広告もひと味違う
−−広告も、一般的なヘッドフォンの感じとはすこし違いますよね。
早川「そうなんです。モデルさんを前面に出して、一見するとヘッドフォンの広告ということがわからないくらい(笑)。社内ではやはりいろいろな意見があったのですが、今回はこれでいこうということで。目にしたときにオシャレなイメージや、洗練されたイメージが伝わるような広告にしています」
−−この感じだと、「かっこいい! 何の広告だろう?」となる気がしますね。一見、ファッション誌の表紙っぽいです。写真の質感とか。
魚谷「企画を練る段階で、主なターゲットになりそうな年齢で、ファッション的な感度が高い人たちの愛用するブランドですとか、セレクトショップ、生活スタイルなども調査していて。そういったファッションにうまく馴染んだり、プラスでかっこよさを出せるようなものを目指しました」
音はしっかりJVCサウンド
−−正直なところ、デザインに重点を置いているのかな? と思ったんですが、聴いてみると、音作りもしっかりしていますよね。
魚谷「ありがとうございます。やはりそこには、はじめから自信があって。とにかく聴いてもらうきっかけ作りとして、こういうアプローチになったといいますか」
−−フラットな音質ではないですけど、ちゃんとソースの音が活かされるような音になっていて。デザイン重視のヘッドフォンだと、音もキャッチーにするためにドンシャリ型になっているケースもけっこうありますよね。
魚谷「そうなんです。JVCは基本的には原音を活かす音作りを大事にしていて。でも、フラットにしちゃうと味気なく聞こえる場合もあるので、ハイレゾ音源などのソースが、鮮明ないい音質で聴けるチューニングにしています。ハイレゾ対応としていますが、ハイレゾでない音源を聴いた際にも、低価格帯のヘッドフォンとは違って感じられるはずです」
早川「これまで音に対する姿勢は硬派にやってきたブランドなので、今回の製品にもJVCのDNAは生きていると言えますね」
多くの意見入れなかった
−−思い切ったコンセプトを採用するにあたって、何か障害となったことはありませんでしたか?
早川「あまり詳しくはお話できませんが、今回はなるべく、多くの意見を入れないようにして進めたと言いますか……。
発案から製品化するまでには、『もっとこうした方がいい』『こうしないとダメだ』と意見されることも多いのですが、今回は、『いや、これでいいんです』と一貫して魚谷がデザインコンセプトを崩さなかったんです。いろいろな意見を取り入れた結果、最初に思い描いたものから段々変わってきてしまうことって、ありますからね」
−−わかります。
早川「なので、最初に想定したものを素直に作れたと思いますよ」
−−この製品の撮影で知り合いのカメラマンさんに、「これかっこいいですよね!」と見せてみたんですけど、「かっこいいんだけど、俺ならケーブルは布巻きにする」と言っていました。そういうことですか?
早川・魚谷「(笑)」
魚谷「たとえばケーブルが布巻きだと、今回のアーバンな印象からは外れてしまいますよね。そういったいろいろな意見を受けても『今回はこれでいきます!』と進めたイメージです」
早川「なにを言われても、魚谷が『このモデルはこれでいいんです』とぶれなかったので、いい製品につながったなと思いますね」
魚谷「パッケージデザインもコンセプトに合わせて検討しました。裏面の記載内容もこれまでと大きく変えています」
−−というのは?
早川「従来、弊社では『技術』にフォーカスしたパッケージ背面が多かったんですね。何ミリのドライバーを使っていて、どういう技術が採用されていて……。でも、これだとターゲットの皆さんに伝わらない! と思ったんですよ」
魚谷「ヘッドフォンに詳しい方だと、ご自身でいろいろ調べられるので、大体、説明を読めば、どういう音か想像がつくと思うんです。あとは、レビューを見たりですとか」
早川「今回は、パッと見で『どんな音楽に向く』『ハイレゾに対応!』というのが伝わるように、アイコンを採用しています」
−−ああ、ここ気になりました。そうか、ロックは「ギター」で、アニメは「目」のアイコンなんだなって。
早川・魚谷「(笑)」
早川「『アニメはどうする? 本当に目でいいのかな?』というやりとりはありましたね(笑)」
−−技術的な苦労はありませんでしたか?
魚谷「ヘッドバンドとハウジングをつなぐところにケーブルが出ていないデザインにしたかったので、あえて両出しのケーブルにしたりですとか。アルミや樹脂など、素材ごとの質感の違いをうまく出したくて、さまざまな色の試作品を作ってみたりですとか……」
−−特にブルーは珍しいですよね。
魚谷「ブルーはもうすこし紫がかった色味など、いろいろとサンプルを作って試しましたね。グレーはJVCとしては新しいカラーです。どちらもユーザーのトレンドを調査して採用しました。グレーは社内でも人気のあるカラーです」
−−確かにグレーは珍しいかも。
早川「どのカラーがお好きですか?」
−−うーん。やっぱりブラックかな。
早川「ブラックも、素材ごとに色味や質感を整えて、トータルで見たときにまとまりのあるカラーリングにしているので、ちょっと面白いですよね」
−−あとは、グリーンとかカーキ系のモデルがあってもよさそう。ほかのカラーは候補としてありましたか?
魚谷「……レッドがありましたね。レッドも色味としてはよかったのですが、SOLIDAGEというラインのイメージ上、今回は寒色系でまとめよう、ということになったので、最終的には見送られたカラーです」
−−寒色系にまとめようとした意図は?
早川「N_Wシリーズの中でも、『WOOD FW7(HA-FW7)』は、どちらかというと、ゆったりした時間に楽しんでもらうことをイメージしているんです。オフタイムに、外出先でくつろぎながら音楽を鑑賞するイメージですね。SOILIDEGEの場合、どちらかというと通勤時間など、ラフに、スタイリッシュに音楽を楽しむシーンを想定しているというか。通勤中にカバンからサッと出して、聴いて、やる気を高めたりですとか。
それもあって、寒色系の方がイメージに合うと考えました。音作りも、WOOD FW7は温かみのある音ですが、SOLIDEGEは、比較的パキっとした硬質な音になっています。これは同じラインのイヤフォン「SOLIDEGE FD7(HA-FD7)」も同様で、ライン全体での統一感を考えています。基本的にやはりJVCは原音を大事にした音作りなのですが、その中でも、ボーカルが鮮明に聞こえたりですとか、ドラムのビートが伝わりやすい音作りにしていますね」
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