ダイナミックダイレクトメールを実現したい
さらに、デジタル印刷において、日本HPを選択した理由として、「ユーザー主体の会合であるDSCOOPに参加したが、本音で情報交換が行われている環境があることに加え、HP.Incには、1000人を超える開発スタッフがいることや、将来的に向けてアップデートができることを評価した。技術力やスピード感が重要であり、そこに魅力を感じた」とした。
同社では、顧客の属性データを活用し、パーソナルライズ化したダイレクトメールを送付することが可能な「ダイナミックダイレクトメール」のビジネスを拡大していく考えを示しており、そこに日本HPのデジタル印刷を活用していくという。
一方、デジタル印刷に関するコンサルティングや支援などを行うグーフの岡本幸憲社長兼CEOは、「いままでの印刷に関する契約は、何枚印刷して、それがいくらでできるのかというものであったが、デジタル印刷は、サービスとつながるために、いつまでに、どれぐらいの数を、どの地域に、どの品質で提供するといったSLAを結ぶ動きが出てくる。これまではデジタルvsアナログという考え方があったが、それが終わり、これからはデジタル印刷と紙が連携し、デジタルサービスと遜色がないプリントサービスが登場したり、Print of Thingsといった活用が始まる。紙も自動化すれば、コストやスピードを改善でき、データとの組み合わせによって、パーソナライズも当たり前になり、追跡性も確保でき、さらに紙ならではの保存性の維持できる」などと述べた。
印刷は変化するものではない──HP
米HP Inc.ページワイド・インダストリアル部門ワールドワイド・マーケティングディレクターのデビッド・マーフィー(David Murphy)氏は、「1984年に、印刷は終わりを迎える、と言われた。だが、そのときに、HPはインクジェットによる新たな印刷機を生産しはじめた。この30年間は、その言葉が間違っていたといえる。デジタルとモバイルの活用が増えたことで、テレビの視聴時間は減少したが、印刷には変化がない。印刷は重要な位置にあり、ほかにとって変わられてしまうものではない」と話す。
「確かに20世紀の印刷機は、競争力を失ったが、インクジェットは新たな価値を提供できる技術であり、商業印刷市場に激震を与えた。デジタル印刷が、メディアミックスにおいて大きな価値を生み、新たな機会を生み出している。安価であり、小ロットで、短納期でありながら、最適な品質を保証できる。とくに、ダイレクトマーケティングではデジタル印刷の効果は大きい。パーソナルズ化により3~5倍もレスポンス率があがり、さらにURLを併用したクロスメディアの活用によって、URLだけの訴求よりも高い効果が出ている」などとした。
マーフィー氏は、具体的な導入事例についても説明。保険会社であるEthiasでは、最寄りの拠点や属性情報をもとにした記事など、7000万を超えるコンテンツの組み合わせを用意したデータドリブン型のダイレクトメールを送付。84%がオフィスにおける対面での契約となり、インターネットだけでは得られない契約者を数多く獲得したという。ここでは表紙や文章中に個人名を印刷して配布。パーソナライズ化された内容である点が消費者に受け、保険内容のアップグレードなどの成果もあがったという。
また、ベルギーのスーパーマーケットであるColruytでは、300万人の会員に対して36ページのカタログ型ダイレクトメール送付していたが、必要な情報ばかりではないため、200万人以上がこれを廃棄していた。そこで毎週、パーソナルラズ化した情報だけに絞り込んだ4ページのダイレクトメールを送付したという。これは、購入履歴をもとに、それぞれの顧客が必要とする情報にだけ集約。結果として、来店客の顧客単価が増加し、全体の売上げが増加。さらに、会員カードへの加入者数も増加したという。
さらに、体験型旅行プランを企画するKazouでは、家族構成をもとに最適な旅行プランを掲載したり、かつての旅行体験の写真などを、パーソナライズしたダイレクトメールに掲載することで、レスポンス率を高めることに成功したという。同社では、5600万種類のコンテンツの組み合わせを提供できるようにしており、個別のユーザーに最適化した情報を提供できるという。
マーフィー氏は、「デジタル化したインクジェット印刷機は、企業に利益をもたらすことができるものである。コストを削減でき、パーソナライズ化した最新の関連情報を提供でき、ダスレクトメールのレスポンス率を高めることができる。いまや、こうした変化が市場で起きている。新たな顧客とのコミュニケーションの手法が印刷業界で実現されている」などと語った。
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