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Oculus Rift、HTC Vive、PS VRの役者がそろった

「VR元年」 激動の10月を受けて今後どう変わっていく?

2016年10月23日 12時00分更新

文● 文● 広田 稔 編集●飯島恵里子/ASCII.jp

VR業界の動向に日本一詳しいと自負するエヴァンジェリスト「VRおじさん」が、今週のVR界の出来事をお知らせします!

HTC Vive用のグリップ型コントローラー。画像提供/DVERSE 沼倉氏

 どもども! VRおじさんことPANORAの広田です。今週は13日発売のPlayStation VRで遊んでいたので連載は書けません!……というわけにはいかないですよね?(編注:いきません!)

 PANORAで特に話題になっていたのは、アバターになりきれる「Facerig」のモバイル版がリリース、Oculus Touchの最新デモ「Robo Recall」がCEDEC+KYUSHUにて展示VR空間で3Dモデルを制作できる「Artstage」のSteam早期販売──といった感じでした。

 それはともかくこの10月は、米国時間の5〜7日にOculus VRの開発者向け年次イベント「Oculus Connect 3」が開催、同じく米国時間の12〜13日にHTCとViveを共同開発しているValveが年次イベントの「Steam Dev Days」を実施、さらに13日にPS VR発売と、各陣営に大きな動きがありました。今週は激動の予感がするこの瞬間を整理して行きましょう。


据え置き、モバイル、一体の「全部おさえ」なOculus

 まずOculus VRについては、以前にも書きましたが、ソーシャルVRへの道を強く打ち出しました。時代や場所が変わっても誰かとコミュニケーションしたいというニーズは普遍です。手紙、電話、メッセンジャー、ビデオチャットなどに続く、相手の存在感を感じられるよりリッチなコミュニケーション手段としてVRを活用していく未来が見えてきました。



 そして一体型VRヘッドマウントディスプレー「Santa Cruz」の開発を明らかにしたのも大きいです。VRヘッドマウントディスプレーは、大きく分けてPCやゲーム機につなぐ据え置き型、スマートフォンを使うモバイル型、単体で動作する一体型に分けられます。そして据え置き型はモーションコントローラーを使ったよりリッチな体験、モバイル型はスマートフォンがあれば安価に導入が可能、一体型はケーブルやOS画面がないので運用がより楽というメリットがあります。

 Oculusは、据え置き型ではRift、モバイル型ではサムスン電子との共同開発で「Gear VR」をそれぞれ用意しており、さらに一体型も押さえにきたということです。他社のハードを見てみると、HTCはグーグルが手がける高品位モバイルVR「DayDream」に使える「Pixel」を製造しているものの、表立ってはViveに集中しています。ソニー・インタラクティブエンタテインメントは、もちろんPS VRのみ。

 VR向けハードウェアも、最終的に「メガネぐらい手軽に装着できるものがいいね」といわれることも多いですが、今のところまだ黎明期で、どれがスタンダードというのは定まっていません。CTOのジョン・カーマックやチーフサイエンティストのマイケル・アブラッシュを始めとする人材を獲得し、さらにFacebookの大きなバックアップを受けて、さまざまな可能性をプロダクトに落としていけているのがOculusの強みかもしれません。


周辺機器の拡充でよさを伸ばすHTC Vive

 続けてHTC Vive。HTCと共同開発しているValve(というかValveの「SteamVR」構想にそってHTCが製造している)が、Steam Dev Daysで明らかにしたのはグリップ型コントローラーの存在でした。

 従来のスティック型のモーションコントローラーとは異なり、手を握ることでそのまま握る動作を指示できるのが、バーチャルとリアルの感覚を合わせる上で役立ってくれるでしょう。手のひらと指の付け根にはめ込むタイプのため、手を開いても落ちないのも嬉しいところ。筆者は触れていませんが、なんとなく今年1月のCESでサムスン電子が展示していた「rink」のコントローラーを思い出しました。

画像提供/DVERSE 沼倉氏

 ほかにも位置トラッキングシステムでも大きな動きがあり、小型化したベースステーションの2017年リリースを明らかにしています。海外VRメディア「Road to VR」の報道によれば、8月にサードパーティーに開放した位置トラッキング「SteamVR Tracking」について、300社以上が製品のリリースを検討しているとのことです。

 総じて、プラットフォームをなるべくオープンにして、多くのデベロッパーを巻き込んでいこうというのがHTC Viveの強みです。HTC ViveはOculus Riftとは異なり、BE(ビジネスエディション)を用意して商用での利用を開放しているため、国内でもイベントや店舗でのVR展示に多く使われています。よりあちらの世界での「実在感」を高めてくれる周辺機器がそろってくれば、この「お外でVR」の体験もより高めていけることは間違いなしです。


意外とケーブルが大変!?……なPS VR

 最後はPlayStation VRについて。これも先週語ってしまったのですが、やっぱりコンテンツの粒ぞろいな感じが素晴らしいですね! ファミ通調べでは、13〜16日の4日間で4万6492台のPS VRが売れたということ。また、1ヵ月前に比べてVRの認知度が男性で8.4%、女性で10.5%上昇しており、間違いなくVRの一般化を推し進めた存在になっています。

 いやー、これでVR業界もより楽しくなるぞ!と思っていましたが、意外と周囲で聞かれたのが、ケーブルの接続が大変だったという声です。あれだけ説明書も懇切丁寧で、さらにケーブルに番号まで振ってあって、筆者自身はまったく迷うことなくセットアップできたのですが……。

 確かに振り返ってみると、ゲームのコンソール機は電源をつないで、ソフトを差し込んだらすぐに遊べるという家電レベルの操作性が求められやすいです。もちろんPCに比べるとPS VRのセットアップは楽で、今のメインターゲットであるアーリーアダプターな方々にはそこまで苦にならなそうですが、ユーザーの期待値が高すぎた!? 一方で、VR機器をより多くの人が手元に置くためには、ケーブルの問題は避けて通れません。この辺は世代を重ねてPlayStation本体も含めてアップデートしていくしかなさそうです。

 ともかく「VR元年」の役者がそろった裏で、十分に簡単なハードウェア、使ってみたいと思わせるソフトウェア(&周辺機器)、ソフトを容易に入手・管理できたりフレンドと簡単につながれるプラットフォーム——といった軸で、各社が次の準備を進めていることは間違いないです。それぞれが2世代目でどんな進化を遂げるのか、やっぱり見逃せませんぞ!

著者近影

広田 稔(VRおじさん)

 フリーライター、VRエヴァンジェリスト。パーソナルVRのほか、アップル、niconico、初音ミクなどが専門分野。VRにハマりすぎて360度カメラを使ったVRジャーナリズムを志し、2013年に日本にVRを広めるために専門ウェブメディア「PANORA」を設立。「VRまつり」や「Tokyo VR Meetup」(Tokyo VR Startupsとの共催)などのVR系イベントも手がけている。


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