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宮崎日南、鹿児島霧島の2業態で提供中

カロリー4分の1カルボナーラが居酒屋「塚田農場」に登場!

2017年04月26日 18時30分更新

パスタ級の長えのきはどうやって作られているのか?

 さて、期間限定メニューとして登場したえのきナーラ1/4ですが、どうやったらこんなえのきが出来るのか疑問ですよね。栽培期間を単純に長くすれば簡単にできるというものではないようです。そこで、その栽培工程を確認するために生産者の加藤えのきに取材に行ってきました。

加藤えのきの工場は、宮崎県宮崎市にあります

 加藤えのきは、宮崎県宮崎市にあるえのきを専門に栽培している会社。同社のえのきは、秋冬の塚田農場の期間限定メニューだった「えのきステーキ」で使われているほか、宮崎県下では圧倒的なシェア、西日本全域でもトップシェアだそうです。現地に着くとまず目に入るのが3棟ある大きな建物。これがそれぞれえのきの栽培工場です。案内してれた加藤修一郎社長によると現在第4工場の建設も始めているとのこと。なんだかすごく儲かっていそうな感じ。

手前に見える古い建物が第1工場、中央が第2工場、奥に見えるのが第3工場。第3工場のさらに奥に第4工場を建設中です。

 加藤社長にそのあたりを直撃してみたところ、えのきもほかの野菜と一緒で供給量で値が変動するため、たくさん作ったからといってそのぶん儲かるわけでないとのことでした。とはいえ、えのき工場は温度管理も徹底されており天候などの影響も受けないので、短期間に大量生産できる生産者が有利なのも確かなようです。

加藤えのきの二代目社長である加藤修一郎氏。かなりのさわやかさです。

 ただし、これは冬の話。鍋物などでえのきの需要が高まる時期は3工場をフル稼働させて生産しますが、需要が落ちる春先からは一部の工場を休止させるそうです。この閑散期を利用して生産しているのが、えのきナーラ1/4で使われる長えのきなのです。育成期間が通常より2週間も長いので、需要が増大する冬の生産は難しいのですが、閑散期であれば休止している工場を使って生産できるという、一石二鳥の農産物に変身します。今回は特別にその栽培過程を見学させていただきましたので、順を追ってみていきましょう。なお、取材時はえのきナーラ1/4の発売日が決まっていなかったテスト栽培の時期だったので現在の工程とは異なる部分があります。

 まずは菌床の仕込み。おそらくここが最も重要なポイントかと思われます。加藤えのきでは、米ぬかやトウモロコシの芯などをブレンドしたものを使っています。工場内には所狭しと米ぬかが入った紙袋と、トウモロコシの芯が入った布袋が積み上げられていました。最初に目に付いたのが「みやざき米」や「えびの米」、「おおいた米」と書かれた米ぬかの袋。加藤社長に「米ぬかも産地を選んでいるのですか?」と聞いたところ、九州産の米ぬかだけだととても足りないそうで各地から集めているそうです。企業秘密なのは、菌床を作るための配合方法でこの出来次第で栽培状態が変わってくるそうです。

原料となるトウモロコシの芯の部分(左)と全国各地から集められた米ぬか(右)

 原料をブレンドして専用の容器に詰めらるといちおう菌床っぽくなりますが、ここにはまだえのきの菌を混ぜることはしません。

ベースとなる菌床には複数の穴が開けられています。ここにえのきの菌を植え付けますが、まだ雑菌だらけなのでもうひと手間加えます

えのき専用の容器に菌床用にブレンドした原料を充填するマシーン

 えのきをきっちり育てるには菌床からほかの菌を取り除く必要があるので、高温での滅菌処理の工程に入ります。

滅菌処理マシーンで菌床の雑菌を一網打尽にします

 滅菌処理のあと菌床を十分に冷ましてから、えのきの菌が植えられます。この工程は一種のクリーンルームとなっていて雑菌が入り込まないようにある密閉された空間になっていました。

クリーンルームなので入れませんでしが、ここでえのきの菌が植え付けられます

 工程はまだまだ続きます。菌を植え付けたあとは菌床に全体にえのきの菌を行き渡らせる養生期間に移行します。このエリアは、温度の異なる複数の部屋で構成されており、段階的に養生が進んでいきます。菌が全体に行き渡ったたら、上部の菌をそぎ落として均一にして最終の育成工程に入ります。

番号の書かれた複数の扉があるエリア

えのきも菌なので菌糸の状態から変化していきます

菌糸が容器内でまんべんなく育っていきます

 育成エリアで目の当たりにしたのは「ザ・工場」。天井近くまで大量のえのきで埋め尽くされていました、ここでえのきがぐんぐん育っていきます。そして通常のえのきは、菌床の作成から数えておよそ55日で出荷されます。

最初は容器に入れられているだけのえのきですが、成長すると周囲をカバーするフードが取り付けられます

どんどん育っていき約55日間で出荷状態になります。デカイ

 えのきナーラ1/4で使われるえのきは、ここからまたひと手間加えられます。通常、菌床の容器の周囲はえのきがまっすぐ育つようにカバーで覆うのですが、えのきナーラ1/4用はこのカバーが三重にセットされていました。

通常のフードを3つ使った専用フードで育成されるえのきナーラ1/4用長えのき

 長く育てられるように保管場所もカスタマイズ。段数を減らして各段の天地のスペースを大きく取った専用の保管棚が用意されます。

通常の保管棚では高さが足りないので、休止中の第1工場の棚をえのきナーラ1/4用に変更していました

 完成したえのきナーラ1/4用長えのきと、塚田農場では「えのきステーキ」などで使われていた通常のえのきを見比べると、長さが全然違いますね。長えのきは、長いぶん石づきの部分が細くなっています。体積は通常のえのきとあまり変わらないそうで、栄養価もほぼ同じだそうです。加藤社長は、「閑散期には最新システムが導入されている第3工場での栽培が中心となりますが、えのきナーラ1/4が認知されて長えのきの需要が高まれば、工場の稼働率も上がり新商品として売り出せるかもしれない」と期待を寄せていました。

ずんぐり体型の通常のえのき(左)と、すらっとした体型のえのきナーラ1/4用長えのき(右)

 なお、秋冬に販売していた「えのきステーキ」については、3年目ということで販売数が落ちるかと思いきや、前年の約3万食からなんと約4万食に増えたそうで、加藤えのきにとってもうれしい悲鳴だったそうです。ちなみに、えのきステーキ用に納品する下半分は、そこだけカットして塚田農場に納品するそうなのですが、このままでは上の部分は大量に余ってしまいます。「上の部分を活用するために、それまでは手がけていなかったカット野菜の分野に進出するキッカケになった」と加藤社長。えのきステーキやえのきナーラ1/4のようなメニューが誕生したことで、生産者が新しいことにチャレンジできるというのは未来がありますね。

昨年の秋に提供されていた「えのきの月見ステーキ」(現在は販売していません)

 えのきナーラ1/4や焼肉虹ぴーを含む期間限定メニューは、宮崎日南業態と鹿児島霧島業態の塚田農場で絶賛提供中です。えのきナーラ1/4を食べ終わったあとにいったい何が起こるかも含めて、期待しまくりながら店舗に足を運びましょう。

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