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iPhoneで撮った動画を実家のテレビに送る「まごチャンネル」が面白い

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34歳の男が家事育児をしながら思うこと。いわゆるパパの教科書には出てこない失敗や感動をできるだけ正直につづる育休コラム。

 家電ASCIIの盛田 諒(34)です、おはようございます。水曜の育児コラム「男子育休に入る」の時間です。今年3~4月に合計8週間の育児休業を取得してワーワーやりました。いまは復職していて寝不足です。寝不足のせいかほくろが増えたので、皮膚科と美容整形外科で除去費用がどれだけ違うか調べていますが、妻には「そんな気にしなくても」と言われています。


●動画を親に送りたい

 赤ちゃんが生まれてからというものiPhoneのカメラロールが赤ちゃんです。寝顔や笑顔もかわいくて良いですが、変顔や泣き顔は何度見ても笑えて良いです。疲れているときに元気をもらっています。ピープル欄では新生児の赤ちゃんと最近の赤ちゃんが別に分類されています。iPhoneの顔認識が成長した赤ちゃんを別人と判断しているようです。すさまじい変化です。

 すごい速度で成長する赤ちゃんの様子を親にも見せてあげたいと思い、「ノハナ」というサービスで写真集を毎月1冊作って送っています。

写真集が毎月1冊無料
ノハナ

https://nohana.jp

 ノハナは毎月1冊無料の写真集が作れるサービスで、アプリも軽く、使いやすくて便利です。写真集は有料の高画質版もありますが、高画質版で作った写真集を見たことがないためか不足は感じていません。1回でも高画質版を見たら心がゆらぐと思うので、“おためし高画質プラン”などを設けてみるといいのではないかと思います。

 写真はまだいいのですが、動画は送るのが厄介です。

 メールは容量上限ではじかれるし(たとばGmailは25MBまで)、LINEは5分以上の動画を送れません。YouTubeに非公開アップロードしてURLを知らせる方法もありますが、1ファイルずつやっていくのは面倒です。ファイル転送サービスは説明が難しいです。そもそも親がPC・スマホ・タブレットをもっていないとお手上げです。DVDに焼いて送るくらいです。

 写真にしても面倒くさがる人はいると思います。わたしの妻は編集者なので写真集を作るのも苦ではないようなのですが、写真をアプリに入れて、選んで、キャプションを書いて、順番を考えて……とやっていくには、時間とやる気が必要です。

 そこで「まごチャンネル」という道具の登場です。日本のベンチャー企業チカクが作っているもので、面白そうだと思っていたので、サンプルを借りてみることにしました。

まごチャンネル
価格 1万9800円(2ヵ月分の月額料金込み)
料金 月契約1480円もしくは年契約1万5000円(月額1250円相当)
チカク

https://www.mago-ch.com

 まごチャンネルはテレビにつなげられる携帯電話のようなもの。3G回線でインターネットにつながっています。子供がスマホで選んだ動画や写真が自動的にまごチャンネルに届き、HDMIケーブルでつないだテレビで孫を見られるしくみです。かしこいですね。

※取材当時。2020年時点ではLTE対応(2020年12月7日追記)

 本体に記録媒体(ストレージ)が入っていて、写真5万枚、1分動画を2000本ほど保存できます。容量は非公開ですがiPhoneで撮影した写真が約2~3MBと考えたら100~150GBですかね。足りなくなったら専用のUSBメモリーで容量を追加できるそうです。市販の外付けHDDは使えません。通信回線はNTTドコモ。ソラコムというベンチャーのSIMを使っています。

 テレビのリモコンで操作します。基本操作は決定ボタンで再生・停止。「上」ボタンを押すと、写真や動画をお気に入りに入れられます。メニューからお気に入りだけも見られます。

内容物です。本体、HDMIケーブル、電源ケーブル、リモコン

まごチャンネル本体。かわいい

HDMI、USB、電源です

新着ファイルが届くと窓の形にピカピカします

つなげてみるとこんな感じです

テレビのリモコンで操作します

 問題は、親がちゃんと使えるか。

 有料でお店の人に設置してもらうこともできますが、親に「どうやって使うの?」と聞かれることなく気軽に使えるというのがサービスのポイントなので、あえて何も伝えず「プレゼントがあるから使ってみて!」といって、親に「まごチャンネル」を渡してみました。まごチャンネルにはあらかじめわたしのアプリから動画と写真を送ってある状態です。

 さてどうなるでしょうか。


●テレビ自体が難しい

開封の義

 ん?ん?ん?(箱を開けて本体をとりだす)

 これ下にケーブル類があって……あー、「まごチャンネル」を見るんだ。テレビ電話みたいなものかな? テレビを通して孫の動画を見られる、というものだ。ほー?

 これをどうするの?

 「設置ガイド」読んだら?

 そうなんだけどね。(読まない)

すぐモノを手にする父、説明書を読む母

 これ(本体)で受信するっていうことなのか。「テレビでインターネット」じゃないけど。

 これ(電源ケーブル)を?

 そこにさしこんで。それは電源ですね。次がテレビ接続用のケーブル。

「これは?」「それは電源ケーブルですね」

 これ(本体)は何なの?

 受けるものですね。受けたものをテレビに流す。川越ケーブル(地元のケーブルテレビ)のあれ(セットトップボックス)とおなじだね。

 「先端が台形になっているので長いほうを上にしてさしましょう」か。

HDMIケーブルなどを接続していきます

 これをテレビの外部入力で、入力切り替えを押すと……

 まごチャンネル!

 まあ~~~、すばらしい!

3分ほどでケーブルをつなぎ終えました

 とまあ、こんな感じでした。一応それなりに順調に進みます。

 専用リモコンがあるのに説明書に「お手持ちのリモコンを使います」と書いてあるのに混乱しましたが、本体にHDMIケーブルと電源ケーブルをつなぐところまでは進みました。

 しかし、テレビにHDMIケーブルをつなぐところで若干混乱が生じます。

 父親が「これはどこにつなぐんだ?」と言い、テレビの裏側をのぞきこむのですが、端子が並んでいるところにはホコリよけのフタがかぶせられていて、見つかりません。

 「ほら、レコーダーをつないだところに……」

 と、ヒントを出すのですが、レコーダーをつないだときのことをおぼえていないらしく、なかなか見つかりませんでした。

 「PCならわかるけど、TVで線(ケーブル)なんてさしたことないから」

 と、父は言っていました。

 たしかに、オーディオ系の端子は後ろに隠れていることが多いし、ふつうにテレビを見ているだけなら見ることもめったにないので、PCの端子とちがって、何ができるのかはわかりづらいですよね。HDMI端子の上下も、「台形の長いほう……」と悩みながらつないでいました。

テレビの裏側にもぐって電源をつなぐ父

最難関HDMI。「台形の長い方……」

 入力切り替えもあまりよくわかっていない雰囲気で、

 「6番がまごチャンネルね」

 と、理解していました。「外部入力5」がレコーダー、「外部入力6」がまごチャンネルですが、たしかにつないだ段階では名称が出ないので分かりづらいですよね。この辺はテレビのわかりづらさで、まごチャンネルのせいではないです。父は、

 「ケーブルテレビの人が設定してくれてさ、1ヵ月目はタダで、その後は受信料から引き落としってことにしたらいいんじゃないかな」

 と言っていました。なるほど。ケーブルテレビの営業だけでなく、郊外系の家電量販店や、携帯電話ショップあたりが寄ってきそうな話です。

入力切り替えで若干引っかかる父

 本体を電源につなぐと、窓のような形の灯がついたり消えたり。新着ファイルが届いた証拠です。外部入力を選ぶと、わたしが赤ちゃんを抱っこした写真が出て、「オッ諒だ!」と父が喜びました。たしかにわたしですが、驚くポイントはそこではないです。


●広告入り無料版が欲しい

 基本操作はリモコンの決定ボタンを押すだけで、父もすぐ慣れました。

 決定ボタンが「戻る」ボタンを兼ねていることは、少し理解しづらかったようです。新着ファイルを見たいとき、決定ボタンを押して、メインメニューに移って、左に移動させて「新着」を見るというのも、ややとまどっていました。

 しかし、一度慣れたあとは、楽しんでもらえたようです。気に入った動画は何回もくりかえし見て、「エヘヘ、かわいいね~」と相好をくずしてくれていました。ただ、

 「これはどこ?」

 「これは何の人?」

 と、聞かれるので、そのつど「これはベビーマッサージの先生」など、隣で答えることになりました。たしかにタイトルがないのでわかりづらいです。動画を撮るときに「これからベビーマッサージに行きまーす!」などレポーターふうのアナウンスを入れる必要がありそうです。

写真も動画も説明がないので「これはどこ?」となりました

 料金の支払いについてもどうすればいいのかという話になりました。孫の写真が見られるならと親が支払うことも考えられると思うのですが、

 「子供がぜんぜん送ってこないんだよ~、ってことになったらガッカリだよね」

 と父が言っていて、そりゃそうだなと思いました。

 スマホやタブレットならウェブが見られるからまあいっか、という話になるかと思うのですが、まごチャンネルはわたしたちがファイルを送らなければ、たんなるお金がかかる箱です。月額料金を払ってもらっているぶん動画を送らないといけないというプレッシャーも感じます。

 逆に、子供が通信料金を払うと親が恐縮してしまうので、どうすればいいのかな~という気持ちになりました。これについて父と母は、

 「これなら広告を入れてもいいんじゃない? テレビならそんなに気にならないし。見ている人もわかりやすいから、『孫のプレゼントにピッタリの木製おもちゃ』とか、『孫に嫌われない加齢臭対策』とか、そういう広告を出したらいいんじゃない」

 などと言っていました。頭がいいです。

 まごチャンネルの基本設計は広告なしのプレミアムプランからはじまっているわけですが、広告あり、有料で広告表示なしというフリーミアムプランを作ってもらえると、さらにユーザーの母数が増えるようになるのではないかと思いました。ニワトリとタマゴですが、契約件数が増えるとすれば、通信料金についてもソラコム(NTTドコモ)側と交渉できると思うので、まずは人数を限ってトライアルでやってみるといいのではないかと思います。


●時間を共有する喜び

 一方、子供がすることは写真や動画のアップロードだけです。

 使っているのが3G回線なので、ファイルを送るのは時間がかかるかな、と思ったのですが、30秒~1分ほどの動画は5分もかからず届きました。予想外に早いです。

 面白いのは、親が見たときアプリに通知がくることでした。

 「ご実家がまごチャンネルを見始めました。」

 と、やや間抜けなアナウンスなのですが、親と一緒の時間を過ごしている気分で、ほんのりうれしくなります。親が写真や動画を「お気に入り」に入れたときも通知が来るので、家族だけでやっているInstagramに「いいね!」がついたような気持ちになります。

親がまごチャンネルを見るとアプリに通知がくる

 まごチャンネルで感じるのは、時間を共有する喜びです。

 親もとを離れて暮らしはじめたり、赤ちゃんが生まれたりすると、時間というのは相対的なものだと感じさせられます。「ゾウの時間 ネズミの時間」ではないですが、人生のどの地点にいるかによって、生きる時間は変わってきます。ふだんは同じ世界、同じ時間に暮らしているように思っていますが、じつはわたしたちは、まったくちがう時間を生きています。

 ワーワー言いながらHDMIケーブルをつないでいる父、赤ちゃんを抱っこして哺乳瓶からミルクをあげながら後ろから父を見ている母と、わたしたちが一緒の時間を過ごすというのは、じつはとても貴重な瞬間なのだと感じます。写真に比べると動画を撮るのは気合いがいるのですが、少しがんばって、“親とともにできる時間”を増やしていけたらな、と思いました。

 

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書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ、家事が趣味。0歳児の父をやっています。Facebookでおたより募集中

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