いよいよ登場した「iPhone X」は、事前のうわさ通りの特徴を備えつつも、Face IDの精度やポートレートライティングによる印象的な写真、10万円を大きく上回る価格など、驚きの連続でもありました。
このiPhone Xの「X」はギリシャ数字で10を意味しており、「テン」と発音するのが正しいようですが、ついつい「エックス」と読んでしまいます。しかし、それは間違いではないかもしれません。
あらゆるスマホの仮想敵になってきたiPhone
2017年にiPhoneは10周年を迎えたこともあり、CEOのティム・クック氏は「次の10年を見据えたスマートフォン」として、iPhone Xを発表しました。
しかしアップルは「iPhone 10」ではなく、あえてOS Xのようにギリシャ数字のXを使ったのは興味深いところです。予備知識のない人から「エックス」と読まれることも、想定の範囲内と考えている可能性があります。
その背景には、スマホ市場でiPhoneが置かれた特殊な立ち位置があると筆者は考えます。最近では、iPhoneが発表されるたびに「その機能はAndroidで先に実現していた」と指摘され、そうした声は年々増えています。
一方、Androidスマホの発表会では「iPhoneより優れている部分」を示すことが定番になっています。特に安価なスマホの場合、絶対的なブランドであるiPhoneに対してわずかでも優れたポイントがあれば、圧倒的な売りになるからです。
iPhoneとしても、リスクを取ってまで最新技術を採り入れる必要性はなくなりつつあります。少しでも不具合があれば世界中に影響が及ぶため、iPhoneは最も失敗が許されないスマホといえます。
むしろAndroidスマホのメーカーを競争させ、成功したものがあれば取り込むという、横綱相撲に徹したほうが良いでしょう。
「X」は次の10年を見据えた実験的な製品ラインか
一方で、失敗しない製品作りを繰り返していると考え方が保守的になるのは否めません。大企業の内部には様々な事情でお蔵入りになったアイデアや新技術が眠っているのが通例です。アップルも相当に溜め込んでいるのではないかと想像できます。
こうした視点からiPhone Xを見ると、メインストリームのiPhoneとは異なる実験的な位置付けにあることが読み取れます。Touch IDの廃止など使い勝手も大きく変わり、iPhoneユーザーを満足させるか、それとも失望させるか、ぎりぎりのラインを攻めています。
一方で、これまで通りのiPhoneを使いたい人にはiPhone 8が用意されており、値下げされたiPhone 7や6s、SEも狙い目です。「iPhone Xを受け入れるか、さもなくばAndroidか」と迫るのではなく、「いろいろなiPhoneがあります」と選ばせてくれるのが、アップルのうまいところです。
このようにiPhone Xのターゲットは、アップルが初めた新しい実験に立ち会い、7や8を超えた先にある世界を見てみたい人といえるでしょう。そういう意味で、テンでもありエックスでもあるiPhone Xは正しいネーミングといえます。
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