古地図からイラストマップまでどんな地図でも実用化
「クレイジーな地図サービス」Strolyがつくる古くて新しい位置情報の価値
「位置情報に表現を与える」というコピーを冠し、手描きのイラスト地図や古地図に位置情報を表示させて楽しめるサービスがStroly(ストローリー)だ。このサービスは、正確な縮尺や方位に沿わない自由な表現の地図に対して緯度経度情報をリンクさせるというアイデアに裏付けられている。海外の展示会では「クレイジー」とも評されるサービスのきっかけから現在、そしてビジネスモデルなどを代表取締役社長の高橋真知氏に訊いた。
ご当地アプリの経験からプラットフォームサービスへ
「Strolyの名称は、散歩するという意味の『ストロール(Stroll)』とストーリーのかけ合わせ。我々はかつてさまざまな自治体に対してご当地アプリの地図サービスを手掛けていたが、ダウンロードしてもらうには特定地域での強いPRがないと難しい。そのためStroly.comはダウンロード不要で、ウェブ上にあるイラストマップに位置情報を表示させながら楽しめるサービスとなっている。ゆくゆくはストローリーのiOS/Androidアプリも作る予定だが、最初はウェブで広く知ってもらい、単に閲覧するだけではなく、自作の地図を投稿できるプラットフォームを意図した」(高橋氏)
各自治体のアプリを作成し発表していたストローリー。累計ダウンロード数も10万以上で、ユーザーからも高評価を得た。しかし、単一アプリでは地図ライブラリーを横断的に検索や閲覧ができないという課題があった。これを解消するために、ウェブ上にすべての地図ライブラリーを集約し、横断的に検索や閲覧ができるプラットフォームにする構想が生まれた。しかし、そもそもイラスト地図とGPSの地図情報を関連付けるというニーズはあるのだろうか。
「Googleマップなどの正確な地図ツールはもちろん必要だが、手書きのイラスト地図ではコンテクスト(ストーリー)とコンテンツが歴史や地理、風土と一体化している。そこに位置情報を紐付ければ、1枚で楽しめて実用的な地図にできる」(高橋氏)
スマホの地図アプリがあると言えど、世界各地で配布されるパンフレットなどには当然地図が掲載されている。日本の場合はカフェマップやおみやげマップといったイラスト地図や、TV番組「ブラタモリ」などで話題になった古地図もある。それらがデジタル化され、位置情報付きの地図になれば使い勝手がよいのは明白だ。またパンフレットにQRコードをプリントすれば、印刷物の地図を入り口にウェブ上にユーザーを導ける。
「どんなにデフォルメされた地図でも大丈夫。無料でアカウントを作れば自作の地図もアップロードできる。アップロードした地図に位置情報を加えるマッピング作業を少しするだけで、目の前のイラスト地図がデジタル化され、位置情報付きで見られる」(高橋氏)
考えてみると日本中のそこかしこにアナログ地図は存在している。さらに古地図までカウントすれば膨大な数になるが、それらすべてがストローリーのコンテンツになりうるわけである。
位置情報メディアとしてのCGMサービス
では、ストローリーでは実際どのようにコンテンツが増えていくのか。
ユーザー登録をしていれば各々が自由に地図をアップロードして、マッピングできる。その地図を公開すれば、ほかの人も自由に利用できる。つまりストローリーは、地図を利用した新手のCGM(Consumer Generated Media)サービスと言える。
「私たちは位置情報メディアと呼んでいるが、地図の中に立てられるランドマークピンには他言語情報も入れられる。また、これらの地図情報をすばやく表示するために、クライアント側に負荷をかけない技術も開発してすでに実装している」(高橋氏)
他言語情報も入れられるとなると、東京オリンピックを控える日本においてインバウンド旅行者の爆発的な需要も見込める。外国人旅行者にとっては、いままで英語でポイントが記入されたイラスト地図を手渡されても、実際の地図ではないので実用性が低かった。ところがストローリーを使えば、おすすめ情報が掲載されたイラスト地図と位置情報が連動しているので実用的で役に立つというわけだ。
「私たちはいま世界中の地図を集めたいと思っている。地図に国境はないので、世界中の人々がどんどん投稿し、位置情報をつけて海外旅行したときに、たとえばその街、ローカルのおすすめパブの情報などが描かれた地図をストローリーで見られるように。手書きからアーティスティックなものなど、好きな地図を選んで街を散策できる」
知らない街で行き先を知らせてくれる地図は、旅行者にとってなくてはならないもの。絶対にアクセスするコンテンツだ。実際一般のチラシなどと比べて、配布された地図パンフレット内のQRコードは高確率でアクセスしてもらえるという。
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