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コスト・納期の半減で印刷電子回路が本領発揮

「全ての基板を置き換える」フレキシブル基板で産業を変革するAgIC

2017年04月21日 07時00分更新

大量生産の仕組みそのものの変化も追い風に

 多くの人がAgICに持っているイメージは、電子回路プリントでの華々しいビジュアルに寄ったイメージではないだろうか。2014年の創業当時から注目を集めた同社は、SXSWでの展示とクラウドファンディングでも注目を集め、一気にその存在を世に知らしめた。だが「電気回路を描いて消せるペン」など、ガジェットに寄った展開は同社の一方の側面でしかない。

 現在のAgICは、完全なBtoBのテクノロジー企業としてかじを切っている。製造の実業に関わるサプライヤーとなるには、技術的に困難かつコストも時間もかかるが、そのぶん、実現した際に与えるインパクトも巨大だ。

 「最先端の技術は使ってもらうことが必要」(清水氏)ということで、現在はコアな試作の現場を中心に拡大を続けているAgICだが、急激な変化は確実にやってくる可能性がある。新たな技術革新は、これまでなかった新たなハードやビジネスが生まれるきっかけにもなり得る。我々が普段使っているPCやスマホに当たり前のようにAgICのテクノロジーが関連してくる未来、さらにその先にある用途の拡大がこれから楽しみだ。


 「当面の課題はまず耐久性を伸ばすこと。最終的には試作でなく製品で使っていただきたい。もう一つは両面に回路を作れるようになること。現在の基板は、片面だけの展開となっているのが最大の弱点。最新のものは3層、4層、6層というものもあるので、これにも対応していきたい。そのように機能を既存の最先端のものに合わせていき、ゆくゆくはそれを超えたものを作っていく予定」(清水氏)

 製造技術に限らず、あらゆる技術は時間が経てばコモディティー化する。このような点についても清水代表としては「それは仕方ないこと。だからこそ日々の技術開発で一歩でも遠くへ行き、後続を突き放すことが必要」だという姿勢を見せている。

 「現状、大量生産の仕組みそのものがかなり追われつつある。家電メーカーも、一つの製品を作ってそれをずっと売り続けるモデルではなく、少量多品種で試しに発売してみるといった流れも出てきた。この流れは今後ますます強くなる。これは我々にとって大きな追い風となるはず。製品を作るには、開発の試作サイクルも大事。また、量産時の設計変更の容易さも重要になってくるが、これらが我々のアドバンテージとなる」

 AgICは着実な成長を続けている。いずれ急拡大するタイミングは来るだろうが、創業当初からそのときにできる技術=製品を着実にリリースし顧客に使ってもらうと同時に、地道に研究・開発を進め、また新たな製品を発表。その製品を販売しながら再び顧客のニーズを製品にフィードバックして、ブラッシュアップしている。

 地道な研究の先に見据える未来は、すべての基板をAgICのものに置き換えるという壮大なもの。しかし、彼らの歩んできたやり方を振り返ると、それも決して夢ではないだろう。

●AgIC株式会社
2014年1月に設立。プリンテッドエレクトロニクスの技術を用いた、インクジェットによるフレキシブル基板のオンデマンド製造サービスを展開。
直近の調達では2016年2月10日に、Beyond Next Ventures株式会社が運用するファンドをリードとし、セメダイン株式会社を割当先とする第三者割当増資で1億7500万円の調達を実施。
スタッフ数は2017年4月時点で9名。セールスエンジニア、製造技術エンジニアを募集中。

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