第2部「Windows配列」はありえるのか!?
第2部は、「HHKBのこれから」というお題。登壇者は、高校生からHHKBの愛好者で現在はAndroidの開発者である有山圭二氏、慶應義塾大学環境情報学部教授でユーザインターフェース研究家でもある増井俊之氏、HHKB Professional Type-S商品アドバイザーでもある競技タイピストの栗間友章氏、そしてPFUドキュメントイメージビジネスユニット販売推進統括部長の松本秀樹氏の4人。
松本氏によると、Windows配列に対する要望が来ているそうで、そのあたりに関する意見がほしいとお題が振られた。
「私は基本的にWindowsしか使わないですし、競技タイピングなので、矢印キーなんていらいない。最悪バックスペースキーもいりません(笑)」(来間氏)
「昨年、Surface Bookを使おうとして結局挫折したんですけど、MacだとCommand+Cでコピーですが、WindowsだとコピーがCtrl+Cじゃないですか。コピーをするための統一したキーがなくて、結局あきらめました。Windowsユーザーはどうしてるのですか?」(増井氏)
と逆質問。回答は、会場のユーザーが手を上げた。このユーザーもWindowsでEmacsを動かしていたそう。同様にコピーで困ったので、「AutoHotkey」というスクリプト言語を利用し、無変換キーをCommandキーに設定したという。
HKKBのカスタマイズを可能にしたい!
次は「カスタマイズを許す範囲をキーボードプラットフォームとしてどこまで用意するか」という話題。会場にアンケートを採ったところ、いくらでもカスタマイズしたい人と、標準のまま使いたい人が同数ずつという結果になった。
「不満というか要望ですが、HHKBのファームを書き換えてキーマップを変更したいです。無刻印というのがラインアップされているので、キーマップを書き換えるためのものだろうと今日まで思ってきたので(笑)。ソフトとかを使ってOS側で書き換えるという対応策が出ましたが、僕はキートップと違うキーコードを出すというのがたまらなく嫌なんです」(有山氏)
この意見を受けて、松本氏は検討します、と回答。会場からは大きな拍手が起きた。さらに続けて、有山氏からの要望が出た。
「HHKB BTのUSB端子は給電専用なので、サーバー機を使う時に接続できません。ぜひ、USBでつなげば、USBキーボードとしても使えるようにして欲しいです」(有山氏)
これは、筆者もBTモデルを使っているのでまったく同感。とはいえ、今のところは両対応にするとコストが大きく上がってしまうのがネック。今後の開発に期待したいところだ。他にも、Dvorak配列が欲しいとか、特定のキーを無効化したいといった希望が参加者から寄せられた。
続いては、司会の小山氏が、友達から頼まれた伝言を披露。「その人は、HHKBとAppleのトラックパッドを使っているのですが、ツラが合わないのが不便で、そこでトラックパッドの台が欲しいと言っています」(小山氏)
ここで、バード電子の斉藤安則社長が登壇した。
「10年前からAppleのサードパーティーで、その頃はAppleが厳しくてユーザーが少なかった状態です。その分ライバルがいなかったので、すごい売れて儲かったんです。ところが、iPhoneができていっぱいアクセサリーメーカーが出てきました」(斉藤氏)
という自己紹介のあと「今のパッド台はすぐに作ります」と即答した。続けて、MacbookにHHKBを載せて尊師スタイルで利用する際、デザインに合う美しいケーブルが欲しいという意見にも、「すぐに作れますねぇ」と斉藤社長。即断即決で笑いを誘った。
Macbookのキーを押さないようにしたいという要望には、「それはありますね」と斉藤社長。Macbookルーフという製品で、キーボードの上で伝票を書けるというアイテムだそう。現在在庫切れだが、また作りますとのこと。
質疑応答ではいろいろと質問が寄せられたが、盛り上がったのはHHKBが安っぽい、という意見だった。HHKBには鉄板が入っていないので、東プレのリアルフォースと比べて、キーを押したときに安っぽい音がするそう。そこで、鉄板入りモデルを出して欲しいという要望だった。これにはPFUのエンジニアが回答。
「リアルフォースはキートップのユニットがひとつずつ分かれていて、それを鉄板に止めているんです。厚さは1mm弱で結構な剛性が出ています。八幡君が開発を始めた時に、どうしましょうという話になりました。HHKBに鉄板を入れるには穴を開けるのですが、余計なのりしろが入ってしまいます。キーボードの外周に5mmとかもう少し余裕が必要になり、我々が要求する幅が満足できなかったのです」
持ち運びを重視するため、剛性よりも幅と重量を選んだということだ。
最後は「いろいろな貴重な意見を聞けたので、優先順位を決めて、やれることはぜひやっていきます」と松本氏が締めた。
第3部は懇親会。軽食をつまみながらユーザーや登壇者が交流を楽しんだ。途中で、ライトニングトークも開催され、超マニアックなユーザーがHHKBへのこだわりを炸裂させてくれた。HHKB黎明期の裏話から、目をむくような魔改造したHHKBなど、こちらも超大盛り上がり。長時間にわたるイベントだったが、あっという間に時間が過ぎてしまった。
筆者紹介─柳谷智宣
1972年生まれ。ネットブックからワークステーションまで、日々ありとあらゆる新製品を扱っているITライター。パソコンやIT関連の媒体で、特集や連載、単行本を多数手がける。PC歴は四半世紀を超え、デビューはX1C(シャープ)から。メインPCは自作、スマホはiPhone+Xperia、ノートはSurface Pro3とMacbook Air。著書に「銀座のバーがウイスキーを70円で売れるワケ」(日経BP社)、「Twitter Perfect GuideBook」(ソーテック社)、「Dropbox WORKING」(翔泳社)、「仕事が3倍速くなるケータイ電話秒速スゴ技」(講談社)など。筋金入りのバーホッパーで夜ごとバーをハシゴしている。好きが高じて、「原価BAR」を共同経営。現在、五反田・赤坂見附・銀座で営業中。
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