粘土を使った複合素材「タフクレースト」を振動板に
今回のEgretta製品の新規性は、振動板にポリマー・クレイ・コンポジットという素材が使われている点にある。これはポリイミドに粘土の微細粒子を混ぜたシート状の素材で、単体のポリイミドを使った振動板では得られない、45kHzまでフラットに近い特性が得られるのだという。
この素材を開発したのは、ASCII読者にはおなじみの産総研(産業総合技術研究所)で、共同開発した住友精化株式会社が「タフクレースト」という名称で製品化している。このタフクレーストは、450度の耐熱性や、室温から350度までの熱膨張率が0.04%という、プラスチック素材としては抜群の熱耐性を持つ。このことから耐熱絶縁のためのシール材や、スクリーン印刷による回路描画の基板として活用が考えられてきたという。
つまり、そもそもスピーカーの振動板として開発されたものではなかった。ところが、この素材にボイスコイルを印刷し、ハイルドライバーの振動板に使ってみたら、高域特性の良いツイーターができてしまった、ということらしい。そして、このハイルドライバーが、このタフクレースト初となる採用実績になったというから、世の中まったくわからない。
さて、そうしてできたユニットはこれである。
左上で見切れているのが通常のコーン型スピーカー。真ん中の黒くてスリットの入った丸いものがハイルドライバー。その下の黄色い細長いものが振動板の素材となるタフクレーストのフィルムで、上に乗っているのがハイルドライバーの振動板である。振動板だけ拡大してみよう。
つまるところ、フレキシブル基板を蛇腹状に折りたたんだもの。しかし折りたたみ方そのほかに、様々な企業秘密が隠されているのは想像に難くない。そして、振動板を手にしている方は、オオアサ電子で今回の製品の音響設計を担当した川崎博愛(かわさき ひろよし)氏。
冒頭で見慣れた人が登場して驚いたというのは、この方のことである。ASCIIの読者には、ソニーを辞め、東和電子のOlasonicブランドで様々な製品を設計してきた人、と言った方がわかりやすいかもしれない。特にUSBバスパワーのような小さな電源から有効な出力を得るためのスーパー・チャージド・ドライブ・システムや、それを積んだ卵型スピーカー「TW」シリーズ、「NANOCOMPO」シリーズなど、小型かつ手頃な価格で上位機種に負けない製品を作ってきた人だ。
そんな関係もあってか、TS1000FにはOlasonicのNANOCOMPOシリーズを組み合わせたコラボモデル「Egretta&NANO」(49万6800円)も用意される。その内容は、CDプレイヤー「NANO-CD-1」(6万4800円)とプリメインアンプ「NANO-UA1a」(8万6400円)、そしてスピーカーケーブル「NA-SPC200」。TS1000Fの外装は漆喰を使ったオフホワイトで、NANOCOMPOの外装色とのマッチングも良いので、新たにアンプを買うならオススメである。
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