週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

ボタン1発アップサンプリングの実力やいかに?

ハイレゾプレーヤー「CurioSound」でCDスペック音源が復活する話

2017年05月06日 15時00分更新

ちょっとマイナーなクラシック音源もハイレゾにできる

 吹奏楽経験者の間では知られていつつも、一般的にはマイナーだったユーフォニアムという楽器、昨年「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ」がアニメ化されたことで知名度が上がった。メロウな中低音を極限まで表現する現代の名手として、僕は英国人プレイヤー、スティーヴン・ミードの名前を挙げたい。

 ユーフォニアム界の巨匠が大阪のブリティッシュバンド「ブリーズ・ブラスバンド」と共演したアルバムの、これまた英国人作曲家のジョン・ゴーランドによる「ユーフォニアム協奏曲 第1番」を聴いた。

 楽器の本当の力を知ることができる重要な音源だが、44.1kHz/16bitではミードが奏でる芳醇なベッソン・プレステージの響きに対して、音が当たったような飽和感を感じる。それに金管と打楽器だけのブリティッシュバンドという編成がモゴモゴ感に拍車をかけており、明らかに録音が追いついていない。

 では96kHz/24bitではどうか? ハイレゾスイッチを入れて再生した瞬間にミードのベッソンが朗々と歌いだした。とろけるようなユーフォの高音はその名の通り"綺麗な響き"で、この上なく気持ちいい。それはもう笑ってしまうくらいの変容ぶりだ。

 バックバンドも見事な変身を見せていて、トランペットはキラキラした華やかな音になり、44.1kHz/16bitではアクセント効果が薄かったミュート時の音が鋭利になって、音楽全体によいアクセントを与えている。トロンボーンパートの歯切れはよくなり、チューバは楽器本来の芯が出て存在感もアップした。ティンパニの打点もハッキリしており、マルカートがちゃんと弾んだマルカートに聞こえる。オーケストラヒットの音形は彫りが深くなってしっかりとわかるようになった。

 とにかく演奏に身を委ねるのが心地よく、音楽を聴くというのはこうあってほしいというカタチをきっちり表現していると感じた。

当代随一のユーフォニアムプレイヤーのスティーヴン・ミードによる、ジョン・ゴーランド「ユーフォニアム協奏曲 第1番」。ユーフォの本当の実力を知ることができる名曲・名演。「響け!ユーフォニアム」で楽器を知った人には、ぜひその真価を知ってもらいたい

 超絶技巧演奏の音源をもうひとつ。ロシアの重戦車級ピアニスト、ニコライ・ペトロフの「パガニーニによる超絶技巧練習曲」。第3曲には有名な「ラ・カンパネラ」が収められているが、あまりの難易度に作曲者のリスト以外は弾けないと言われたため「大練習曲」として改稿され、今ではこちらの方が有名になった。ちなみに初稿版の録音は、ペトロフを含めて3例しかなく、当然いずれもハイレゾ化はされていない。

 そんな音源を44.1kHz/16bitで聴いてみた。感想としては鬼のような音数を出し切れず、全体的にゴチャゴチャしている。響きは悪いとは言わないが帯域不足でもっと響いて欲しいと感じる。技術は確かにスゴいが、全体的にのっぺりしていて音としての凄さは圧倒されるとまでいかない。

 しかし96kHz/24bitは違う。まず響きがウンと上品に感じた。低音が太くなって迫力が出た上で、定位がしっかりしてピアノの実体感がハッキリした。非常識なほど黒々とした楽譜に負けないくらい音数が多い。これは44.1kHz/16bitでは感じなかった要素だ。これぞ“重戦車”という異名に相応しい。

Image from Amazon.co.jp
ロシアの重戦車ことニコライ・ペトロフが奏でる屈指の難曲、フランツ・リスト「パガニーニによる超絶技巧練習曲」。現存する3つの録音のうち、最も演奏が素晴らしいのはこの盤だと僕は思う。残念ながらCDは入手困難で、中古ショップで運良く見つけたら手に入れたい

登場が待たれる水樹奈々も勝手にハイレゾ化

 ハイレゾ界隈にとってアニメというジャンルが一大巨塔となって久しいが、多くのファンに望まれながらもハイレゾ音源が出てこないというアーティストも少なからずいる。例えば紅白歌合戦にも出場した歌姫水樹奈々。過去音源も含めてハイレゾ化されると話題になること間違いなしだが、彼女の音源も諸般の事情でまだハイレゾ化はされていない。

 さて、水樹奈々を代表するキャラクターや楽曲は多数存在するが、今回は「魔法少女リリカルなのは A’s」の主題歌「Eternal Blaze」を聴いてみたい。まず44.1kHz/16bitだが、とにかくベースがブイブイと元気で、これはもう明らかにスターチャイルドレーベルの音だ。ヴォーカルを活かすためにバックバンドが下がり、特に水樹奈々よりも一段下の音域ではかなり控えめ。高音はシャリシャリ、ロングトーンはザラザラ気味で、エレキソロはかなりミチミチな印象。全体的に窮屈な音に感じる。

 ではこれを96kHz/24bit化してみるとどうだろう。まず出だしの水樹奈々がふわりと飛ぶように柔らかい。前奏のエレキギターは音が太くエネルギッシュになり、演奏にかなり勢いを与えていた。そして高音のシャリシャリ感がなくなり、明らかに聴きやすい音へと変わっている。ロングトーンの飽和感も解消とまではいかずともかなり改善され、エネルギー感に全振りしていたバランスを音質寄りにも傾けたという印象を受けた。ストリングスの細かいパッセージは音の分離がよくなり、時折鳴るウインドチャイムのワンポイントは44.1kHz/16bitよりもずっと効果的だ。

Image from Amazon.co.jp
アニソン界の歌姫、水樹奈々の代表曲のひとつ「ETERNAL BLAZE」。アニメ自体も熱い展開だが、この曲もメジャーとマイナーのコードが波のように目まぐるしく入れ替わる熱い曲。ところで夏に公開される劇場版「Reflection」が待ちきれない

CDを抱えたユーザーにはぜひとも試してもらいたいソフト

 以上、若干偏りがある点は認めるが、7曲の44.1kHz/16bit音源を試してみた。どの音源でも音が明らかに整い、響きが明白に豊かになった。CDスペックの飽和感から解放された広がりと、細部表現の鮮明化によって定位がガチッと決まることも大きな特長だ。音圧は気持ち下がるが、その分ほんの少しだけボリュームを上げると、同じ音圧で音が豊かになるという点も見過ごせない。

 今回の趣旨はCurioSoundでCDを現代のハイレゾ環境に相応しい音へ上げることだったが、もちろんハイレゾ音源をそのまま鳴らしてもよい。ただそうなると、DSD音源がPCM変換だったり、ASIOに非対応だったりといった点がマイナスになってくる。例えば「ビギナーモード」「エキスパートモード」といったユーザー層分けをしてみると、このあたりの不満を解決しつつビギナーに優しい使いやすさというコンセプトにも合致するのではないだろうか。

 いずれにせよ、PCオーディオという環境でCurioSoundはかなり大きな力になると僕は感じた。特に大量のCDを棚に抱えている人たちにとって、このソフトは福音となるだろう。現状ではプレイヤーを使い分けしつつ、将来的に一大勢力になることを期待したい。

■関連サイト

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります