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クラウド型電子カルテが拡大を見せる理由

2017年02月13日 10時00分更新

クラウド型モデルも登場し、拡大を見せる電子カルテ領域。いま、医療はどこまでIT化が進んでいるのか。ASCIIによる最新情報を毎週連載でお届けします。

第5回テーマ:電子カルテ x クラウド

 新たなサービスの登場も含めて「クラウド型電子カルテ」が拡大を見せている。タブレットやスマホと連携できるタイプであれば、医療者だけでなく、患者自身も時間・場所を問わずカルテを確認可能なうえ、コスト的にも安価なのが特徴だ。

 これまでの設置型電子カルテの場合、医療施設内に自前でサーバーを用意し、そこにデータを保管していく必要があり、金銭的な負担もかかり、電子カルテの中・小規模診療所への普及を妨げる要因となっていた。

 さまざまなメリットが見えてきているが、ここからはクラウド電子カルテに詳しいクリニカル・プラットフォーム鐘江康一郎代表取締役による解説をお届けする。なお、本連載では、第三者による医療関連情報の確認として、病院経営の経営アドバイザーとしても著名なハイズ株式会社の裵(はい)代表による監修も受けている。


設置型は井戸/クラウド型は水道のようなもの

クリニカル・プラットフォーム代表取締役 鐘江康一郎氏

 「クラウド電子カルテとは何か?」を理解するためには、クラウドではない「設置型」の電子カルテと比較をするのが最も早道でしょう。

 設置型の電子カルテはその名の通り、電子カルテのソフトウェアがインストールされたコンピューターを院内に物理的に置いて使用するタイプの電子カルテです。そのため、高額なコンピューターを購入するための代金がかかり、ハードウェアの障害が発生することもしばしば。また、一定の年数(通常5〜6年)が経過するとハードウェア自体を買い換える必要があり、操作をする側の端末にも専用のソフトウェアをインストールする必要があります。そのため、使用する台数にともなって費用がかかる場合が大半です。

 一方、クラウド電子カルテは、電子カルテのソフトウェアがインストールされたコンピューターは院外のデータセンターに置かれており、インターネット回線を通じてソフトウェアを使用する方式です。

 データセンターは専門の業者によって厳重に管理されているため、ハードウェア障害が発生する可能性は極めて低いと言えます。また、経年変化による陳腐化も気にする必要はなく、操作をする端末にも特別なソフトウェアをインストールする必要はありません。ほとんどのサービスにおいて、インターネットに接続できる回線と無料のブラウザーソフトさえあれば、すぐに使用可能です。たとえるなら、設置型は各家庭に井戸を掘るようなもので、クラウド型は蛇口をひねれば水が出てくる水道のようなものと言えます。

 そのほかにも比較のポイントがいくつかあります。主な項目を表にまとめてみました。

 費用面では優れるクラウド型ですが、上記のように、設置型・クラウド型どちらにもメリットとデメリットがあります。導入を検討する際は、自院のニーズと保有リソース(ヒト・モノ・カネ)に照らし合わせて、どちらを採用するかを決めましょう。かつては設置型しか存在しなかったのですから、クラウド型という選択肢が増えた現状は歓迎すべきことだと思います。


記事監修

裵 英洙(はいえいしゅ)MD, Ph.D, MBA
ハイズ株式会社 代表取締役社長

著者近影 裵 英洙

1998年医師免許取得後、金沢大学第一外科(現:心肺総合外科)に入局、金沢大学をはじめ北陸3県の病院にて外科医として勤務。その後、金沢大学大学院に入学し外科病理学を専攻。病理専門医を取得し、大阪の市中病院にて臨床病理医として勤務。勤務医時代に病院におけるマネジメントの必要性を痛感し、10年ほどの勤務医経験を経て、慶應義塾大学院経営管理研究科(慶應ビジネススクール)にてMBA(経営学修士)を取得。2009年に医療経営コンサルティング会社を立ち上げ、現在はハイズ株式会社代表として、各地の病院経営の経営アドバイザー、ヘルスケアビジネスのコンサルティングを行っている。

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