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仕組みレベルから農業の世界を変えるスタートアップ

専業農家が増える未来 垂直統合型で農業ビジネスを変えるLEAP

2017年06月09日 07時00分更新

日本以外の国でのパッケージ展開も視野に

 LEAPのモデルが興味深い点は、「土」という農業にとって大変重要なファクターを、従来の農業と比べるとかなり自由に調整できる点が大きい。気候条件とマーケティング要素さえ合致すれば、これまで農業が成りたたなかったような場所での実現も見込めてくる。

 ハウスでのクラウドやITの活用は当たり前で、徹底したワークフローの省力化・これまでイチから学ばなければならないような技術の平準化が目指されている。こういったこれまでの農業で見えなかった数値が実現することで、見えてくる価値はさまざまだ。

 藤沢市での耕作許可を得たことで、LEAPでの耕作を希望する就労者の募集も始まってくる。さらに今後、一定量の収穫量と単価保証が見込めれば、エグゼクティブオーナーからのクラウドファイナンスとして一定の資金調達プラットフォームを作る予定もあるという。

 このような点でも、seakはこれまでの農業ベンチャー企業とはあり方が異なっている。資金調達で協力を申し出たグリーベンチャーズや、三菱などの大手各社はいずれも農業からは遠いが、だからこそ外側からの視点としてその存在が重要だと栗田氏は語っていた。

 現在の日本の農業では、とにかく就労者が足りない。栗田氏は就農者を増やすために、「日本には20万人程度の就農者が増やすことが必要という試算があるが、そのための人財はすべて当社から提供できるようにするくらいの野望はある。就農者をこれだけ増やして、本格的にビジネスにするためには一次産業だけでなく、二次産業、三次産業へとしかるべきタイミングで進出する必要もあるだろう。そういったことも当たり前にやっていきたい」と意欲的だ。

 提供された土地が利用できないという窮地から始まった袋農法だが、「水さえあれば取り組めるという特徴から、日本以外の場所でも取り組める目処が出てきた。LEAPは日本だけでなく、アジアで展開することも検討しており、これが実現すればさらに大きなビジネスとしての可能性がある。フランチャイズモデルを確立していきたい」と栗田氏は目を輝かせる。

 食糧難の対策として農作物を輸出することをビジネスとすることもできるが、「輸出にはデリバリーコストがかかる。むしろ、技術ごと輸出する方がビジネスとしてメリットがあるのではなないかと考えた」という。

 こうした野望を実現するためには、「これまでは外部のパワーを活用してきた技術開発のスタッフを社内にそろえる必要がある。フランチャイズビジネスを展開するために、システム面、オペレーション面での強化も必要」と体制とマンパワー増強が今後の課題になる。

 日本の農業が抱える大きな課題を解決するために、seak自身の課題をどう解決していくのか、栗田氏の経営者としての戦いはこれからが本番となりそうだ。

●seak株式会社
2014年4月10日設立。農産物の生産、販売、農業にかかわる総合的なプラットフォーム「LEAP」の構築を目指す。
調達関連では、2016年9月に寺田倉庫株式会社、三菱UFJキャピタル5号投資事業有限責任組合、個人投資家を引受先とした総額約6000万円の第三者割当増資を実施。2017年3月にはグリーベンチャーズ株式会社、寺田倉庫株式会社、三菱UFJキャピタル5号投資事業有限責任組合を引受先とした第三者割当増資を実施すると同時に、日本政策金融公庫の農業資金も活用し、総額約3億円の資金調達を実施。
社員数は2017年6月現在14名。さらなる栽培体制拡大に伴い、藤沢市拠点におけるファーマー社員を募集中。

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