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34歳の男が家事育児をしながら思うこと。いわゆるパパの教科書には出てこない失敗や感動をできるだけ正直につづる育休コラム。
おはようございます。水曜日朝7時、家電アスキー盛田諒(34)がお届けしている育休コラム「男子育休に入る」の時間です。3月1日から4月26日まで8週間の育休もついに今日で最終日となり、ふたたび常世から現世に降りねばならぬのかという神話的やるせなさに包まれています。
今回のテーマは神世の昔から疎まれてきた友人知人見知らぬ他人の赤ちゃん自慢イベント。昔がオオオニバスに乗った赤子の年賀状なら、今や愛しいわが子のフィギュア作りです。疎ましいですね。
育休最後の記念にと、渋谷ロフト6階のロフトラボ3Dフィギュアスタジオで赤ちゃんを3Dデータ化し、全長8.5cmサイズの台座つき石膏製フィギュアにしてもらいました。準備からデータ化までは90分程度で終わりましたが、フィギュア作成には2〜3週間かかるため、いまは完成を楽しみに待ちながらこの記事を書いています。
2万円台からのフィギュア作り
ロフト3Dフィギュアスタジオは完全予約制。店頭または各店舗に電話で申し込みます。3Dフィギュアスタジオがあるロフトは渋谷・有楽町・梅田3ヵ所のみ。うち有楽町は5月28日に営業終了のため惜しまれつつも5月14日で受付終了です。申し込み時に結婚・金婚・還暦・出産など用途を説明すれば担当者が相談に応じ、イメージ含め万事ぬかりなく取り計らってくれます。
あとは予約を入れた日時にスタジオを訪ね、やあやあ我こそはとばかりカウンターに申し出て個人情報を記入し、作りたいフィギュアのサイズを決めれば後は3Dデータ化という段取りです。
フィギュアのサイズは高さ10cmから35cm、基本制作料金は税込2万7000円から18万3600円まで。いわゆる写真館で記念撮影をするのと同じような料金感覚ですね。サイズが上がるほど解像感は上がり、顔はもちろん服のしわやボタンのようなディテールも再現性が上がっていきます。撮影対象は赤子にかぎらず犬猫ペットおじいおばあにコスプレなどなんでもあり。2人組でも撮影できるので、コスプレイヤーさんがカップリングフィギュアなど作るとたぎりそうですね。
3Dフィギュアスタジオの隣には小物雑貨をレーザー加工できるデジタル加工工房&Fabがあり、渋谷ロフトで購入した雑貨に写真やイラストが入れられます。加工料金は無印良品のシャンプーボトルが製品込みで1944円などフィギュアに比べるとお安めです。
なお3Dデータ化前には「フィギュアは写真の複製ではなくデフォルメを施した再現です」という点をしつこいほど念押しされます。というのも3Dプリンターの解像度では写真そのままとはいかず、サイズが小さくなれば省略される部位も増え、毛やボタンなど詳細な箇所は平面化・記号化されるためですね。データも取って出しではなく作成したデータに職人がPhotoshopよろしくレタッチをかけて出力します。そのうち美ボディ補正をかける整形オプションができてもおかしくないですね。
102台のKissが赤ちゃんを囲む
受付を終えてはじめに案内されるのは広めの控え室。こちらでデータ化対象、今回は赤子の体裁を整えます。髪も顔も乱れっぱなし、ありのままの姿を見せてしまっては恥が物質化してしまうことになりますので、三面鏡でくせっ毛・アホ毛・カバーオールのしわ・目尻の泣きあとなどをチェックして整えます。作業中に泣かないようにとおっぱいも飲んでいただきます。作業は1組ずつ前後に時間をとってあるということで遠慮がいらないのがうれしい。万事整いましたら作業開始です。
向かったのは、大きな白いカーテンが何やら怪しげな雰囲気をかもす「撮影室」。撮影担当スタッフがスッ、とカーテンを開けるとそこはキヤノンのデジタル一眼レフカメラEOS Kiss X7iレンズキット102台が張り巡らされたKissジャングル。撮影台をぐるりと取り囲んだ大量のKissはすべてUSBハブ経由でパソコンに接続され、ソフトで同時にシャッターを切れるようになっており、360度から撮影した写真を合成すれば3DデータになるThat's力押しという仕組みです。
シャッタースピード1/125の写真を撮るだけなのでKissジャングルのマトリックス的ビジュアル以外は原理的に怖くないという良さがあります。平然と我が子を受け渡すわたしは何色のピルを飲んだのかという感じですが、撮影台に赤ちゃんを寝かせたところ案外泣きませんでした。
「はじめにピントを合わせますね〜」
担当者の方がそう言いキーボードをたたいた瞬間102台のKissが一斉に「ピピピピピピピピピピピッ」と合焦音を立てはじめます。脳内イメージはマトリックスなのでロボット兵器が一斉に照準を合わせるようで怖いです。将来赤ちゃんが合焦音におびえるようになったら申し訳ないです。
「じゃあ撮りますね〜」
担当者さんが撮影台の赤ちゃんにそう声をかけ、カーテンを閉めてふたたびキーボードを叩くと、パッ!という音とともにフラッシュの閃光がまぶしくカーテンに影を落としました。赤ちゃんなら多少フラッシュをたいても問題はありませんが、瞳の構造上フラッシュが苦手なワンちゃんネコちゃんは注意が必要かもしれません。撮影にフラッシュは必須なので、かかりつけの獣医さんに相談してから申し込むほうがいいと思います。
カーテンを開くと赤ちゃんはKissを不安そうに見上げていました。写真を確認すると赤ちゃんは輪をかけて不安そうな顔。このままでは不安な気持ちになるフィギュアができてしまいます。
「撮りなおし、できますよ〜」
担当者さんがそう言ってくださったのでほっとします。そうですかそれじゃあちょっと失礼して、と控え室で赤ちゃんをいい子いい子、10分ほどしてふたたび撮影台に戻ったときは2回目ということもあってかおびえた様子はそれほどありませんでした。同じ手順でパッ!と撮影。若干まぬけな顔になりましたがかわいいのでOKです。担当者さんが撮影した写真を使って3Dデータ化開始。10〜15分程度でプレビュー画像のレンダリングまで終わります。すごい速さですね。
今後はフィギュア以外の展開にも期待
待つこと約15分、写真を合成した簡易的な3Dデータができました。パソコンで360度くるくる回して出来を確認します。顔に合成ずれと思われるブロックノイズが入ったテクノでかっこいい仕上がりになっていましたが、これを3Dデータ職人がレタッチして完成させるそうです。このときに「泣いた跡を消したい」などの要望が出たら、担当者からレタッチ職人に伝えてくれます。
以上をもって90分程度で作業終了、レジで支払いを済ませておしまいです。いやー楽しかった。親の道楽につきあってくれた赤ちゃんにお礼を言い、頬をむちゃむちゃしておきました。
ちなみに赤ちゃんの服ですが、こまかい装飾はフィギュアになったときつぶれて見えなくなるため純白のベビードレスなどワントーンは避けたほうがよいそうです。ほかにも絹のドレスのようにつやのある素材、レース編み、細かいストライプなどは再現不可能です。おすすめはチェックなど。当日はたまたまボーダーのカバーオールだったので助かりました。
残念だったのは完成した3Dデータが受け取れないことです。MMDにデータを読み込ませて私家版ダンシングベイビーが作れるんじゃないかと思っていたこともあって心残りでした。データだけでも相当遊べます。フィギュア作成用の3Dデータは撮影後1週間ほどでウェブから確認できるようになるのですが、ちょっと見づらいので専用の観賞用アプリが欲しくなりました。作成した3DデータをVR空間で細部まで観賞できるとなったら用途によってはとても捗りそうですので、今後ロフトさんにはそのあたりをサービスに組み入れられてはどうかと思います。できたら自分で編集もしたい。
フィギュアの出来がよければ成長記録として続けても面白そうです。ただ料金が数万円というのはやっぱりハードルが高いので、できれば前述のように観賞用データだけを買える格安プランを充実させてほしいです。ちなみにロフト店頭では3Dフィギュアスタジオで使えるギフトカードも販売中(5月14日まで)。最近の出産祝いはモノではなく「家事代行券」など形のないものを送るサービスギフトが流行っているので、友達と相談して3Dフィギュアギフトカードのプレゼントというのもいいんじゃないでしょうか。疎まれそうで恥ずかしいという方もご安心ください、疎まれてこそ人生です。
ロフトラボ3Dフィギュアスタジオ
※完全予約制、電話・店頭で受付
●渋谷ロフト3Dスタジオ
TEL 03-3462-3863
●有楽町ロフト3Dスタジオ ※1
TEL 03-5223-6210
●梅田ロフト3Dスタジオ
TEL 06-6359-3464
※1 5月14日(日)撮影受付終了、5月28日(金)営業終了
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ、家事が趣味のカジメン。パパに進化しました。3月1日から4月26日まで育休中。Facebookでおたより募集中。
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