インテルが2017年6月のCOMPUTEX TAIPEIで発表した「Core Xシリーズ」のうち、比較的コア数の少ないモデル5製品(Core i9-7900X、Core i7-7820X、Core i7-7800X、Core i7-7740X、Core i5-7640X)の出荷が秒読み段階に入った。近頃のインテル製品には珍しく、まだ正式な価格も公表されていない慌ただしい状態だが、この状態を生み出したのは黒船「Ryzen 7」の存在であることは明かだ。
8コア/16スレッドで同価格帯のインテル製CPUよりマルチスレッド性能で上回るRyzen 7のインパクトは、Core Xシリーズの登場を前倒しさせるのに十分な力を持っていたようだ。
今回は運良くCore Xシリーズのうち、10コア/20スレッドの「Core i9-7900X」と、4コア/8スレッドの「Core i7-7740X」のエンジニアリングサンプル(ES)版を入手することに成功した。ただ、今回は検証と原稿執筆にかけられる時間が半日程度と厳しいため、主に定格での性能を中心に検証することにする。
Core Xシリーズには2種類のコアが存在
すでに当サイトでもCore Xシリーズについて報じてはいるが、ここで簡単にまとめておこう。今回登場したCore Xシリーズは、エンスージアスト向けCPUラインの最新モデルというべきもの。ソケットは従来の「LGA2011-v3」から「LGA2066」に変更されたが、製品のコア数が幅広いのが旧世代製品と決定的に違う点だ。
4コア/4スレッドの「Core i5-7640X」と「Core i7-7740X」の2つは“Kaby Lake-X”のコード名で開発されてきたもの。Kaby Lake-SのK付きモデルと基本スペックは同じ(メモリーもデュアルチャンネル)だが、わずかにクロックが高く設定されている。高クロックを狙いたいオーバークロッカー向けのラインだ。
そして、残りの6コア12スレッド以上の製品は“Skylake-X”のコードネームを持った製品群だ。前世代にあたるBroadwell-Eの後継にあたるが、直近でリリースされる(7月には発売しているだろう)のは10コア/20スレッドのCore i9-7900Xまで。12コア/24スレッドのCore i9-7920Xは8月、14/16/18コアの製品については10月をめどに調整が進められている状態だ。
Kaby Lake-XとSkylake-Xという設計ルーツの違う製品を1つのソケットに統合したのがCore Xシリーズの面白さと言える。しかし、対応するIntel X299チップセット搭載マザーボードの中には、Kaby Lake-Xには対応しない製品も存在する。Core XシリーズのメモリーはDDR4-2666を正式サポートしたが、Skylake-Xはクアッドチャンネル、Kaby Lake-Xはデュアルチャンネルなのでメモリーモジュールの搭載パターンが異なることに起因するようだ。
詳しくは各マザーボードメーカーのサイトにあるIntel X299チップセット搭載マザーボード用のマニュアルを参照して頂きたいが、今回テストしたマザーボードにKaby Lake-Xを搭載した場合は、CPUの片側4スロットのみが有効になった。両側のスロットを使うためにはSkylake-Xでなければならないのだ。
上記で示した通り、まだ正式に出ていないCPUなので各種ツールが対応しきれていない状況だ。「CPU-Z」やタスクマネージャーではCPU名が正しく表示されないほか、「HWiNFO64」ではセンサー一覧でベースクロックが96MHzと誤認されるなどの不具合も見られた。どちらも製品版や対応版待ちになる。
今回は検証時間が極めて限られていたため、比較対象はCore i7-7700Kのみに絞り込んだ。Core i9-7900XとCore i7-7740Xがどの程度Core i7-7700Kより優れているのかを検証する。さらに、Core i7-7740XをBIOS上で倍率50倍、5GHz動作にオーバークロック(以下、OC)した際のパフォーマンスもチェックした。
なお、Intel X299チップセット搭載マザーボードのBIOSは原稿執筆時点での最新版(0402)、メモリーはすべてDDR4-2666の4枚挿しに統一している。
【検証環境】
CPU:Intel「Core i9-7900X」(10コア/20スレッド、3.3GHz、最大4.3GHz)、Intel「Core i7-7740X」(4コア/8スレッド、4.3GHz、最大4.5GHz)、Intel「Core i7-7700K」(4コア/8スレッド、4.2GHz、最大4.5GHz)
CPUクーラー:CRYORIG「A40」(簡易水冷、240mmラジエーター)
マザーボード:ASUS「ROG STRIX X299-E GAMING」(Intel X299)、ASRock「Fatal1ty Z270 Gaming K6」(Intel Z270)
メモリー:Corsair「CMU16GX4M2A2666C16R」(DDR4-2666、8GB×2)
グラフィック:NVIDIA「GeForce GTX 1080 Founders Edition」
ストレージ:Crucial「CT1050MX300SSD3/JP」(M.2 SATA SSD、1050GB)
電源ユニット:Silverstone「ST85F-PT」(850W、80PLUS PLATINUM)
OS:Microsoft「Windows 10 Pro 64bit版」(Creators Update適用)
まずは3DCG系ベンチで10コア/20スレッドの破壊力を確認
それでは定番「CINEBENCH R15」のスコアー比べから始めよう。10コア/20スレッドの破壊力はもちろんだが、インテル製CPUの強みであるシングルスレッド性能がどの程度か気になるところだ。
Core i9-7900Xのマルチスレッド性能はCore i7-7740Xの2倍以上。あくまで原稿執筆時点でのウワサでは、Core i9-7900Xの予価は11万円前後、Core i7-7700Kが4万円程度。なので、価格なり……とは言いがたい部分はある。だがCPU1基2000ポイント超は見ていて気持ちがいい。
そして、何より驚いたのは定格運用の状態でCore i9-7900X、Core i7-7740X、Core i7-7700Kのシングルスレッドスコアーが同一ラインであることだ。コア数が多いCPUはクロックを抑える関係上シングルスレッドが弱くなる傾向が強いが、Core Xシリーズはシングルスレッドも強い。ライバルのRyzenはシングルスレッド性能が弱いため、マルチもシングルもどちらも強いCPUが欲しいなら、Core Xシリーズは非常に魅力的な選択だ。
次は同じ3DCG系である「V-Ray Benchmark」を試してみよう。CPUかCUDAを使ってレンダリングするベンチだが、CPUだけ使うテストでの処理時間を比較する。
こちらもコア数の多いCore i9-7900Xが圧勝。時間の比率もCore i7-7700Kのほぼ半分になっているなど、CINEBENCH R15のスコアー比に近いものが出ている。
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