映像と字幕のズレがなく、ストレスなく視聴できる
インタビュー中に「MOVERIO BT-350」と「UDCast for Moverio」を使って実際に試したところ、映像と字幕にズレがなく、ストレスなく視聴できた。
通常の字幕付き上映だと、必ず画面の下部に字幕が表示されるが、「MOVERIO BT-350」では画面下部に字幕が表示され、少し目線を落としたり、顔の向きをずらすことで表示位置を変えられるので、邪魔にならない位置に字幕を動かせるというメリットもある。
なお、「MOVERIO BT-300」ユーザーも、「UDCast for Moverio」をインストールすることでYouTube上の『「UDCast」デモ用映像『絵の中のぼくの村』』を視聴して体験できる。専用マイクについては、NPO法人メディア・アクセス・サポートセンターが販売している「MOVERIO BT-300専用マイク」(直販価格3240円/税込)を利用可能だ。
何よりも、MOVERIOを装着していれば、どの時間の上映でも字幕が表示されるというのは得がたいメリットだ。「MOVERIO BT-350」は通常のメガネとしても違和感のない透明度なので、映画の視聴に邪魔になることはない。エプソン独自開発のシリコンOLEDディスプレイのおかげもあってフォント自体が視認しやすく、字幕も適切なサイズで読み取りやすい。聴覚障害者でなくても、聞き取りにくいセリフの意味がパッと分かるというメリットをすぐに感じたほどだ。スクリーン感(表示枠)を意識させないのもいい。映画の明るいシーンで字幕が見づらくなるといったこともないようだ。
バリアフリー上映のさらなる普及に向けて
2017年10月現在、チネチッタで上映されている対応映画は「三度目の殺人」と「ナミヤ雑貨店の奇蹟」、そして「パーフェクト・レボリューション」。一日1回の字幕付き上映もあるが、野澤氏によれば「聴覚障害者以外が敬遠する傾向にある」という。これは、日本語字幕が出ることによる違和感以外にも、「洋画の日本語翻訳の字幕のように、他言語の字幕が表示されると誤解されることもある」という。海外アニメの吹き替え版に日本語字幕がついていた際(日本語音声の日本語字幕付)には、英語音声の日本語字幕付き映画ととらえた方もいたようだ。
いずれにしても、字幕が必要な人は「MOVERIO BT-350」を借りて、それ以外の人はそのまま視聴できるというUDCastの仕組みは、こうした問題にも対処できる。チネチッタも一日1回の字幕付き上映の時間を決める難しさもあるし、字幕付きで見たい人も見られる時間が限られるという課題があった。「MOVERIO BT-350」を使えば、通常の上映がそのまま字幕付き上映になり、問題を解消できる。
チネチッタは音声ガイドを導入し、字幕付き上映も一日1回ながら、長めの上映期間を確保するなど、バリアフリー上映に力を入れてきた。そうした流れで今回の「MOVERIO BT-350」とUDCastの組み合わせは、劇場側の負担もほとんどなく、字幕表示も問題がないことで、かなりの好印象のようだった。
すでに聴覚障害者グループなどに情報が渡って利用者も訪れており、10月31日まで無料の貸し出しを行なう。現在は試験期間中だが、今後の導入も検討していくという。
もちろん、配給会社などがあらかじめ字幕を作成する必要はあるものの、字幕が必要な人にとっては有効な取り組みになるだろう。“周囲を視認できる(シースルー)”、“メガネ型デザイン”、“ハンズフリー”というMOVERIOのメリットを十分に発揮した取り組みであり、今後の関係者の取り組みの強化を期待したい。また、聴覚に障害がある方にもぜひ事前予約を行なった上で、試してみてほしい。
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