5月のComputexでNVIDIAが発表した「Max-Qテクノロジー」は、ゲーミングノートの新時代を告げるものだ。そのお手本として公開されたのが、ASUSの「ROG Zephyrus(ゼフィルス)」である。
ハイパフォーマンスノートやゲーミングPCユーザーとして一番気になるのは、この薄さに、7700HQとGTX1070を搭載して、果たしてきちんと冷却され、きちんと速度が出るものなのかである。日本でも「GX501V5」という型番で発売となったので、実機を試用してみた。
17.9ミリは想像以上の「薄さ」
スクエアデザインも好感度非常に高し
箱から出して、手にして本当に驚くのは、17.9ミリという、ウルトラブック並みの薄さである。単なる15.6型のUプロセッサーを搭載したノートPCでも薄さを感じるレベルだ。ところが、こいつはTDP(設計熱量)が45Wという、第7世代(KabyLake)のモバイル用として最高レベルの速度=発熱を誇るCPUを搭載している。
さらに、GeForceのほうはGTX1070または1080を搭載している。日本では今回1070搭載モデルのみ発売となったが、従来の設計では、この薄い筐体に1070を搭載するのは困難だった。Max-Qによって可能となったデザインなのである。重さ2.2キロは15型ゲーミングPCとしては軽い。
日本で発売となったGX501VSは、i7-7700HQに16GBメモリ、15.6型IPSのフルHD液晶(1920×1080ドット)は120Hz駆動だ。SSDはPCIeX4接続で512GBを搭載。キーボード配列は英語のみで、オレ的にはオッケーなのだ。
液晶を開けるとともに
底面もオープンしてくれる
ROG Zephyrus(愛称ゼフィー)を使うにあたって、最初に驚くのは、液晶を開けるときに、本体後部が浮き上がり、底面が開くことだ。昔、ThinkPadのバタフライキーボードが、液晶の開閉力を使ってキーボードを展開していたし、ThinkPad Yogaは現行モデルでもキートップを上下させている。
とにかくゼフィーは液晶を開けると、底板の後部が約7ミリ開く。前側は動かないので、ちょうどクルマのボンネットが開く感じで、なおかつ左右に1つづつ赤いLEDが設置されていて、光も放つ(ACアダプター接続時のみ)。オトコノコはみんな惚れ惚れする、とても良い設計なのである。
液晶を開くと現れるのは手前に設置されたキーボードで、これも新しいカタチである。キーボード面の奥側はフラットな板で、電源スイッチとROGマークしかない。
手前のキーボードはなかなかカッコいいデザインで、右側にタッチパッドが設置されている。フツーはキーボードの手前にあるものだが、このレイアウトではここに置くしかしかたがない。前述のようにキーボードはUS配列で、@はSHIFT+2の位置である。
右側のタッチパッドは内部にLEDが仕込まれている。パッドの左上にあるボタンを押すと浮かび上がるのはなんとテンキーなのだ。もちろん数字や記号を押せば、フツーのテンキーと同様に数字が入力される。どうしてもテンキーを使わなければならないゲームでは、これをオンにしてやればいい。そのかわりマウスなどを接続して利用することになる。
吸気と排気のために
全方向が設計されているのだった
電源をONにして、フツーに使っているぶんにはファンはほとんど回らないが、3D系のゲームやベンチマークテストを実行すると、当然ベンチレーションシステムが起動する。
まず吸気のほうだが、さきほどの開いた底板のすきまと、さらに最初は気づかなかったのだが、キーボード面の奥の「無駄な空き地」のような場所からも吸気をしている。空き地はよくみると小さな穴が多数あいており、ここからファンが吸気を行うのである。まちがっても、ポストイットやステッカーを貼ってはいけないのだ。
排気は本体の後部と、向かって左側の側面から出てくる。それぞれ、すぐ下が例のスキマなので、余計なものを置いたり、壁際では使わない方がいい。排気が吸気にまわり込んでしまうのを防ぐためだ。
排気音は想像より静かで、あまり気にはならないが、出てくる排気はあたたかい。最近のGPU搭載ノートでは、排気を液晶面にそわせて上へ逃がすものが多いのだが、ゼフィーは背面と左側に素直に排出する。そちら側の近くにほかのひとがいる場合は注意して使おう。
別体のパームレストが付属
インターフェイスはウルトラブックなみ
キーボードがここまで手前に設置されているノートPCはめずらしいが、オレは日頃、机上では小型キーボードをパームレストなしで使っているのではあまり違和感はなかった。
とはいえ、そうでないヒトのために、ゼフィーには「ゲーミングパームレスト」という物体が付属している。硬質ながらやわらかさもある物体で、手前におくと確かにキモチがいい。
キーボードはおなじみAuraキーボードで、七色のバックライトをユーザーが定義して光らせることができる。
インターフェースは右側にUSB3.0のType-A×2とThunderbolt3のType-C×1が、左側には電源端子とHDMI、Type-A×2とヘッドホンジャックがある。有線LANが必要な場合に備えて、Type-A用のアダプターが同梱されている。
スピーカーはキーボードの左右に1つずつあるだけだが、薄型ボディのわりにはなかなかいい音がする。
ベンチマークテスト結果は良好
Max-Qは95%まで速度が出るのだ
さて、みんなが気になるベンチマークテストだがおなじみの順番に紹介していこう。比較するのは某社のゲーミングノートで、i7-7700HQ+GTX1070+VRAM8GBという、ゼフィーと同じ構成のマシンだ。もちろんMax-Qは搭載していない、17型の大型ゲームノートである。
まずはCinebenchR15だが、CPUの値はゼフィーが724で対象機は731、OpenGLは、ゼフィーが102で対象が93と、ともに数パーセントの差はあるがほぼ同じ数値である。
みんなの大好きな3DMarkでは、FireStrikeでゼフィーが12948で対象機は13554だった。つまり非Max-Qの大型マシンの95%の速度が出たわけである。TymeSpyも同様にゼフィーが92%の値で、逆にSkydiverでは逆点して104%の数値となった。長時間ベンチマークテストを回してみたが、過熱によって速度が落ちることはなかった。排熱はうまくできているようである。
SSDは非常に高速で、CrystalDiskMarkのマルチシーケンシャルの読み込みで3563、書き込みで1757と出た。搭載していたのはSAMSUNGのSM961シリーズ「MZVKW512HMJP」である。
バッテリーは50Whを内蔵している。ゲーミングノートとしてはかなり少ないほうで、Uプロセッサーを搭載したモバイルノートレベルだが、いつものBBenchで、液晶を最高輝度、省エネOFFの状態で約2時間駆動した。バッテリー量のわりには持つほうである。
バッテリーの充電は、これと同じ条件で利用しながらで、50%まで33分、70%まで49分、90%まで66分となかなか高速だが、バッテリーの容量が少なめなので、スゴイとまではいかない。付属するACアダプターは19.5Vの11.8Aで230Wの出力。ケーブル込みで940グラムある。
初のMax-Qオリジナル設計で
薄型ゲーミングノートの幕開け
先にテストしたMax-Q搭載のALIENWARE15はCPUがi7-7820HKでGTX1080を搭載していた。こちらも標準機で15181、Max-Q搭載機で14335が出て、Max-Qによる低下は約6%に留まっている。
これまで発売となっきたMax-Q搭載ノートはみんな従来モデルのボディそのままに、ひとつ上のGeForceを搭載したものだった。ゼフィーははじめてのMax-Qを前提としたノートであり、この薄さでi7-7700HQ+GTX1070搭載の大型ノートの95%の速度を出した。
ただし、使い方にはややクセがある。付属のマニュアルには、液晶は60度以上開いた状態で利用するように指示してある。つまり、フタを閉めた状態でキーボードとマウスとディスプレーをつないで、デスクトップ的には使えないというか、その場合も給排気のために、液晶は(というか底面は)開けて使う必要がある。
ベンチマーク中にキーボード面でいちばん熱くなるのは中央のROGマークとその奥のあたりで、キーボードやタッチパッドは手前にあるので、利用上は支障はない。ゼフィーのデザインは、今後の薄型ゲーミングノートのキーボードレイアウトにも影響を与えるかもしれない。
オレ的には15.6型なら4K液晶を望みたいところで、ライバル各社からも、Max-Q前提で新設計した「薄型軽量」の次世代プレミアムノートが出てくると、賑やかになってとってもウレシーのだ!!
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