質疑応答で山本一成氏のコンピューター論に思わず川上会長が質問
――佐藤康光会長、第2期電王戦トータルの結果について将棋連盟としてどう受け止めるのか。将棋という分野ではもう何年も前からコンピューターの棋力はトップ棋士を超えているという声を聞かれていたと思います。今回、佐藤天彦名人がPonanzaに連敗したという事実をもって、名実ともにコンピューターが人間を超えたということを認められるでしょうか?将棋連盟会長の立場としてお聞かせください。
佐藤会長:第1期、第2期と結果が出ておりません。今回も佐藤天彦名人ということで、叡王戦で優勝されて、連盟としても自信を持って送り出した棋士ですので、それが連敗という結果となりましたが、棋士は負けず嫌いな部分もありますので、どう受け止めるかは皆様にご判断いただくしかないと思います。ただ、今回も第1期も結果が出なかったことに関して、コンピューターソフトの方が一枚も二枚も上手だったということは認めざるを得ないというふうに思っております。
――本局の内容について、佐藤叡王が振り返って、一番意外だった手やこう指すべきだった手はどこだったのか。開発の方には、Ponanzaの評価値が急に上がったり下がったりして印象に残った手はどこか教えてください。
佐藤叡王:まだ現段階では検証ができていませんので、なかなか自分自身が、具体的にどこがどれだけ悪かったというのはわからない、というのが正直なところです。自分自身が特に難所だと感じでいた部分としては、Ponanzaに△5六角(64手目)と打たれてから△6五歩と突かれたあたりです。△6五歩と突かれた局面は、こちら側に複数の選択肢があり、非常に難解という局面だと思って力を入れて考えました。そこのところの判断が、どうだったのかというところはあります。それ以降に関しましては、△7五歩(70手目)に対して▲5五角と打った手とか。
ただちょっと今の段階では、どれが問題だったのかとか、どこにチャンスがあったのかとかいうことは、ハッキリとはわからないですね。最終的には△8六歩(78手目)とPonanzaに打たれたところで、応対の仕方がわからなかった。まあ、もし難しいとしても、その難しさを保つだけの手がわからなかったというところで、そこから先に形勢がハッキリと悪くなっていったのかなと思います。
山本氏:あくまでPonanzaが言っていた話という前提で進めますと、序盤はいまいちな感じで進んでいたんですね。人間の言葉で言うとちょっと指しにくいかな、程度の評価値でした。ところが評価値が互角に戻ったのは、佐藤叡王が穴熊を目指し始めたころ。具体的には▲6八金右(43手目)ですね。と言っても穴熊をすることはPonanzaもわかったんでしょうけど、最近のコンピューター将棋は、人間が考えているほど穴熊の評価は高くないようですね。どちらかというと、バランスを保つような将棋を好んで指しているという印象です。
専門的な話になりますけど、コンピューターたちが角換わりを指してきた新しい形ですね。あれも堅さよりはバランスという感じで、そのバランスを保つというのは、なかなか人間的にはちょっと大変なんですよね。バランスを保って勝つというのは。だから穴熊にしてスッキリ勝ちたいじゃないですか。バランスを保って勝つというのは、コンピューターらしい無限の体力と思考力があるからできる指し回しかなという印象を持っています。
――電王戦が将棋界にとってどういう意義があったと考えているのか。また電王戦が終わったことで今後、将棋プログラムの開発に対してモチベーションに変化があるかどうか。今後さらに将棋ソフトを強くしていく意欲に変化が起きるかどうか。
山本氏:私としてちょっとしゃべってみたいなと思ってることは、2017年というのは、人間とコンピューターがゲームという固定された勝敗がスッキリつくもので戦えた時代、奇跡のような時代だったんですね。これは別にどのような存在であれ、宇宙人が来ても将棋や囲碁をできるんですね。そして、コンピューターの発明から70年経って、とうとう人工知能が人間を上回ったわけです。将棋も囲碁もとても大きな世界ですが、現実世界と比べれば、ハッキリとルールが決まった規定された世界です。コンピューターにとっては現実世界よりもスッキリとして本来は得意であるべき将棋や囲碁が少し人類よりも上手になったと言えるようなレベルになりました。
しかし、まだコンピューターにやってもらいたいこと、コンピューターが解決しなければいけないこと、人類の課題っていっぱいあると思うんですね。私がコンピューター将棋を始めて10年経ちましたが、ものすごい進歩をしています。でもさらに驚くべきことは、まだ全然底が見えていないわけですね。これからの10年は、これまでの10年よりもっと凄いと感じています。ですから、これを見ている勉強している若い人たちにはぜひ、人工知能とまで言わなくてもプログラミングをやってほしいと思ってます。そういった意味で電王戦の意義は、将棋界にとってプラスだったと信じていますし、コンピューターサイエンスとしても、とてもプラスであったと私は確信しています。
モチベーションの方に関しては、割と満足しちゃいました。なんやかんやと10年やってきましたし。ちょっと恥ずかしい話をしますと、有終の美を飾ろうと思って、ちょっと前にあった世界コンピューター将棋選手権で、そこで史上最強のPonanzaを見せてやると言ったら、みごと準優勝で、あれ?みたいな感じになって。ここ笑うところです(笑)。なかなかコンピューター将棋の神様は、サクッと楽に勝たしてはくれないですね。ちょっとわかりませんが、今後もコンピューター将棋の大会に出て行こうと思ってます。
理由としてはPonanzaも、おそらく数年もすればトップレベルではなくなってしまいます。このまま私や下山が何もしないと。でもそのことを示すこと自体も、また大事なことかなと思っています。見ていて負けることは悔しいことですが、ちゃんとコンピューター将棋が進歩しているっていうことが、コンピューター将棋の参加者にとっても確認できることが大事だと思います。今後は私も人工知能の勉強をしたいなと思っています。どんどん進歩が激しくて、ほんと何から手をつけていけばいいのか、という感じで、勉強が足りないなぁと最近ほんと常々思っているので勉強します。
――今回、将棋という分野については、人工知能がシンギュラリティーを超えたというふうに思われていますでしょうか? もし超えたという認識であるならば、今後どういう分野で越えていくのか、プログラマーとしてお考えでしょうか?
山本氏:シンギュラリティーという言葉がありましたが、日本語で言うと「技術的特異点」という意味です。どういうことかと言いますと、プログラム自身が自分のプログラム、人工知能が自分自身の人工知能を改良し続けて、人間から見ると爆発的な知の増大が起こっている状態を言います。将棋の世界でシンギュラリティーが起きたかと言いますと、ちょっと微妙な話ですね。なぜかと言うと、もちろんコンピューター将棋はいま、自分自身でどんどん強くなっているという現象なんですけれども、まだまだ全然できない部分もあって、人間のプログラミングサポートが必要です。
そういう意味ではスッキリとシンギュラリティーが起きたとは言いませんが、ある種のことは自分自身である程度強くなっていくという道筋はできたかなという気がしています。もうひとつ、コンピューター将棋は年々強くなっていて、5、6年ぐらい前だと、1年間あったら1年前の自分自身のプログラムに勝率7割ぐらいでしたが、最近は半年で自分自身に勝率7割から8割、あるいは1年経てば勝率9割に到達するという勢いになっています。この勢いはもう進化する速度そのものが、加速しているという現象ですので、そういう意味ではシンギュラリティーが起きていると言えるかもしれません。
――シンギュラリティーを超えたと言うのは、局面数で人間よりはるかに多くの局面数を読んでいますよね。同じぐらいの局面数の読みで人間を超える強さにならないと人間を超えたことにはならないんじゃないでしょうか。それはただの計算量で勝っているだけですよね?(川上会長からの質問)
山本氏:人間は1秒間に何局面読んでることにしましょう? じゃあ仮に人間が1秒に1局面意識の中で読めるとすると、残念ながら今のコンピューター将棋だと1秒1局面ではめちゃめちゃ弱いです。以前も言いましたが、最近コンピューター将棋でもディープラーニング(深層学習)というテクニックを使うようになってきました。今回の電王戦には間に合いませんでしたが、これがですね、本当に一手も読まずに次の手を予想するという機構を、ディープラーニングの技術を使って作ったんですけども、恐ろしいことにもう有段クラスなんです。
あるいはこれを1秒間に一手読むような感じにしておくと、アマチュアのトップレベルが見えるのではないかと思います。そういう意味では、別のアルゴリズムでも、ディープラーニングって、ちょっと雑な言い方をすると、より人間らしい知能なんですけども、こういった方法論でも人間の知能に迫りつつあるという印象です。これだったらどうでしょうか?
――これからということですね?(川上会長)
山本氏:でもこれはディープラーニングの技術で、まだ始まったばっかりですので、おそらくディープラーニングが始まって、5歳ぐらいの技術なんですけども、すでに生まれて2ヵ月ぐらいで、ちょっと昔のGPS将棋にちょっと勝っていたりしていて、本当に強いレベルです。だからこちらの方面でも伸びていく、より人間らしい知能のあり方でも伸びていくことが期待できると思います。
――山本一成さんに本音をうかがいたいと思います。Ponanzaは名人に勝ってこれでもうおしまいですが、私が最初に山本さんにうかがったPonanzaの夢は、史上最強の羽生善治さんに勝つことだったと思います。今でもPonanzaと羽生三冠の対局を望み、勝ちたいと思っているでしょうか?
山本氏:嫌な質問を飛ばしますね(笑)。そうですね、羽生三冠ともし戦えることがあれば、もちろん別にこのような公開の場でなくても戦いたいなと思っています。しかし、また気を付けなければいけないことは、コンピューター将棋がある種、言い方を変えれば暴力的なまでに強くなってきてるので、それをまた見せつけると言うのもちょっとナンセンスかなという気もしています。私、結構満足しちゃってます。
――6年間棋士とコンピューターとが戦ってきて新しいファンの開拓であるとか感動したり逆に見るのが辛いっていうシーンを見たりとか、いろんなことが起きてきたと思います。一棋士として、この電王戦での6年間の意義とは。
佐藤叡王:そうですね。この6年間というのは、コンピューター将棋が人間のトップに迫り、そして追い越すような、そういう過程を表わしたような年月だったのかなと思います。そういうコンピューター将棋ソフトが、将棋ソフトという存在でなくてもいいですが、そういう存在が人間を超えて行く、そういう過程というのは、とても刺激的でありますし多くのドラマを生むんだと思います。実際それが電王戦で起こったと思いますし、目に触れられたということが本当に素晴らしい意義だったと思います。先ほど言いましたような、コンピューター将棋が、人間を超えていく過程は、そういったものがもしかすると、顕在化しないまま、皆様の目に触れないまま、超えていくということもあり得たのかなというふうに思うんですね。
そういう未来は未来で、良い、悪いというのはないのかもしれませんが、今私たちが生きてるこの世界では、電王戦がもう6年間も行なわれて、人間とコンピューター将棋ソフトの一番拮抗している時代の戦いというのが、ずっと行なわれドラマが紡がれてきたということになると思います。それがとても良かったことであり、皆様の目に触れながら進行していき、プロ棋士もそうですし、きっとコンピューター将棋の開発者の方もそうでしょうし、何よりもファンの皆様が、そういう時代を共有しながら過ごしていけたこと。そして、そのコンピューターが強くなる過程を見ていったということに、最も意義があるのかなと考えています。
最後は川上会長が過去の「事件」をぶっちゃけ
――電王戦6年間の歴史を総括を。
佐藤会長:先ほどからお話がございました2012年に第1回電王戦が米長当時会長・永世棋聖が対決したことは非常に話題を呼びました。私もそのころ米長会長が1ヵ月ほどご自宅に篭って本当に寸暇も惜しんで勝ちに向かって本当に日々、引退されたあとでしたが、鬼気迫る姿でパソコンに向かって対策を練られて、という姿を間近で何回かうかがって見ていました。非常にプロ棋士にとって勝敗というのは、絶対勝たなければいけないという部分がプロの世界にはあると思っています。そういう意味で、もちろんプロ棋士ですから普段の対局でも結果を残すことが求められるわけですけど、人間であれソフトであれ、どんな相手であっても勝つために全力を注ぐという精神。こういうものは忘れてはいけないものなんだということを教えていただいた第1回だったのかなと思っています。
第2回からは団体戦ということでトータルの勝敗で決めるという形も行なわれました。いままで棋士が勉強する場合は、自分の実力を身につけるためと、自分の能力を高めるためという意味合いでの共同研究は現在も続いていることだと思います。ただ、絶対に結果を残さなければいけないということで、選ばれた5名の棋士、またそれに加わる棋士が、ソフトに対して結果を残さなければいけないということで、日々いろんな形で努力したということを、さまざまな情報交換や技術の交換ということは、今までの将棋界ではなかったことだと思います、それによってまた新しい部分が生まれたと思います。
今回までですね、本当に歴史を刻んで終了ということですけど、先ほど佐藤天彦叡王も申してましたが、やはりこの1年1年、プロ棋士とソフトの戦いということで、いろんな意味で一喜一憂していただいたファンの皆様にも感謝申し上げたいですし、またソフトの開発者の皆様にも、ほんとに厚く御礼申し上げたいと思います。またこの時期に1年1年しっかりとした歴史、ドラマを残してていただいたということは、段階を踏んで歴史を刻んでいただいたということで、本当にドワンゴ社様をはじめ、皆様にも感謝申し上げたいなと思います。
これは1局目の時にも山本様がおっしゃっておりましたが、まだまだ強くなる進化できるということをおっしゃっていただきましたが、これは裏を返せば将棋という部分で我々プロが今まで一生懸命やってきて、新しいより深いという部分は感じながら歴史を刻んできたわけですけども、そこにまた新しく将棋はやっぱり、よりいろんな考え方もありますし、より深いものなのだということを教えていただいた部分があるのかなと思います。
実際に今、特に若手を中心にソフトを使って研究するのが非常に主流な時代になってます。なのでよりこの世界は深いものなんだよということを教えていただいたぶんを、ひとりひとりが胸に刻んで、より自分自身の実力を高めて、さらに将棋というゲーム、また世界に誇れる奥の深いゲームだということを認識しながら、さらにより高いレベルで登っていくということが必要だと思います。
また、これだけ素晴らしい棋譜が、たくさん残されてきました。やはりどうしても結果の方が先行・注目されることは仕方のないことだったと思うんですが、棋譜一局一局をより精査することが非常に大事なのかなと思います。感想戦後の感想ではないですけども、実はこう指したらどうするつもりだったのかとか、こうやればどうだったのかという関心事は、実はプロの中でも、まだ謎めいた部分が残っています。過去に今まで対局された棋譜の中にも残っていると思いますので、より解明できる部分があれば、なおさらプロ棋士の理解が深まりますし、またそれが将棋に対するより深さの再認識・理解の認識ということにもなるかと思ってます。もしソフトの開発者皆様でご協力を得られるのであれば、ありがたいことだと思います。非常にいろんな意味で意義のある期間だったと思います。ありがとうございました。
川上会長:電王戦が6年間続きましたが、今回の電王戦イベントですべて終了となります。参加していただきました棋士の皆様、そしてコンピューター将棋ソフトの開発者の皆さま、将棋連盟様、そして電王戦を見守り世の中に伝えてくださいましたメディアの皆様、そして何より将棋ファンの皆様、本当にありがとうございました。振り返りますと、電王戦は非常にある意味幸運と言いますか、運命的なものに導かれて始まったイベントだと思います。
主観的に今から申し上げますと、正直私としては故・米長会長に半ば強引に無理やり、実は逃してもらえなかったということが本当のところなんですけども、そういう経緯で電王戦がスタートしたわけなんですが、ひとつ電王戦が盛り上がった背景というのは、一番最初に5対5という、わりと変則的な形で人間とコンピューターが対決することだと思うんです。
そのきっかけというのが、元々、故・米長会長が5年間かけて5つのソフトと対決するということに、コンピューターソフトが5年間では長すぎるという感じで、かなり険悪な決裂みたいな会議が、第1回電王戦の初日の時にありまして。そしてその場で、もう今日は対局しないっていうところの危機からスタートしたのが、第1回電王戦なわけなんですが、その時に私がとっさに、「じゃあ我々がそのぶんある程度の費用も出しますので、1年間で5回やりましょう」ということで、たまたま事故的に始まったのが5対5で、その結果毎週1試合ずつやるっていうことが、大変な話題になり、1週間ごとにどんどん話題が広がっていくということで、電王戦が世の中に大きなインパクトを与えたのかなって思います。
そのことを始めとしまして、その後も電王戦は毎回いろんな事件が起こるんですよね。すべて予定外の事件がありまして、まったく計算しない出来事が、その電王戦の盛り上げにつながりまして、これは運命的に愛されたイベントだと常々思っていました。このような将棋の歴史に残るだけではなく、人工知能対人間という文脈において、人類の歴史の転換期を象徴するようなイベントの主催者として関われたことは、考えてみれば故・米長会長には本当に感謝するしかないなって思っておりますし、大変光栄なことだったと思っています。
本日で電王戦は終了するわけですが、ネットでご覧になっている電王戦を通じて新しく将棋のファンになっていただいた若い皆様には、引き続き将棋を応援していただけるようにお願いしたいと思います。改めて関係者の皆様、ファンの皆様、本当にありがとうございました。
6年間の電王戦取材を振り返って
とうとう電王戦が終わってしまった。第1回からずっと取材してきた筆者としては、ちょっとどころではなく、かなり寂しい。川上会長も語っていたが、いろいろな事件も起きたし、いままでの将棋中継や対局の概念を大きく変えてきたと思う。筆者においては、中継で画面上に評価値がないと逆に落ち着かなくなってしまっている具合だ。
プロ棋士にとっては、コンピューターに負けてしまったことは、勝負師として辛いことかもしれない。しかし、昨今ではコンピューターを活用している人がプロ棋士の中にもかなり増えてきているようだ。コンピューターで研究した棋士が、これまでと別人のような手を繰り出してきたり、大駒をポンポン切ってくるコンピューター将棋に多い指し回しをする棋士もいるという。電王戦では結局プロ棋士側が大きく負け越してしまったが、そこで得られた知力は大きく、ある意味「ブレイクスルー」が起きたのではないかと思う。将棋は奥が深いので、まだまだ進化していくはずだ。
電王戦終了の記者会見のあと、第3期叡王戦についての記者発表が行なわれた。なんと、叡王戦がタイトル戦に昇格し、竜王戦、名人戦に続き序列3位になるとのこと。タイトル戦というと、これまでは新聞社が主催してきたが、今回始めて新聞社以外が主催することになる。これも時代の流れなのかもしれない。これにより八大タイトル時代に突入することになり、羽生善治三冠がかつて七冠を達成したが、今後は八冠を達成する棋士が登場するのかが焦点となる。最も期待がかかっているのは、今話題の中学生棋士・藤井聡太四段だろう。現時点で連勝を続けていて、一般のメディアにも取り上げられるほどで、将棋界がこれほど注目されているのも珍しい。
叡王戦については持ち時間が対局ごとに変わる変則7番勝負となり、このあたりも斬新。もちろんニコ生で中継されるわけで、電王戦に引き続きさまざまな演出が予想される。コンピューターとの対局ではないが、どのようなタイトル戦になるのか注目していきたい。
電王戦によって、将棋ファンの裾野が広がったことは確実だ。また、今年の世界コンピュータ将棋選手権で新鋭の「elmo」(開発者・瀧澤誠氏)が優勝したように、新たな血が将棋ソフトにも注ぎ込まれている。将棋ソフトの心臓部のオープンソース化が増えてきており、まったくのゼロから開発しなくても取り組めるようになったこともあり、電王戦を見て興味を持った人が参入してきたのも多いことだろう。昔に比べて開発者も増えてきたが、逆に以前活躍していたソフトは姿を消してしまっていたりする。新陳代謝が起こっているのだ。
山本氏がディープラーニングによる将棋ソフトの開発に着手し、また新たな取り組みをしている。ディープラーニング版が、まだ棋力が弱いのであれば、プロ棋士との対局を企画してもおもしろいんじゃないだろうか? もしかしたら、そっちのほうがちょっとミスしたりして人間味のあるソフトに仕上がるのかもしれない(いや、単なる期待だが……)。電王トーナメントは、まだ続くのでこちらは引き続き追いかけていきたい。
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