VR業界の動向に日本一詳しいと自負するエヴァンジェリスト「VRおじさん」が、今週のVR界の出来事をお知らせします!
どもども! VRおじさんことPANORAの広田です。今週でVRといえば、もうPlayStation VRの発売一色という感じですよね。PANORAでもセットアップのインプレッションを書きましたが、手軽に導入できるように考えられているところが本当に素晴らしいです。Twitterを検索する限り、10月13日以降、全国にVRおじさん、VRお兄さんが大量発生している状況で、筆者も「探さないでください」とばかりに「あちら」の世界に旅立っております。
その他、360度カメラ「THETA」のミドルレンジモデルである「THETA SC」が発表されたり、ZTEやアルカテルがVR対応のスマートフォンをリリースしたりといったニュースが出ておりました。が! 今週はもうPS VRをレビューするしかないでしょう! 3日触ったインプレッションをお届けしていきます。
ゲーム会社の本気が伝わって来るコンテンツ
PS VRは、間違いなくVR一般化の扉を大きく開いた存在になりました。日本における限り、これだけ多くの人が「VRすごい!」と絶賛し始めたというのは、90年代のVRブームぶりではではないでしょうか。2013〜2014年頃、Oculus Riftの初代開発キット(DK1)を開発者の方々が手にして、「こりゃすげぇ!」と異口同音に可能性を語り始めた状況を思い出す人も多いはず。
PS VRのよさは、上げていけばセットアップの手軽さや装着感の快適さなど、枚挙にいとまがありませんが、もっとも強いと感じたのがコンテンツのパワーです。当初、2016年の上半期に発売される予定だったPS VRですが、本体の生産が追いつかないということでリリースが秋に延期されました。ソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイドスタジオのプレジデント・吉田修平氏によれば、その間、上半期に間に合わせるように動いていたタイトルはより作り込むことができるようになったとのこと。さらにローンチタイトル数の増加にも、貢献したことでしょう。
その甲斐あって、「よくここまで詰めたなぁ」と驚くコンテンツが多いです。SIEが無料で配布しているミニゲーム集「THE PLAYROOM VR」では、VRボットの動きがよく考えられていて、とにかく可愛い! ミニゲームをこなしてコインを獲得し、UFOキャッチャーに投入して部屋をアップグレードしていけるのも、繰り返し遊んで楽しめる仕掛けになっています。
もうひとつSIEの5本をセットにした「PlayStation VR WORLDS」も、まずオープニングからして惹きつけられます。ライトボールが飛んできて、ユーザーの周囲を回って、最後にタイトルが現れるという一連の流れが、映画の中に自分が入ったような感動を受けます。深海とサメの怖さがビンビン伝わって来る「オーシャンディセント」、カーチェイスの銃撃戦がアツい「ロンドンハイスト」など、もともとE3や東京ゲームショウなどでデモで出していたものが、ストーリー構成や見せ方などさまざまな方面でパワーアップしています。
サードパーティーのタイトルも、もちろん粒揃いです。人間をビンビン感じさせる「サマーレッスン」、筆舌に尽くしがたい快楽「AREA-X」を実現した「Rez Infinite」、本当にライブ会場にいる感覚の「アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション」、まるで映画を観た後のように自分が強くなったように錯覚する「バットマン:アーカム VR」など、随所にセンスと丁寧さが感じられます。
ことわざをもじった「百見は一体験にしかず」という言葉もありますが、VRは体験しなければその価値がわかりません。そして、最初に体験したコンテンツが微妙だったり酔ってしまった場合、「VRって意外とそうでもないな」と次から敬遠されてしまう可能性がある。しかし、これだけ質の高い体験が可能なPS VRなら、さらに知人を連れてきて遊んでもらって……と、一般化の輪をさらに広げてくれることは間違いない。
操作やホーム画面が惜しい!
ただ、一方で現状でもったいないなと感じるのは、VRヘッドマウントディスプレーをつけたままの一貫した操作が難しいという点です。
PS VRを操作する際は、基本的に十字キーとアナログスティックなどがついた「DUALSHOCK4」を利用し、タイトルによってはスティック型で先にLEDがついた「PlayStation Move モーションコントローラー」が使えます。
バーチャル世界において、ユーザーにあちらにいる感覚を高めてもらうためには「手」を再現した方が有利で、そうするとPS Moveを使えた方がいい。ただ、対応コンテンツはすべてではなく、PS Moveに十字キーなどは用意されていないので、完全に同じ指示はできない。つまり、アイコンがずらりと並んだホーム画面はDUALSHOCK4で選んで、あるシーンがきたらPS Moveに持ち替える必要が出てきます。
ここで問題になるのが、バーチャル空間内に常にDUALSHOCK4やPS Moveが表示されていないので、「メガネ、メガネ……」バリに手探りする必要が出て来るということです。ライバルであるHTC ViveやOculus Riftでは、モーションコントローラーの位置が、VRヘッドマウントディスプレー内に表示されているので、すんなり手を伸ばして取れます。さらにHTC Viveでは、レーザーポインターで指してアイコンやボタンを選択可能です。現状、PS Moveについたストラップを常に手首に通しておけば、すぐに手に取れますけど、やっぱりバーチャル空間でも見えた方が何かと便利ですよね。
あとはDUALSHOCK4とPS Moveが並存していることで、両方の操作を考えなければいけないことも、開発のハードルをちょっとだけ上げてしまうかもしれません。
VRヘッドマウントディスプレーをかぶったときのホーム画面もVR専用になってないのも、もったいないところです。せっかくホーム画面でも360×180度が使えるのに、今までテレビで見ていたのと同じものが、目の前に大きなスクリーンとして現れるだけというのはちょっと寂しいところ。
このおかげで、従来のゲームやBlu-rayといったコンテンツを、そのまま大画面で見られるメリットにつながっているのですが、ゲームを切り替えるたびに、「おおっ……」という魔法がちょっとだけ覚める感じがもったいない。表示処理の軽いワイヤーフレームでもいいので、すべての方向に映像があるといいなと感じるのは筆者だけでしょうか!?
いろいろ言っていますが、それは割と「こうなったらもっとVR的にいいよね」という話で、PS VRは「買ってよかった」という感想しかありません。この体験はスマホやPCの画面では伝えらえないため、ぜひ未体験の人は持っている友人の家に遊びに行ってみてください。そして在庫が復活したらぜひPS VRをゲットして、まだ数ヵ月残っている「VR元年」を体感していきましょう。
広田 稔(VRおじさん)
フリーライター、VRエヴァンジェリスト。パーソナルVRのほか、アップル、niconico、初音ミクなどが専門分野。VRにハマりすぎて360度カメラを使ったVRジャーナリズムを志し、2013年に日本にVRを広めるために専門ウェブメディア「PANORA」を設立。「VRまつり」や「Tokyo VR Meetup」(Tokyo VR Startupsとの共催)などのVR系イベントも手がけている。
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