンタープライズ ビタントニオ コードレスハンドブレンダー ホワイト VHB-100

 また、市販のベビーフードをさけているわけではなく、旅先では、和光堂の「しらすの雑炊」を試しました。赤ちゃんは前のめりになって食いついていました。味見をしたのですが、とてもおいしかったです。もっと薄味なのかと思いきや、シチューのようなうま味がありました。ふつうにボウルによそって食卓に出したら大人向けの一品として成立してしまいそうなおいしさです。

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和光堂 栄養マルシェ しらすの雑炊 80g 2個

 「離乳食は手づくりの方が愛が伝わる」という人もありますが、愛の伝え方はさまざまです。冷凍だろうとベビーフードだろうと、愛は伝えられるだろうと思います。大事なのは、一緒に食事をする人と過ごせる時間の豊かさではないかと感じます。

 「まじか」と思ったのは離乳食のルールのむずかしさです。

●昔より難しくなった離乳食

 離乳食の本を見てみると、離乳食の種類は子どもの成長にあわせて「ゴックン期」「モグモグ期」「カミカミ期」「パクパク期」の4期に分かれます。どろどろの流動食からだんだん固形に近づいていくもので、時期にあわせて食べられる食材も少しずつ増えていきます。1回あたりの分量、1日の食事回数も目安として出ています。

 数字などはあくまでも目安なので、子どもの傾向に合わせていけばいいのですが、本選びに失敗すると「ルールがやたら多く細かくわかりづらい!」「本当にこんなことしなきゃだめなの?」と疑問に思う親御さんもいるのではと思います。

 複雑に見えるこのルールは、厚生労働省がつくった「授乳・離乳の支援ガイド」にしたがっているもの。ガイドラインはいまの生活スタイルに気を配った最新版です。離乳食の本も難しいのですが、原典はさらに複雑なので、出版社側も苦労して見せ方を考えているものと思います。

授乳・離乳の支援ガイド

 ちなみにうちでは『はじめてママ&パパの離乳食(主婦の友実用No.1シリーズ) 』を使っています。複雑なルールが写真満載で比較的わかりやすくまとまっていて、料理もおいしそうに写っているのでオススメです。

Image from Amazon.co.jp
はじめてママ&パパの離乳食 (主婦の友実用No.1シリーズ)

 むかしから離乳食がこんなに細かく決まっていたかというとそうでもありません。厚労省のガイドラインも、母子手帳も、時代が進むにつれ、研究の進化にあわせて変わっています。じいじ・ばあば世代に見せても「ゴックン期?」という顔をすると思います。

 いまとむかしの違いとしては、たとえばむかしは2〜3ヵ月のころにジュースやスープ(みそ汁のうわずみ)を与えていましたが、母乳やミルクを飲む量が減る、乳児期以降の果汁の過剰摂取の心配があるということで、なくなりました。授乳完了期も奥歯が生えはじめるのが16ヵ月ごろから、かみあわせの完成が20ヵ月ごろだからということで、遅らせています。

 断乳・卒乳の時期も、昔は1歳までが推奨されていましたが、いまはとくにありません。赤ちゃんがやめたい時期にやめればいいというもので、WHOはむしろ、2歳かそれ以上まで母乳を与えることを推奨しています。考えてみれば、「この時期までにおっぱいをやめなさい」と国が指導するというのもなんだか変な話ですよね。

 「1歳未満の乳児にはちみつを与えてはいけない」というのも比較的最近の常識です。はちみつ由来で乳児ボツリヌス症の症例が初めて発表されたのは1986年のこと。当時、厚労省が指導を出たときは、家庭にかなりの混乱を呼んだようです。

 「離乳食の本などにも『甘みははちみつで』というのがよくあります。私もお砂糖よりは体に良いような気がして1歳の子供に食べさせるおやつのヨーグルトなどにはよく使っていました」(朝日新聞「声」1987年12月7日より)

 今では母子手帳にも、はちみつについての記載があります。今年4月にはちみつ由来で乳児ボツリヌス症を発症した男の子が亡くなったという発表がありましたが、わたしが生まれたころの常識で考えると、自然な選択肢になってしまうのですね。

★厚労省ガイドラインの変化
1980年「離乳の基本」
1996年「改定『離乳の基本』」
2007年「授乳・離乳の支援ガイド」

★離乳食開始時期
昔 生後5ヵ月になったころ
今 5〜6ヵ月ごろ

★離乳完了期
昔 12〜15ヵ月
今 12〜15ヵ月、遅くても18ヵ月

★2〜3ヵ月の果汁やスープ
昔 与える
今 与えない

★卒乳・断乳の時期
昔 1歳まで
今 特になし

●「つぶさない」離乳食も登場

 日本で離乳食の常識がつくられたのは1960年代です。

 ベンジャミン・スポック『スポック博士の児童書』(1966年・暮しの手帖社)、松田道雄『育児の百科』(1967年・岩波書店)、育児雑誌「ベビーエイジ」(1969年・婦人生活社)などが相次いで出版され、育児本ブームになりました。中でもスポック博士は1984年時点で国内累計100万部を超える大ベストセラーになっています。

Image from Amazon.co.jp
定本育児の百科 (岩波文庫)〔全3冊セット〕

 当時は育児に科学が入ってきた時代です。病気の治療が主な目的だった小児科学で、子供が健康に育つための生活環境も研究対象になってきました。経済成長とともに核家族も増え、育児知識を親からではなく本から学ぶようになりました。その中でアメリカ由来の『スポック博士』が大いに受け入れられたのですね。上述したように、今では通用しない説も多いのですが、『スポック博士』は当時の行きすぎた効率主義的育児と逆の立場をとっており、その姿勢には共感できるところがあります。

 当時は離乳食も手づくりが常識的でしたが、時代がすすむと、女性の社会進出とともに、市販品のベビーフードも増え、離乳食は手軽なものに進化してきました。そう考えると、わが家はいまのところ昔ながらの離乳食を実践している感じですね。

 ちなみに最近は、歯ぐきでつぶせるくらいの硬さにゆでた野菜を赤ちゃんに与える「Baby-Led Weaning」(BLW)というイギリス発祥の離乳食が流行っているそうです。

 赤ちゃんが食材の手ざわり、におい、味を学んでいけるというもの。親からすると食材をおかゆにしたり、みじん切りにしたりする必要がなくてラクだということなのでしょうね。おもしろそうではありますが、早くても6ヵ月からはじめる、誤嚥(ごえん)をふせぐなど、注意事項をしっかり学んだ上でやっていけると良いのではないかなと思います。

Image from Amazon.co.jp
Baby-Led Weaning: The Essential Guide to Introducing Solid Foods―and Helping Your Baby to Grow Up a Happy and Confident Eater

 今こそこうして離乳食のことであれこれ考えたり、目移りしたり、悩んだりしていますが、赤ちゃんも成長すれば大人のごはんも食べられるようになるわけで、いずれ離乳食の記憶も上書きされて、「どんなだったかな」とおぼろげになっていくのかなと思います。気持ちとしては、うれしくもあり、さみしくもありで、離乳食を通じていずれ卒乳することを考えると、妻はさらに複雑な気持ちになるのかなあと思ったりもします。赤ちゃんにあーんできる時期も一瞬なので、なるたけ今を楽しんでいきたいです。味はもとより、ごはんって楽しいなーと、赤ちゃんに思ってもらえたら良いなあ。




書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ、家事が趣味。0歳児の父をやっています。Facebookでおたより募集中

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