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これからの電子カルテに求められる「分析」機能とは

2017年06月05日 07時00分更新

クラウド型モデルも登場し、拡大を見せる電子カルテ領域。いま、医療はどこまでIT化が進んでいるのか。ASCIIによる最新情報を毎週連載でお届けします。

第17回テーマ:電子カルテ x データ利活用

 電子カルテやレセプトコンピューターシステムといった外部サービスなど、医療環境の電子化が進む昨今、診療所や病院の抱えている医療データの重要性がますます高まっている。

 医療データを病診連携などで活用することで、診療の質の向上や、業務効率化を達成できるほか、データ分析により具体的な数字を出すことで、経営や業務改善のきっかけをつかむことも可能だ。

 ここからはクラウド型電子カルテに詳しいクリニカル・プラットフォーム鐘江康一郎代表取締役による解説をお届けする。最新トレンドをぜひチェックしてほしい。なお、本連載では、第三者による医療関連情報の確認として、病院経営の経営アドバイザーとしても著名なハイズ株式会社の裵(はい)代表による監修も受けている。


自院の状況を数値化する「自動集計システム」

クリニカル・プラットフォーム代表取締役 鐘江康一郎氏

 医療の世界では『EBM(Evidenced Based Medicine)』という言葉が普及しつつあります。

 今さらですが EBMとは「現時点で科学的・統計的にもっとも確からしいと考えられる医療行為を患者さんに対して提供すること」を言います。このような科学的・統計的データを用いた意思決定が重要であることは、マネジメント(経営)の世界でも同じです。勘と経験と度胸(いわゆるKKD)に基づいた意思決定ではなく、データに基づく意思決定がこれまで以上に求められています。

 企業経営における分析力向上の方法論を紹介した書籍『分析力を駆使する企業』(日経BP社)によると、企業が分析力を高めるためには ”DELTA”の頭文字で表される5つの要素を満たす必要があるとしています。

D:データ。分析には質の高いアクセス可能なデータが必要である。
E:エンタープライズ。組織を挙げての取り組みが必要である。
L:リーダーシップ。分析の知識を備えたリーダーが必要である。
T:ターゲット。分析対象を戦略的に絞り込むことが必要である。
A:アナリスト。分析のできる人材が必要である。

『分析力を駆使する企業』(日経BP社)

 大病院ではこの”DELTA”がすべてそろっているところも少なくありませんが、診療所においては「D:データ」と「A:アナリスト」が不足していることが多いと考えられます。レセプトコンピューターのデータはあっても電子カルテが導入されていない場合や、ドクター自身が分析スキルを有していてもそのような作業に充てる時間が確保できない場合など、診療所ごとに状況はさまざまでしょうが、”DELTA”がすべて整っている組織はまれだと思われます。

 クラウド型電子カルテの導入は、これらの課題を解決し、診療所の分析力向上に貢献できる可能性があります。企業で使用されているクラウドシステムには、BI(Business Intelligence)という機能が搭載されており、社内で取得できるさまざまなデータを自動で分析し、指標化して表示することができます。下記はマイクロソフト社が提供しているPower BIというシステムのサンプル画像です。この画面を見るだけで、組織の状況がひと目で把握できるようになっています。

 これからのクラウド型電子カルテには、このような自動集計システムが搭載されることが予想されます。標準的な指標の分析であれば、診療所側でデータ分析作業をする必要はありません。電子カルテを導入するだけで、診療所に不足している「D:データ」と「A:アナリスト」を補完することができるのです。

 また、クラウド型である特徴を活かし、他診療所全体との比較をすることで(注:他院のデータそのものを開示するわけではありません)、自院がどのような強みや課題を持っているのかを把握できるようになります。診療の質、経営の質ともに向上させるためには、現在の自院の状況を数値で把握することが第一歩となります。


記事監修

裵 英洙(はいえいしゅ)MD, Ph.D, MBA
ハイズ株式会社 代表取締役社長

著者近影 裵 英洙

1998年医師免許取得後、金沢大学第一外科(現:心肺総合外科)に入局、金沢大学をはじめ北陸3県の病院にて外科医として勤務。その後、金沢大学大学院に入学し外科病理学を専攻。病理専門医を取得し、大阪の市中病院にて臨床病理医として勤務。勤務医時代に病院におけるマネジメントの必要性を痛感し、10年ほどの勤務医経験を経て、慶應義塾大学院経営管理研究科(慶應ビジネススクール)にてMBA(経営学修士)を取得。2009年に医療経営コンサルティング会社を立ち上げ、現在はハイズ株式会社代表として、各地の病院経営の経営アドバイザー、ヘルスケアビジネスのコンサルティングを行っている。

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