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iPhone Xとはどんなスマホ?(1):廃止されたホームボタンを、どう克服している?

2017年09月15日 15時20分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

 Appleは9月12日にApple Parkで開催したイベントで、10周年を記念するiPhone 8/iPhone 8 Plusとともに、次の10年を見据えた新しいコンセプト機と言える、iPhone Xを発表した。iPhone Xが発売されるのは11月3日と予定されており、手にすることができるまでにまだ時間がかかる。

 イベントで行なわれたタッチ&トライで実機に触れてわかったことを中心にお伝えしていこう。

前面がほぼディスプレイというデザインがやはり印象的なiPhone X

まずiPhone Xって、どんなスマートフォン?

 iPhone Xについて語る上で前提としておきたいのが、iPhone XがこれまでのiPhoneからまったくかけ離れた、新しい存在というわけではないことだ。iPhone Xの基本的な構成は、iPhone 8シリーズ、特にiPhone 8 Plusを前提としていると考えてよい。

iPhone Xにはこれからの10年を担うための新しい要素が盛り込まれているが、基本的にはこれまでのiPhoneと近い構成なのも間違いない

 6コアでグラフィックスと機械学習処理などを強化したA11 Bionicプロセッサ、新しい1200万画素センサーを備えた2台のカメラ、金属フレームとガラスのデザイン、ワイヤレス充電への対応など、多くの部分はiPhone 8 Plusと共通だ。

 iPhone 8シリーズにはホワイト、スペースグレイ、そして新色のゴールドが用意されるが、iPhone Xはホワイトとブラックの2色のみ。iPhone 8では7000シリーズのアルミニウムが用いられるが、iPhone Xは磨き加工が施されたステンレススチールが使われる。

 ハードウェア上での違いを挙げると、

・iPhoneとして初めて採用された5.8インチ有機ELディスプレイパネルによって、前面がすべてディスプレイで覆われたこと

・これにともないホームボタンが廃止されたこと

・ホームボタンがなくなったため、生体認証にフロントカメラとセンサー群「True Depthカメラシステム」を搭載し、Face IDを実装したこと

・そして背面カメラについては、望遠レンズに光学手ぶれ補正が採用され、レンズの明るさがF2.8からF2.4に向上したこと

という程度で片付いてしまうほどだ。

 スマートフォンの顔となるディスプレイの変化は確かに大きな違いだ。iPhone 8 Plusよりも大きい5.8型へと拡大され、HDR再生をサポートするなど、高画質化にも余念がない。

 ただ、他の有機ELディスプレイに比べると、色味を過剰に強調している印象がなく、これまでのRetinaディスプレイからの移行でも違和感が少ないだろう。

有機ELの特徴が強く出ているという印象ではなかった

有機ELディスプレイによるデザイン手法を活用

 面白いのはそのサイズだ。

 4.7型のiPhone 8は138.4×67.3mmで厚みは7.3mm、5.5型のiPhone 8 Plusは158.4×78.1mmで厚みは7.5mm。これに対して、iPhone Xは5.8型なのに143.6×70.9mmで、厚さ7.7mmというサイズだ。

 iPhone Xが最も厚いが、端末のサイズはちょうどiPhone 8とiPhone 8 Plusの中間のような位置づけになる。ディスプレイをデバイスの縁ギリギリまで配置したことで、より大きな画面を小さなデバイスに採用することができている。

縁ギリギリまでディスプレイの領域だ

 ただし、有機ELディスプレイを搭載するAndroidスマートフォンでは、これまで用いられてきた手法でもある。

 重量も174gで、3モデルの中間だ。iPhone 8 Plusは202gと重量がさらに増しており、写真にこだわる場合、デュアルカメラを搭載するより軽いモデルならiPhone Xという選び方もある。

ホームボタンがなくなったことを克服する方法とは

 iPhone Xがこれまでのモデルと異なる点は、ディスプレイを拡大させた結果、ホームボタンという物理的な要素が排除されてしまった、ということだ。

 ホームボタンには画面の点灯、ホーム画面を開く、Touch IDによる指紋認証、ダブルタップによるリーチャビリティ、ダブルクリックによるマルチタスク、長押しによるSiriの呼び出し、という6つの役割があった。

 そのボタンがなくなったため、各機能を他に逃がしていかなければならなくなった。その主な手法は、ボタン以外の操作を採用すると言うこと。

 まず画面の点灯は、これまでもサイドボタンでできたため、引き続きその役割を果たすが、モーションセンサーを用いて、スマートフォンを持ち上げて点灯させる機能も引き続き用意される。

 Siriの起動がサイドボタンの長押しに割り当てられた。もちろん「Hey Siri」と声で呼び出すこともできる。これらの機能は今までも複数の方法が用意されており、操作に幅を持たせる配慮が感じられる。

ホームボタンの本来の役割をどうするか

 ホームボタンの役割であるホーム画面を開く動作は、ロック画面やアプリ起動中に使う、基本的なiPhone操作だ。

 その操作は、画面下端からのスワイプに置き換えられた。ロック画面でもアプリ起動中でも、画面下端から短くスワイプすれば、ホーム画面にすぐ戻ることができる。それを示すため、画面下部には操作可能な領域を示す線が入っている。

 ちなみに今まで、画面下端から上へのスワイプは、コントロールセンターの起動に割り当てられてきた。iPhone 8とiOS 11の組み合わせでも同様だ。しかし、iPhone Xではホームボタンの役割に割り当てられてしまっている。

 そこで、iPhone Xでは、画面上部、ちょうど受話部分のせり出しの右側の部分を上から下にスワイプすると、コントロールセンターが起動する、という操作が採用された。それ以外の部分での画面上部からのスワイプは、通知センターの呼び出しとなる。

タスク切り替えはジェスチャーに

 ホームボタンで行なってきたマルチタスク画面の呼び出しは、ホーム画面の呼び出しに一工夫加えて実現されている。

 画面下端から上方向にスワイプする際、指を画面上でちょっと止めると振動し、マルチタスクメニューが開くというものだ。iOS 11をiPadに入れた際に採用されている、ドックの呼び出しとコントロールセンター+マルチタスクメニューの呼び出しの操作方法に近いという印象だ。

画面下部からフリックし、途中で止めるとマルチタスク画面になる

 ダブルタップしなくて良いし、ホーム画面に戻るジェスチャーとほぼ同じであることから、むしろホームボタンのダブルクリックよりもシンプルな方法へ進化した、と考える事ができる。

 iPhone Xについて、デザインやiPhone 8との違い、そしてなくなったホームボタンを代替する操作方法について触れてきた。

 続いて掲載予定の原稿では、やはりホームボタンに依存する機能だった指紋認証のTouch IDに変わって導入されたカメラシステムのデモと、それを生かした新機能を紹介する。


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