週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

古地図からイラストマップまでどんな地図でも実用化

「クレイジーな地図サービス」Strolyがつくる古くて新しい位置情報の価値

2017年05月26日 07時00分更新

地図からどのようにしてマネタイズを実現するか?

 「ストローリーのコンセプトは、イラスト地図に位置情報を与える、ではなく『位置情報に表現を与える』というもの。『ロケーション・ミーツ・クリエイティビティ』と呼んでいるが、そういうコンセプトのもと、Stroly.comの投稿サイトを今後どんどん充実させていき、その中でたくさんのユーザーが動いているという状態でさまざまなビジネスを展開したい」(高橋氏)

 すでに現在、自治体、旅行関係、不動産関係の企業とコラボレーションしているというストローリー。ビジネスとしては基本的に広くいろいろな提携を進め、まずは数を増やしていきたいという。

 「マネタイズありきではなく、基本は提携が先。京阪電鉄さんに弊社の地図サービスを見てもらったら、おもしろいと評価を受けて、公式での地図をデザインなどから共同で行なっている」

京阪電鉄でのマップにも公式採用

 ストローリーは、企業にしても個人にしても絵心がある人であればだれでも飛びつける。ビジネス展開以前に楽しさ満載のサービスだ。

 「私どもはいろいろな投稿を促すために各地で『地図カフェ』というワークショップなどのイベントを催している。そこで来場した方々に絵やイラストを描いてもらって、楽しさを伝えている。そうすると、自分の作品を公開したい、自分の地図を使ってもらいたい、地域おこしを手伝いたいなど、さまざま理由で投稿していただける」

 前述の京阪電鉄の担当者も、ワークショップに参加したイラストレーターが投稿した地図を気に入って仕事にもつながっていったそう。「作品をアップしてもらうことで、このような展開になることがおもしろい」と高橋氏は微笑む。

現代の街の風景をこのように描いた地図作品も

こんなものがビジネスになるのか?
異口同音の「クレイジーマップ」

 しかし、そもそもストローリー、普通に生活しているだけではなかなか思いつかないサービスではある。いったいどこから着想を得たものなのだろうか?

 ストローリーの前身は、関西文化学術研究都市で情報通信に関する基礎的・先駆的研究開発に取り組んでいる民間研究機関ATR(株式会社国際電気通信基礎技術研究所)の関連会社で、ATR Creativeという社名だった。しかし2016年、高橋氏らがMBOの形で会社を買い取り、「サービス名と会社名を一体化したい」という想いのもとで新たに2017年2月、ストローリーという名で始動した。

 「海外の展示会でサービスを紹介すると異口同音に『クレイジーマップ』だと言われる。社名もそうしたほうがいいくらいに。
 私はもともと海外の大学で美術史を専攻し、シカゴ美術館で白手袋でゴーギャンやゴッホなどの作品を展示するなどしていたが、それらすべてを置けるわけではなく、また実際に見に来る人にしか見せられない。良い作品にかかわらずメディアとしては非常に弱い。そう思ったときにアナログの作品性の高いものをデジタル化し、その作品世界に没入できないかと考えた」(高橋氏)

 そのアナログをネットにつなぐ媒体こそが、位置情報を特定する衛星測位システムであるGPSだったと高橋氏は語る。現実とデジタルをミックスすれば、その世界に没入させることが可能となる。その想いは、ATR Creativeでの博物館ガイドシステムでより明確になった。

 「iPhoneが発売されるよりも前の2006年ごろ、博物館にWi-Fiを敷設して、おすすめの展示物を見せるようなガイドシステムを作っていた。映画村から屋外ガイドシステムの製作を依頼され、そのときから屋外のテーマパークの地図とGoogleマップのようなウェブ上の地図をつなげることを思いついた」

 2010年ごろにはスマホの進化によりアイディア自体も具体化。まずはアプリでサービスを開始する。その後、より軽く、より自由に世界中とつながりたいと方向性を定めていくうちに、ウェブブラウザーでのプラットフォームのサービス展開を考え、ATRで携わっていたスタッフがそのまま独立したという経緯だ。

 「こんなものがビジネスになるのかと、当初周りの人からさんざん言われ、まったくわかってもらえなかった。自分でも半信半疑。しかし多様性を大事にする風潮が後押ししてくれた。画一的なものより自分たちの豊かな表現を大切にする私たちと時代がつながってきた」

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事