クラウド型モデルも登場し、拡大を見せる電子カルテ領域。いま、医療はどこまでIT化が進んでいるのか。ASCIIによる最新情報を毎週連載でお届けします。
第6回テーマ:電子カルテ x 外部サービス連携
医療者の業務効率を実現する電子カルテは、外部システム・サービスとの連携で、より利便性の高い医療環境を形作ることができるのも特徴となっている。
たとえば、画像管理システムと連携した場合、画像管理業務のほか、検査画像や治療後画像とカルテを素早く表示できる。これにより、患者への説明がしやすくなり、インフォームドコンセント実現に近づくことが可能だ。
また診察券発行システムと連動すれば、診察券の発行業務が効率化。さらにレセコン(レセプトコンピューター)との連携により、請求業務などの事務作業を軽減できるほか、患者の会計待ち時間がより短くなったり、患者の会計時の取り違えが減少したりするといった利点が挙げられる。
以上が基本的な部分だが、ここからはクラウド電子カルテに詳しいクリニカル・プラットフォーム鐘江康一郎代表取締役による解説をお届けする。最新トレンドをぜひチェックしてほしい。なお、本連載では、第三者による医療関連情報の確認として、病院経営の経営アドバイザーとしても著名なハイズ株式会社の裵(はい)代表による監修も受けている。
システム連携できない電子カルテは導入する意義が半減
診療所では電子カルテ以外にも数多くのシステムが使われています。代表的なシステムを診療の流れに沿って挙げてみましょう。
・予約管理システム(患者の予約を管理するシステム)
・自動受付システム(診察券を入れるだけで受付手続きが完了するシステム)
・保険証読み取りシステム(保険証のデータを自動で取り込むシステム)
・問診票システム(タブレットなどで問診記録を取得するシステム)
・検体検査システム(臨床検査会社とデータ送受信をするシステム)
・画像管理システム(X線などの画像データを管理するシステム)
・レセプトコンピューターシステム(診療報酬点数を計算するシステム)
・経営管理システム(患者数や売上高を管理するシステム)
電子カルテがこれらの周辺システムと連携することによって、診療所の業務は格段に効率化されます。逆に言えば、これらのシステムと連携できない、あるいは連携に高額な費用がかかるようでは、電子カルテを導入する意義は半減すると言っても過言ではありません。
しかし、多くの既存電子カルテにおいては、これらの外部システムとの連携にその都度エンジニアによる「作業」(と費用)が必要となります。また、一度連携をしても、一方に変更が入るたびに連携のためのプログラムにも手を加える必要があります。
筆者の友人が A社の電子カルテ(院内設置型)と、B社の予約システム(クラウドサービス)を導入したときのことです。導入時点ではこの2つのシステムは連携していなかったため、メーカーにデータ連携を依頼したところ、50万円の追加料金の見積もりを提示されたということです。
一般の企業経営において広く使用されているクラウドサービスでは、他システムとの連携においてAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)という仕組みが採用されています。上記の例でいえば、A社の電子カルテとB社の予約システムがAPIで連携していれば、診療所ごとに個別の連携作業をする必要がなくなります。
クラウドサービスでは、1つの企業がすべての機能を開発するのではなく、複数の企業がそれぞれの得意な機能を開発し、相互に連携するスタイルが一般的です。今後、電子カルテや周辺サービスがクラウド化されることにより、このようなAPIによるデータ連携が一般的になることが予想されます。
記事監修
裵 英洙(はいえいしゅ)MD, Ph.D, MBA
ハイズ株式会社 代表取締役社長
1998年医師免許取得後、金沢大学第一外科(現:心肺総合外科)に入局、金沢大学をはじめ北陸3県の病院にて外科医として勤務。その後、金沢大学大学院に入学し外科病理学を専攻。病理専門医を取得し、大阪の市中病院にて臨床病理医として勤務。勤務医時代に病院におけるマネジメントの必要性を痛感し、10年ほどの勤務医経験を経て、慶應義塾大学院経営管理研究科(慶應ビジネススクール)にてMBA(経営学修士)を取得。2009年に医療経営コンサルティング会社を立ち上げ、現在はハイズ株式会社代表として、各地の病院経営の経営アドバイザー、ヘルスケアビジネスのコンサルティングを行っている。
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