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医療事務=診療報酬の専門家という時代の終わり

2017年05月01日 07時00分更新

クラウド型モデルも登場し、拡大を見せる電子カルテ領域。いま、医療はどこまでIT化が進んでいるのか。ASCIIによる最新情報を毎週連載でお届けします。

第14回テーマ:電子カルテ x 事務職員

 電子カルテの魅力の1つに、処方箋入力や予約・受け付け業務といった事務作業を効率化、軽減できることが挙げられる。

 特にクラウド型の場合、従来事務職員が行なっていた診療報酬点数の計算業務を、外部に委託することも可能になる。

 業務の負担軽減にもつながるこの流れについて、ここからはクラウド型電子カルテに詳しいクリニカル・プラットフォーム鐘江康一郎代表取締役による解説をお届けする。最新トレンドをぜひチェックしてほしい。なお、本連載では、第三者による医療関連情報の確認として、病院経営の経営アドバイザーとしても著名なハイズ株式会社の裵(はい)代表による監修も受けている。


遠隔でもできることは専門家に委託するという流れ
医療「BPO」の波がやってくる

クリニカル・プラットフォーム代表取締役 鐘江康一郎氏

 企業経営の世界では、過去数十年にわたり、テクノロジーの進化とともに仕事のやり方が変わってきました。たとえば、計算に使う道具が「そろばん⇒電卓⇒Excel」と進化するにつれて、経理業務のやり方が変わってきたことなどが例として挙げられます。

 では、診療所の事務職員はどうでしょうか? 以前は紙に記載されていたレセプト情報が、最近では電子化されたという変化はありますが、診療所の事務職員に求められている知識や能力は大げさに言えば40年前とさほど変わっていません。患者の受付をし、(紙カルテであればカルテ棚からカルテを探し出し)、保険証を確認し、問診票と体温計を渡し、医師の診療記録に基づいて診療報酬点数を計算し、算出された金額に応じて会計(現金の授受やカード決済)を行なうことが主な業務だと思います。

 しかし、この先の5〜10年で診療所の事務職員に求められるスキルは大きく変化していくものと考えています。これまで多くの企業で起こったように、現地でしなければならないことは現地で行ない、遠隔でも出来ることは専門家に委託するという流れ――BPO(ビジネス・プロセスアウトソーシング)の波がやってくるからです。

 たとえば、予約を受け付ける業務は外注することが可能です。インターネットによる予約はもちろんのこと、電話による予約も専用のコールセンターに委託することができます。また、受付や決済の仕事は、そもそも人がする必要がなくなることが予想されます。診療所ではまだそれほど見かけませんが、多くの大病院では自動受付機や自動精算機が導入されています。決済については、事前にクレジットカード情報を登録しておき、後日精算する仕組みが普及することにより、診療所での会計業務そのものがなくなってしまいます。

 そして、これまでは事務職員の仕事の本丸と目されていた診療報酬点数を計算する業務も、電子カルテおよびレセプトコンピューターのクラウド化により外部に委託できるようになりました。これまでのように医療事務に詳しい人を医療機関が採用したり、専門業者から派遣してもらうのではなく、外部のコールセンターにいるオペレーターが診療報酬点数の計算だけを代わりに行なうことができるようになりつつあります。

 このような仕組みを導入することによって、診療所の事務職員の業務は、1.患者さんをサポートする業務、2.医師をサポートする業務(電子カルテの代理入力など)の2つに集約されるものと考えています。


記事監修

裵 英洙(はいえいしゅ)MD, Ph.D, MBA
ハイズ株式会社 代表取締役社長

著者近影 裵 英洙

1998年医師免許取得後、金沢大学第一外科(現:心肺総合外科)に入局、金沢大学をはじめ北陸3県の病院にて外科医として勤務。その後、金沢大学大学院に入学し外科病理学を専攻。病理専門医を取得し、大阪の市中病院にて臨床病理医として勤務。勤務医時代に病院におけるマネジメントの必要性を痛感し、10年ほどの勤務医経験を経て、慶應義塾大学院経営管理研究科(慶應ビジネススクール)にてMBA(経営学修士)を取得。2009年に医療経営コンサルティング会社を立ち上げ、現在はハイズ株式会社代表として、各地の病院経営の経営アドバイザー、ヘルスケアビジネスのコンサルティングを行っている。

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