週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

JAWS DAYS 2017の初っぱなは業界カルチャーをえぐるエモいセッション

鍵は実践とリスペクト!組織と自分をクラウド対応にする現実解とは?

3月11日に開催されたクラウドの祭典「JAWS DAYS 2017」の初っぱなセッションとして行なわれた「自分と組織を『クラウド対応』にするための実践的な方法を考える」。セゾン情報システムズCTO、アプレッソ代表取締役社長としてSIerの組織改革に挑む小野和俊氏と、「システムインテグレーション崩壊」など業界を騒がせる著書でおなじみ斎藤昌義氏を迎え、クラウドに向けた組織と個人を作る方策を語り合った。(以下、敬称略)

左から小野和俊氏、斎藤昌義氏、大谷イビサ

クラウドを本業にできない人の多さに驚き(大谷)

大谷:おはようございます! KADOKAWAという出版社のASCII.jpというITニュースサイトの記者をしている大谷です。JAWS-UG on ASCIIというJAWS-UG専門のサイトを運営している関係で、今回セッションを持たせていただきました。まず今回の「自分と組織を『クラウド対応』にするための実践的な方法を考える」というテーマに行き着いた背景を説明させてください。

私が長らくJAWS-UGの取材で驚いたのは、クラウドを本業にしていない参加者が多いこと。お話しを聞くと、個人としてはクラウドに興味があるので、勉強会に来るんだけど、会社としてはクラウド全然やってませんとか、上司がクラウドに理解がないという方が多いんです。

この話になると、だいたい「自分が転職するか」「組織を変えるか」という二択になるけど、想像に難くないと思うのですが、組織を変える方がはるかに難しい。だから、「脱藩すればいいじゃん」という帰結になりがちなんですが、そんなに簡単に転職できないという人も多い。実際、私もアスキーという会社で働いて20年になりますが、会社名からアスキーが消えても、ブランドにはとても愛着があります。会社辞めるって、そんなに簡単なことじゃないと思うんです。

こうしたコミュニティに参加することで自分自身は変えられますが、やっぱり組織を変える方法ってなんかないかなと。経営者やマネージャーの方々も、組織を変える方法って知りたいのではないかと思ったわけです。ということで、今回は実践的な方法を出してくれるパワフルなお二人をお呼びしました。登壇者の方々、自己紹介をお願いします。

斎藤:おはようごございます。ネットコマースの代表の斎藤です。システムインテグレーション崩壊とか、SIerの悪口ばかり言ってます。今日は悪口ばかりではなく、次どうすればいいのという前向きな話をしたいと思いますので、よろしくお願いします。

小野:おはようございます。小野です。私は昔、サン・マイクロシステムズの米国で勤務し、24歳の頃からアプレッソという会社でパッケージを作っています。4年前くらいからセゾン情報システムズのCTOという立場で、SIerの仕事も増えていて、従来型のSIを変えようとしております。

大谷:ここで参加者の属性を聞いてみましょうかね(といって、ユーザー企業のIT部門、SIerや受託会社、または経営者、マネージャーの方などに挙手をお願いする)。

小野:SIerや受託開発の方が半分以上ですかね。マネージャーや非エンジニアの方もけっこういますね。

大谷:ありがとうございます。

クラウドに行けない理由は工数が稼げないから(斎藤)

大谷:まずは「クラウドに行けない組織の問題点」を斎藤さんから語ってもらいましょう。斎藤さんは、けっこう古い会社で講演すること多いですよね。

斎藤:古いかはわからないですけど、トラディショナルなSIerですね(笑)。彼らがクラウドに行けない理由はシンプルで「工数が稼げないから」に尽きると思います。

SIerの収益構造って、工数を積み上げてなんぼ。営業利益率が5%を超えるところはめったにないので、稼働率を徹底的に上げない限り、収益が上がらないし、社員を養っていくのが困難。そうなると、工数を稼げないクラウドをやる意義を見いだせないというのが、根底にあると思います。

大谷:実際のSIerの立場からして、小野さんどうでしょうか?

小野:斎藤さんのおっしゃるとおり、SIにとって稼働率はとても重要。だから新しい系の取り組みをやると、非稼働にカウントされて、人事考課としても売り上げに貢献していないとみなされることは現実にあります。とはいえ、この先3ヶ月の売り上げを考えなければならない課長や部長クラスから考えると、利益率と稼働率を重視した評価になるのは致し方ない部分もあります。

でも、5~10年のレンジで新しいことができなくなるとどうなるかというと、お客様から「新しいことが提案できない」というマイナス評価を受けることになる。利益率や稼働率の重力に引っ張られると、新しいことができない会社というレッテルが貼られて、将来の仕事がとれなくなる。だから、短期的な戦略と長期的な戦略をきちんと分けて考えないと、自分たちのクビを少しずつ締めることになります。たとえ何%でも長期的な投資として戦略や組織を考えれば、活路は開けると思います。

斎藤:ただ、創業経営者であれば、自らリスクを負うことで腹がくくれる。でも、多くのSIerのサラリーマン経営者の場合、自分の任期中は変なリスクを負いたくない、安泰に過ごしたいと考えるメンタリティが感じてしまうんですけど、そのへんどうですか?

小野:ローテーションで社長が回ってくるパターンは日本でもけっこう多いし、そのときに事故を起こしたくないという心理は確かにあると思います。僕自身はそういう感覚はないですけど。

とはいっても、そういう社長も人間だし、もとエンジニアだったりする。そんな人たちが、新しい技術に接して若者が楽しそうにしているとか、目を輝かせているのを見ていて、それを止めるかというと、そんなことはないかと思います。

冒頭、大谷さんは「自分を変えるか」「組織を変えるか」という二択になるのではという話をしましたが、そもそも自分を変えられない人が組織を変えられるはずがない。自らが楽しそうなサンプルになってしまえば、直接ではないにしろ組織を変えられる可能性があります。空いている時間になんか楽しそうになんかやっているヤツが、お客様を巻き込んだり、取り組みをインフルエンスし始めたら、会社として取り組もうという流れになるかもしれない。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この特集の記事