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iPhone Xってどんなスマホ?(2):新しいカメラはFace IDの先も見ている?

2017年09月16日 10時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

 9月12日のイベントで発表された、”次の10年を創っていくスマートフォン”である「iPhone X」。2回に分けて、これまでのiPhoneとの違いや、新たに追加された要素について、お伝えしている。前回は主にiPhone Xで無くなったホームボタン周りについて紹介したが、Touch IDの代わりに採用されたFace IDについて、その設定や挙動をお伝えする。

Face IDを実現するためのカメラ類は、前面上部に搭載されている

個人を識別する情報が指から顔へ

 ホームボタンがなくなったことは、iPhoneの歴史の中で非常に大きな変化となった。前回の原稿で紹介したとおりに、画面の点灯、ホーム画面の表示、タスク切り替えなど、iPhoneを日々利用する中で、実に多くのことをホームボタンを使って行なってきたからだ。

 生体認証は、Appleがこだわっている顧客のプライバシーとセキュリティという価値を保つうえで、重要な要素となっている。その前提となっていたのが指紋認証のTouch IDだったが、ホームボタンがなくなり、Touch IDを搭載する場所がなくなってしまった。

Face IDは発表会の1つの目玉だった

 そこで別の方法を考えなければならなくなったのだ。

 Androidスマートフォンでは、たとえば端末の側面や背面にタッチ式の指紋センサーを用意するなど、前面の物理ボタン排除に対応した指紋認証システムを実現してきた。

 しかしAppleは指紋認証自体を諦め、顔面認証への移行を決めた。こうして搭載されたのがFace IDだ。

True Depthカメラシステムとは?

 Face IDを用いたiPhone Xのロック解除では、明確なジェスチャーが必要なくなった。iPhone Xを手に取って、モーションセンサーで画面が点灯した瞬間にロックが解除されるからだ。

True Depthカメラシステムは1つのカメラではなく、複数のセンサーの組み合わせによって構成されている

 素早く認証が済んでいるように見えるFace IDを実現しているのが、ディスプレイに食い込んだiPhone Xの前面で唯一配置されているハードウェアであるカメラとセンサー群だ。

 Appleはこれらを「True Depthカメラ」と呼んでいる。被写体の深度を正確に認識することができるカメラシステムのことだ。

 700万画素のセンサーとF値2.2の明るさを持つ前面カメラに加え、3万点のドットを照射するプロジェクターと、赤外線カメラを搭載した。実際の画像とともに、赤外線の点を読み取る仕組みを備えているということだ。

 被写体を立体的に捉えることができる仕組みを実現しているのが、True Depthカメラとなる。

True Depthカメラと機械学習でFace IDを実現

 Appleは顔を立体的に読み取ることができるTure Depthカメラと、A11 Bionicが得意とする機械学習処理によって、Face IDを実現している。

 一度顔を登録すると、日々の顔面認証でその人の顔の変化、たとえば髪型やメガネの変化、ひげ、太ったり痩せたりを学習していくという。指紋認証では5万回に1度の間違いが起きる可能性があると言うが、顔面認証は100万回に1度と、その正確性は指紋以上だとアピールする。

 Face IDの登録作業は、Touch IDの指紋登録よりも素早く終わる。iPhone Xの前で、首を回す運動を2回ずつ、計4回行なえば、もう画面登録が終わってしまう素早さだ。

画面を見ると一瞬で認証が済む

 それ以降は、画面を見るだけで、ロック解除やApple Payの認証を済ませることができてしまう。Face IDの手軽さは、それだけで新しいiPhone Xの価値と言えてしまうほどだ。

 ちなみに、この動作を素早く実現するA11 Bionicプロセッサが、実はiPhone 8にも入っていることを忘れてはならない。

Animoji、セルフィーポートレートと活用は広がる

 Touch IDは指紋認証のためだけのセンサーだったが、True Depthカメラは、必ずしも顔面認証のために用意されたものではなく、今後はiPhoneの標準的なセンサーとして採用されていくことが期待できる。

 AppleとしてはTrue Depthカメラを用いた2つのアイディアを、iPhone XとiOS 11の組み合わせにもたらした。

 1つ目はAnimojiだ。Animojiは、True Depthカメラで顔の50もの筋肉の動きを読み取り、画面内の絵文字の表情をリアルタイムで変化させることができる仕組みだ。

Animojiは顔の筋肉の動きを認識してアニメ化している

 デモビデオの中で、宇宙人の絵文字に対して、筆者が怒った顔をしてみたところ、宇宙人の頭がとげとげに変化した。つまり単に筋肉の動きだけを再現するのではなく、その表情は何か、ということまで認識していることを意味する。

 表情をつけた絵文字を静止画として送信するだけでなく、声とともに録画して、アニメーションをメッセージとして送信可能だ。

むしろこれがやりたかった、セルフィポートレート

 2つ目は、インカメラで実現するポートレートモードだ。自撮りを楽しむ若い女性は、このためだけに、iPhone Xを選らんでもおつりが来るほどだと思う。

 前述のとおりに、Ture Depthカメラは被写体を立体的に認識する。赤外線照射とその読み取りを行なうことで、iPhone 7 Plusで搭載された2つのカメラよりも正確に、被写体と背景を分離できる。結果として、より美しく、ポートレートモードの写真を撮影することができるようになるのだ。

 AppleはiOSで、カメラ画像の深度を扱うDepth APIを公開している。そのため、True Depthカメラを用いたサードパーティ製アプリの登場も期待できる。

 またもしリアのカメラに、より強力な赤外線プロジェクターが搭載されれば、人物だけでなく、空間認識にも役立てる事ができるようになる。すなわち、拡張現実や仮想現実をより快適に楽しんだり、それらのコンテンツを創るツールとして、iPhoneを活用できる可能性も開ける。

 iPhone 8シリーズは9月22日に発売されるが、iPhone Xは11月3日と、まだ発売まで時間がある。iPhone Xの多くはiPhone 8と共通仕様であり、iPhone 8が下位機種というよりは、iPhone 8の派生モデルがiPhone Xという見方が正確だろう。ただし、ディスプレイやフロントカメラシステムの変更は、iPhone体験やカメラの楽しみをより大きく変化させていくことになるだろう。


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