夜20時のアップルストア表参道店より:
iPhone10周年「ジョブズの作った原点に返って」行列先頭の女性は言う
iPhone 8、iPhone 8 Plus発売前日、木曜日の夜20時。通りを照らすアップルストア表参道店の前に、女性が1人並んでいた。女性は30代、大学関係者。目当ては翌日発表の新しいApple Watchだが、並ぶ理由は製品だけではないという。
「並んでいるとアップル製品が大好きな人たちが集まってくる。年に1回のお祭りなんですよ。誰かが並んでるとかならず誰かが来て話し合いになる。お兄さんが来る1時間くらい前にもアップル好きな人たちが来て、その人は(iPhone)8もXも買うとか、(Apple Watchを)セルラー版にするか迷うとか言っていました」
女性が行列に並びはじめたのは2日前から。それでも「今回はすごく短い」らしい。iPhone 5S発売時には11日間も並んでいたそうだ。初めて行列に参加したのは5年前の2012年、行列に並ぶのは今年で12〜13回目。SNSとは違う、生の人間同士での情報のやりとりがおもしろく、毎年並んでいるのだという。
「『ねえねえ、あの製品どう思う?』『今回セルラーになったからiPhoneなしでも使えるようにしてくれよ』『いや分かるけどそれをやらないのがアップルなんだよ』『iPhoneでApple Pencilを使えるようにしてほしいんだよ』とか。ああなったらいいよね、こうなったらいいよね、と議論をするんです」
「アップルユーザーが集まる場所って、日本ではなかなかないんです。デベロッパーさんの集まりはあるんですけど、機種だけで集まるのは年に1回、発売日のタイミングじゃないと難しい。だから、本当に好きな人たちが集まっています。たぶんソフトバンク銀座店で並んでる人たちもいるんですけど、あっちはパーティー感覚。こっちはガジェットが好きな人たちがひそかに集まっています」
今年はiPhone発売10周年。アップルに期待するものは何か、聞いてみた。「むしろ原点に返ってほしいです」と女性は答えた。原点とは。
「iPhone 4Sです。わたしはスティーブ・ジョブズが亡くなった後から行列に並びはじめたんですけど、4Sはジョブズが最後に作ったデバイスで、やっぱり一番オリジナリティーがある。いまの機種は、フリック動作もなんとか片手で上から下まで行くくらいんですけど、(4Sは)片手におさまり、手の中だけで完結する。ジョブズが亡くなって、クックさんになってからは、Plusが出たり、素晴らしい製品が出てはいるんですけど、使いやすさ、洗練性、ユーザー目線、それとジョブズの美学が入った4Sがやっぱり、何よりも良いんです。また小さいデバイスを、Apple Watch以外の形で出してほしいなと思っています」
女性の隣に置かれた小さなイスには、亡き氏の顔をかたどったフェイスマスクと、やはり亡き氏の生涯を描いた伝記漫画が置かれていた。
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