週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

JAWS DAYS 2017の初っぱなは業界カルチャーをえぐるエモいセッション

鍵は実践とリスペクト!組織と自分をクラウド対応にする現実解とは?

ITが本来持っている楽しさが現場主導で戻ればいい(小野)

大谷:続いて、小野さん。お客様の話なので、微妙に話すのが難しいとは思うのですが、どうなんでしょうか?

小野:IT部門ではなく、現場部門へのシフトというのは確実にあります。パッケージベンダーとしても感じていることだし、SIerとしても同じことを感じます。総じてカジュアルな方向に流れてきています。IT部門だと納期遅れは許されないとか、仕様書から外れるのは納品NGとかありましたが、現場部門だと普通に動いてて、業務がよくなっていればいいやくらいなゆるいノリも多い気がします。でも、ITって本来はそういうものだったんじゃないでしょうか。責任を追及されるとか、失敗が許されないでワンストライクアウトとか、そういう詰められるような存在ではないはず。

アプレッソ代表取締役社長、セゾン情報システムズCTOの小野和俊氏。最近は事業戦略とかグローバル戦略とかで経営者の色が強め

初期のアスキーとか、マイクロソフトとか、会社ではBB弾の打ち合いするなって張り紙がしてあったとか、けっこうめちゃくちゃだったじゃないですか(笑)。

大谷:はい。初台のビルでも「会社でゲロ吐くな」ってわざわざ張り紙してありました(笑)。

小野:そういうゆるさや楽しさ、コンピューターをおもちゃと思うような文化が昔はあったけど、いつのまにか責任が問われたり、失敗が許されない文化に変わってしまった。ITの主体が、IT部門から現場部門にシフトしていていいなと思うのは、現場部門がそういうゆるさを持っているから。強制的にそういう方向に引き寄せられていているのは、望ましい方向性です。

斎藤:僕がこの本を書くきっかけになった出来事でもあるんですけど、現場部門の人たちから、AIやIoTの話をしてほしいという依頼が増えたんですよ。この1年で急激に増えて、しかも情シス経由ではないんです。こういう動きというか、ムードが高まってきていると思います。「僕たちITを知らないから、IT部門にお任せ」ではなく、現場部門でもそろそろIT知らないとまずいという機運が根底にある気がするんです。どうですかね。

小野:AIやIoTの概要を知ったり、PoC的なことを始めるということを、現場部門がやり始めたので、専門家であるIT部門がそれを知らないとはどういうことだというプレッシャーが結果的に高まっている気がします。トラディショナルな経営者や情シスの人たちって、プレッシャーによって動くという傾向があるので、結果的に動いていく会社もあるんじゃないですかね。

大谷:最近のマネージャークラスは「働き方改革」の名の下に、業務時間は減らせ、だけど売り上げは増やせというプレッシャーにさらされていますから、投資の価値を理解してもらえれば、月額千円程度のクラウドであれば、一気に導入が進んでしまうかもしれません。そういう意識の高い方々が集まってクラウドを推進し、IT部門がそれをサポートしてくれると、日本のIT業界はけっこう変わると思うんですけどね。

斎藤:それに関しては、今の日本はけっこう時間さえ減らせばいいという間違った方向に行っている気がして危惧しています。働き方に関するさまざまな自由度や選択肢を許容することが重要で、クラウドもそれを支える仕組みかもしれない。つまり、効率化や時間短縮のみにテクノロジーの変化や価値を見いだすのではなく、世の中の価値観や働き方の常識自体を変えていく、いわば「思想の変化」にITは本来価値を提供してくれるものだろうと信じています。

「Slack入れたら、会社が変わった」は本当(小野)

大谷:いい感じになってきたので、最後の実践解に行ってみましょう。ここに来ている人は、御託はいいから、実践する方法を聞かせてほしいという方々なので。まずは小野さんが実践していることを教えてください。

小野:セゾン情報システムズは昨年からSlackを全社導入しています。やってみたら、どうなるのかと思ってやってみたら、ものすごく変わって驚きました。

それまでは隣の部署は別の会社みたいな感じだったり、上下関係のあるコミュニケーションもなかなかうまく行かなかったり、業務中にチャットなんかしたら非稼働とカウントされるといった感じでした。でも、Slack導入したら、まさに「ツールを入れたら文化が変わった」という実現例になりました。ツールと思想が相互にフィードバックし合うというサイクルが作れるようになってきた。うちもクラウドインテグレーターに脱皮しているところですが、Slack入れなかったらここまで早くできなかったと思います。

大谷:Slackだけでそんなにすぐ変わるもんなんですか?

小野:もちろんSlackだけじゃないです。服装もTシャツ、ジーパンOKにしました。ネクタイで首締められてると、なんだか発想も狭くなるんですよね。今日みたいに首の広いTシャツだと発想も膨らみます。

大谷:とはいえ、ずっとスーツで会社に来ている人、いきなりTシャツになりますかね。

小野:うちもトラディショナルなSIerだったんで、最初はもちろん様子見です。服装自由化した翌日って、やっぱりみんなスーツでした(笑)。その後、金曜日だけ私服で来る人がポロッと出てきて、その人数が増えていき、次に水曜日もという感じになるんです。その後、大陸棚みたいなところを超えると、一気に私服化されます。

大谷:まあ、私服の人だらけになると、スーツの人がかえって浮きますからね(笑)。

小野:服装とか、オフィスの雰囲気とか、隣の人が笑っているかとかは、その事業部の経営判断に密接にリンクしているはずです。たとえば、「●●線が電車遅延で本日出社遅れます」みたいなメールって、無駄な情報じゃないですか。でも、そういう形から入る会社になっちゃうと、発想も形から入っちゃうんです。でも、Slackだと無駄なモノ削って、本質だけ書けばいいから、いろんなことが言いやすくなる。「このプロジェクト、まじでやばいと思います」みたいなことがポロッと書かれて、フェイスツーフェイスで聞くみたいなきっかけができます。些細なことをきちんと吸い上げるツールとして、Slackの効果は絶大だったんです。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この特集の記事