成田国際空港株式会社は、第1ターミナル出国審査後エリア内にある「NAA直営ラウンジ Narita TraveLounge」で、次世代無線LAN「WiGig」の実証実験を開催中。期間は2月24日まで。
WiGigは、Wi-Fi Allianceが策定した次世代無線LANの標準規格。60GHz帯のミリ波を使用することにより、従来の無線LAN(2.4/5GHz)に比べて10倍以上の高速通信を実現する。
実証実験の内容は、ラウンジ利用者にアニメやドキュメンタリー、電子書籍などの大容量コンテンツをダウンロードしてもらい、満足度を調査するというもの。WiGigを搭載した端末は、ラウンジのカウンターで無料で貸し出される。
実証実験中に配信されている作品は、ドキュメンタリー作品(WORLD HERITAGE)や東京五輪プロモーション映像、アニメ「デュラララ!!」「とある科学の禁書目録 外伝」「アクセル・ワールド」など約60作品。各コンテンツはおもにKADOKAWAが提供している。
実際に体験してたみところ、従来のWi-Fiとは比較にならないほど高速だった。フルHD解像度の動画(容量約1.8GB)をダウンロードするのにかかった時間は10秒未満。同時にWi-Fiの端末でもダウンロードを開始したのだが、そちらはまだ1%しかダウンロードできていなかった。
成田国際空港株式会社 経営企画部門マネージャーの松本 英久氏は「成田国際空港が、お客様にとって魅力的な空間になるように、最先端ICT(Information and Communication Technology)を活用して世界最高水準のサービスを提供していく」と語る。
松本氏によると、日本国内で初めて大規模なWi-Fiを敷設したのは成田国際空港とのこと。そのため、WiGigでも一般の普及に先駆け、空港内にWiGigを張り巡らせる計画だ。
しかし、これには大きな問題がある。技術を担当したパナソニック無線技術開発部 工学博士の滝波 浩二氏は「Wi-Fiはほぼ360度の方向に100mほど電波を飛ばせる。しかし、WiGigはミリ波帯を使うので、電波の指向性が強く距離も10m程度しか届かない」と解説する。
この欠点をカバーするため、パナソニックは独自の技術で利便性を高める研究を進めている。そのなかのひとつが、ビームの方向を電子的に制御する技術。実証実験で使われたLANスポットから放射される電波は、ユーザーの移動に合わせて電波の向きを変えられるようになっており、通信が途切れにくいそうだ。
さらに滝波氏は「WiGigは従来の無線LANに置き換わる技術ではなく、共存していく規格」と語る。それほど高速な通信が必要ない場合は従来のWi-Fiを使用し、動画や電子書籍などの大容量コンテンツを端末にダウンロードするときだけ、WiGigを使用することを想定している。
成田国際空港は今回の実証実験結果をもとにWiGigの環境を整えていくが、松本氏は「まだ詳しいことはわからないが、早ければ2018年中には一般利用客が使えるようにしたい」と展望を語った。
© 2015 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/AWIB Project
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