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元フィリップスの技術者が開発したスイッチングアンプを採用

大型スピーカーをぐんぐん駆動する力を得た、マランツの「PM-10」

2017年01月17日 10時00分更新

小サイズで高出力をえられるスイッチングアンプ搭載モデル

 マランツブランドのサウンドマネージャー尾形好宣氏は、セパレートアンプの長所として以下の3点を挙げる。

 第1に高出力/高駆動力、第2にフルバランス構成/BTL接続ができること、第3にプリとパワーで独立した電源だ。ただしこれは筺体サイズに余裕があるセパレートアンプだからできることでもある。プリメインアンプでは“限られた筐体サイズ”に回路を収めるという制約からどうしても妥協が生じてしまう。バランス構成にすれば倍の数の部品が必要になり、回路規模が増す。アナログアンプで大容量の電源を積むためには、物理的に大きなトランスが必要になる。

PM-11S3。AB級のアナログアンプでサイズはPM-10とほぼ同じだが、フロント部のボタンの数が多い。

 例えばマランツのプリメインアンプでは、これまでフラッグシップだった「PM-11S3」(43万円+税)もバランス入力には対応するが、出力は100W+100W(8Ω)、ダンピングファクターも100程度とセパレートアンプと比較すると抑えた数字だ。

対称に4枚置かれたスイッチングアンプモジュール。Ncore NC500。

 一方、PM-10ではパワー部を省スペースで高出力が取り出せるスイッチングアンプ(D級アンプ)とした。従来製品のPM-11S3とほぼ同じサイズの筐体に、400W+400W(4Ω)、ダンピングファクター500の高出力が可能なパワーアンプを搭載した。スイッチングアンプのモジュールはHypex製の「NCore NC500」で、左右それぞれ2個ずつ合計4基をBTL接続して搭載する。標準モジュールをそのまま使っているが、ヒートシンクは独自に追加したものだという。

スイッチングアンプモジュール単体で撮影したもの。

 NCoreの採用理由としては、音の良さ(S/N比の高さやフラットな周波数特性)に加え、小型で大出力が出せることが挙げられる。そして重要なのは、これまでのノウハウが生かせるアナログのバランス入力に対応することだった。マランツではこれまで単品の上位機ではほぼすべての機種でAB級のアナログアンプを採用している。スイッチングアンプを使用するとはいえ、従来機種と変わらないアナログアンプの考え方で設計した製品になっている。

 また、Hypexはフィリップス出身のエンジニアが作った会社で出自がマランツに近く(日本マランツはかつてフィリップスの傘下にあった)、販売代理店であるB&W製のサブウーファーにも使用されていることも理由のひとつになっている。

インピーダンス別の周波数特性。

 ちなみにNCoreは回路自体が保護機能を持つ。これにマイコン制御を組み合わせて、スピーカー保護のために必要だが、音質劣化につながりやすい“スピーカーリレーを省略できる”という副次的な効果もあるそうだ。周波数特性も優れており、一般的なD級アンプモジュールでは10kHz付近から特性が暴れる場合も多い中、50kHz付近まで滑らかな線を描いている。インピーダンスによる差もほぼない。

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