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新API対応ゲームではGeForceよりも優位に立てる!

Radeon RX 500シリーズのVulkan&DX12対応ゲーム性能をチェック!

2017年05月19日 11時00分更新

 2017年4月、AMDはPolarisアーキテクチャーを採用する第2世代のGPU「Radeon RX 500シリーズ」をリリースした。このRadeon RX 500シリーズは、従来のRadeon RX 400シリーズの後継製品にあたり、パフォーマンスの向上が図られている。

 そして、同シリーズには、最上位モデルにあたる「Radeon RX 580」、それに次ぐ「Radeon RX 570」、そしてエントリーミドル向けとなる「Radeon RX 560」そしてエントリーモデルの「Radeon RX 550」が用意され、ミドルレンジにおいてかなり厚いラインナップを誇る。

 今回、Radeon RX 500シリーズのうち、RX 580、RX 570、RX 550の3製品に着目。Radeon RX 400シリーズから引き上げられたパフォーマンスを確認するとともに、DirectX 12など新世代グラフィックスAPIにおいて、競合製品に対するアドバンテージはどこにあるのか探ってみたい。

最上位モデルにあたるRX 580ブーストクロックは1340MHzに

検証に使用したのは、現状最上位のRX 580を搭載したASUS『ROG-STRIX-RX580-O8G-GAMING』

 RX 580は、前述のとおりRX 500シリーズでは最上位に置かれるモデルで、RX 480の後継にあたり、第4世代GCNアーキテクチャベースの製品。価格はメモリー4GBの製品の最安が2万7000円台、8GBの製品の最安が3万2000円台。GPUコアは、RX 480のPolaris 10に改良を施した「Polaris 20」を採用。このPolaris 20は、14nm FinFETプロセスで製造され、2304基のストリーミングプロセッサーを備える。

 これは、Polaris 10から変わっておらず、36基のコンピュートユニットや144基のテクスチャーユニットなども同じだ。ただし、Polaris 20のフルスペックとなるRX 580では、コアクロックが1257MHz、ブーストクロックが1340MHzと、RX 480から引き上げられた点が最大の特徴だ。その一方で、TDPもRX 480の150Wから185Wへと上昇し、外部電源コネクタも6ピンから8ピンへと変更されている。なお、メモリーはGDDR5を8GB搭載し、メモリー転送レートは8GHzと、この点はRX 480と変わりはない。

 さて、テスト環境は表のとおり。比較対象には、置き換え対象であるRX 480と、AMDが競合製品と位置付ける「GeForce GTX 1060 6GB」(実売価格の最安2万9000円前後)を用意。ただし、用意したグラフィックボードはいずれも動作クロックが引き上げられたオーバークロックモデルであるため、MSIのユーティリティ「Afterburner」で動作クロックをリファレンスレベルに引き下げて利用した。

 では、「3DMark」からテスト結果を見ていこう。なお、3DMarkで行なったテストは、「Fire Strike」「Fire Strike Extreme」「Time Spy」の3つだ。

 RX 580はRX 480から3~4%スコアを伸ばしており、動作クロックが高くなった分、順当なパフォーマンスアップが見られる。また、GTX 1060 6GBに対してはFire Strike Extremeで若干溝を開けられてしまっているが、それ以外ではRX 580が上回るスコアーを発揮しており、いい勝負を演じている。

 続いてAMDが最適化に力を入れているStardockのRTS「Ashes of the Singularity」のテスト結果だ。プリセットは「Extreme」を選択し、解像度は1600×900ドット、1920×1080ドット、2560×1440ドットの3通りで計測した。

 RX 580のRX 480からの伸びは4~9%といったところ。動作クロックを引き上げた効果は、Ashes of the Singularityでもしっかりと表れている。また、GTX 1060 6GB比では、Normal BatchesでRX 580が引き離す傾向が見られ、全体的にもRX 580が優位に立っている。

 次に、DirectX 12と並んで新世代APIと呼ばれるVulkanを採用した「DOOM」でのパフォーマンスを見ておきたい。利用したプリセットは「ウルトラ」で、実際にプレイを行ない、「OCAT」で平均フレームレートを取得した。なお、解像度は1600×900ドット、1920×1080ドット、2560×1440ドットの3通りで計測。

 DOOMでも、RX 580はRX 480からしっかりとスコアーを伸ばしている。そして、RX 580はGTX 1060 6GBに15~23%もの大差を付けている点は立派の一言。

 もうひとつDirectX 12採用タイトルとして「Rise of the Tomb Raider」のパフォーマンスを見てみよう。なお、プリセットには「最高」を選択し、テスト結果から全体の平均フレームレートと、「地熱谷」「シリア」「山頂」の3つのシーンにおける最小フレームレートの比較を行なう。解像度は1600×900ドット、1920×1080ドット、2560×1440ドットの3通りだ。

 Rise of the Tomb Raiderでも、RX 580はRX 480から平均フレームレートを4~5%伸ばしており、最小フレームレートも順当に向上している。また、GTX 1060 6GBには平均フレームレートで届かない場面もあるが、最小フレームレートではいい勝負をしており、対抗製品として十分なパフォーマンスを発揮していると言ってよいだろう。

RX 570もRX 580と同じPolaris 20コアを採用 ブーストクロックは1244MHzに

 RX 570は、モデルナンバーどおりRX 580に次ぐ製品で、Radeon RX 470の後継にあたる。GPUコアは、RX 580と同じPolaris 20を採用するが、RX 570では4基のコンピュートユニットが無効化されている。それゆえ、ストリーミングプロセッサ数は2048基となり、テクスチャーユニットも128基に減っている。ただし、これはRX 470のスペックとまったく同じ。RX 580がそうであったように、RX 570のRX 470との違いは動作クロックで、コアクロックは926MHzから1168MHに、ブーストクロックは1206MHzから1244MHzへとそれぞれ引き上げられている。同時にTDPも120Wから150Wへと上昇した。実売価格は、メモリー4GBの製品の最安が2万4000円台、メモリー8GBの「SAPPHIRE NITRO+ RADEON RX 570 8G GDDR5」は3万2000円台。

 さて、RX 570のパフォーマンスも先に挙げたRX 580と同じテスト環境、およびテスト内容で確認してみよう。なお、比較対象には置き換え対象のRX 470と、競合製品となるであろう「GeForce GTX 1060 3GB」を用意。ただし、こちらもオーバークロックモデルは、Afterburnerで動作クロックをリファレンスレベルにまで引き下げて利用した。

 まずは、3DMarkのスコアーから見ていこう。

 RX 570のRX 470の伸びは2~6%といったところ。動作クロックが上昇した分、スコアーもしっかりと向上している。ただ、GTX 1060 3GBに対しては5~10%届かない結果に終わっている。

 続いてAshes of the Singularityのテスト結果に移ろう。

 Ashes of the SingularityにおけるRX 570とRX 470との差は、6~18%と比較的大きく、とくにNormal Batchesで差が開く傾向が見られた。そのNormal Batchesで、RX 570はGTX 1060 3GBを上回るものの、それ以外では若干離される場面が見られる。

 RX 580で好調な兆しを見せたDOOMの結果だ。

 RX 570も、DOOMにおいてRX 470からの伸びが14~17%と優秀な結果を残している。GTX 1060 3GBに対しても、RX 570は5~16%の差を付けており、Polaris 20コアとVulkanの組み合わせは非常に相性がよさそうだ。

 Rise of the Tomb Raiderの結果も見ておこう。

 さて、ここではGTX 1060 3GBが解像度が上がるにつれて、最小フレームレートが大きく落ち込んで行く点に注目してほしい。その原因として挙げられるのは、グラフィックスメモリーが3GBしかない点で、それなりに負荷が大きめなタイトルをプレイするのであれが、グラフィックスメモリーは4GB以上欲しいところ。その点、RX 570は4GB用意されており、2560×1440ドットにおいて、シリアと地熱谷の最小フレームレートはGTX 1060 3GBを上回り、山頂でもあとわずかに迫っている。

完全新規に開発されたRX 550 エントリーモデルとしては破格な性能

 RX 550は、エントリーモデルに位置付けられ、Radeon R7 250を置き換える製品だ。CPUに内蔵されたグラフィックス機能やAPUの性能向上により、エントリーモデルは苦しい立ち位置だが、そこそこの性能で安価なグラフィックボードを望む層は一定量あり、このRX 550はそういった需要を満たすモデルとなる。実売価格は、メモリー2GBの製品の最安が1万1000円台、メモリー4GBの製品の最安が1万3000円台。

 GPUコアは、第4世代GCNアーキテクチャーに基づく、完全新規に開発が行なわれたPolaris 22で、512基のストリーミングプロセッサーを有する。コンピュートユニットは8基で、テクスチャユニットは32基。ベースクロックは1100MHzで、ブーストクロックは1183MHzとなっている。なお、TDPは50Wとかなり消費電力が抑えらえている。

 RX 550のパフォーマンスも前述の環境でテストを行なう。ただし、RX 550がエントリーモデルということもあり、プリセットや解像度はいずれも低めに変更してテストを実施。また、比較対象には置き換え対象のR7 250と、Core i7-7700Kに内蔵されたグラフィックス機能「Intel HD Graphics HD 630」を用意した。

 まずは、3DMarkの結果だ。

 RX 550はFire StrikeでR7 250の1.7倍、Fire Strike ExtremeとTime Spyにいたっては2倍以上のパフォーマンスを発揮。HD Graphics 630に対しても、RX 550はまったく寄り付かせず、格の違いを見せつけている。

 さて、Ashes of the Singularityでは、プリセットをStandardに変更し、解像度を1280×720ドット、1600×900ドット、1920×1080ドットの3つでテストを実施した。

 グラフを見れば、一目瞭然なように、RX 550がズバ抜けており、エントリーモデルとしては破格のパフォーマンスの高さがうかがい知れる。

 DOOMでもプリセットをウルトラから高へと一段階落としたうえで、RX 550のテストを実施。解像度もAshes of the Singularityと同じく、1600×900ドット、1920×1080ドットの3つを選択している。

 RX 550のスコアは、R7 250の2.3~2.7倍と非常に高い。とくに、1600×900ドットで平均60fpsを出している点は、評価できる。RX 550でも十分プレイ可能だ。

 Rise of the Tomb Raiderでも、DOOM同様、解像度に1600×900ドット、1920×1080ドットの3つをチョイス。プリセットは、RX 580やRX 570とは異なり、低に変更してテストを行なった。

 Rise of the Tomb Raiderにおいても、RX 550のパフォーマンスの高さは健在だ。低プリセットとはいえ、1600×900ドットで平均60fps近く出ている点は評価できる。

競合製品に明確な存在感を発揮するRX 580とRX 570  RX 550はエントリー市場では鉄板になる可能性アリ

 以上をまとめたいと思う。まず、RX 580はTDPが上昇したものの、動作クロックが引き上げられたことでRX 480がパフォーマンスは順当に向上。しかも、競合製品であるGTX 1060 6GBを多くの場面で上回っており、ミドルレンジにおいて、その存在感は大きい。現状は、発売されて間もないこともあり、価格の下がったRX 480(8GBで最安2万4000円台)よりも割高であるが、数年は使い続けることを考えれば、予算に余裕があるなら性能が向上したRX 580を購入しておきたい。

 続いてRX 570は、GTX 1060 3GBに届かない場面があるのは事実。しかし、GTX 1060 3GBがグラフィックスメモリー容量の面で懸念が残る一方で、しっかり4GB搭載している点はRX 570のアドバンテージと言ってよい。価格はGTX 1060 3GBと数千円高めだが、それなりに描画負荷が大きいゲームをプレイするのであれば、GTX 1060 3GBよりRX 570のほうが、よりよい選択肢になるだろう。

 最後にRX 550は、消えつつあるエントリー向けグラフィックボード市場において唯一の存在になり得る製品。第2世代Polarisらしくパフォーマンスも十分に高く、価格も1万円台前半とお手頃で、ライトゲーマーなどの需要を十分に満たしてくれる製品だ。

 Vulkanで高いパフォーマンスを発揮するRadeon RX 500シリーズだが、DirectX 12でもパフォーマンスは良好だ。今後、DirectX 12対応ゲームも増えていくのは誰の目にも明らかで、最新世代のグラフィックスAPIを活用したいのであれば、Radeon RX 500シリーズは魅力的な存在だ。

(提供:AMD)

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