週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

乾電池1つで変わる世界 爆売れMaBeeeの裏側

2016年10月14日 07時00分更新

わかっている人だけでなく、わからない人には体験を

 しかし、クラウドファンディングでの販売と、一般の大手量販店での販売には大きな違いがあったと岡部氏は語る。クラウドファンディングでは、応援するという視点でMaBeeeを購入してくれる方が多かったのに対して、量販店での購入者は機能や使い方、価格に対してよりシビアだったという。

 また、量販店に置くということは、大手メーカーの製品と並ぶということになる。

 「ソニーやパナソニックの製品が並んでいて、その横にMaBeeeも並ぶ。消費者の方は同列でご覧になる方がほとんどで、逆にスタートアップだからという甘えはあまり許されないと痛感した」(岡部氏)

 岡部氏がとったのは、できるだけ体験の場を設けるというコミュニケーションだ。すでにクラウドファンディングなどで商品を知っている人もいる。そして、簡単な説明で理解してもらえる人もいる。直接話をすると「面白いね」と言ってそのまま購入する人もいたが、中には興味は示してくれるが、なかなか話だけでは理解されないことも多かった。

 「取り組みとしては3つ。ひとつが体験イベントでミニ四駆やライトにMaBeeeを実際に装着してひとつひとつ触っていただく。これを数カ所でやった。ただし、(スタートアップのため動員できる)人数が少なくできる回数にも限りがある。そこでデモムービーやカタログの販促物でそれを補った。また、量販店が専門コーナーを作ってくれたのも大きかった」(岡部氏)

 こうして一般発売は大成功となったが、まだまだ課題は残るという。MaBeeeはやはり説明が必要な商品だ。ただ棚に並べているだけでは、何ができる製品なのか理解されず、なかなか販売には繋がらない。積極的に説明を行い、販促物なども含めて展開している店舗では大きく動いているが、売り場展開による差が大きいのが、今後の課題といえそうだ。

BtoBでのMaBeee利用製品作りに注目

 現在のMaBeeeは単三形乾電池の形状を採用している。このモデルは、一般発売もスタートし、成功に至ったといえる。ではこの次にどのような展開があるのだろうか。岡部氏が語る2つの取り組みは、どちらもプラットフォーム展開を想定したものだ。

 1つが、アプリケーションを拡充するためのSDKの公開だ。MaBeeeをミニ四駆を装着したときに、タコメーターのような表示をアプリ上で表現したり、スマホをアクセルのように傾けて=踏み込むことで加速したりといった制御ができる。ゲーム性など、より遊びの幅が広がるということだ。

 「プラレールやミニ四駆、クリスマスのイルミネーションなどの光り物。アプリを変えることによって使い勝手や楽しさが広がると考えている。そこは自分たちで開発していく側面もあるが、SDKを使っていろんな開発者の方がβ版なり、簡単なものを作ってくれたら、それを一緒に商品に仕上げるために、開発していきたい」(岡部氏)

 もうひとつが、BtoBでのMaBeeeのテクノロジーを利用した製品作りだ。汎用的な電池スペースにMaBeeeをセットするのではなく、家電や玩具、日用品などに最初からMaBeeeのテクノロジーをセットしておく「Powered by MaBeee」という考え方だ。もちろん、これはノバルスだけではできないため、各社との協業になる。すでにいくつかの会社からそういった話がきているらしく、共同開発を進めていくことになるという。

 「要素技術としては、基盤と電池をつないで、スマートフォンで動かすというもの。電池の形でなくても、最終的にこの形になれば、いろんな物で使える」(岡部氏)

 岡部氏は、乾電池をIoT化するというアイデアについて、過去に考えた人は何人もいたと思う、と語る。ノバルスではそれを実現して製品を作るところまで達したが、考え方はシンプルなだけに、今後競合が現れる可能性もある。

 「パテントも複数件出願しているが、SDKなど、ハードウェアに加えてソフトウェアの部分、アプリケーションをしっかりと強化しいていくところを同時に進めたい」(岡部氏)

 現在、MaBeeeはコンシューマ向けの販売、売り上げで成り立っているが、当初から企業との協業によるBtoBを検討しているようだ。また、アプリケーションを進化させることによるサービス展開も視野に入れている。

 今後製造数が上がっていけば、現状よりも安くできるかもしれない。すると、「もっと安ければ買うのに」と思っているユーザーにも届く。そして使って見た結果、有償アプリも……という可能性もある。ハードウェア販売だけでなく、サービス、アプリケーションの組み合わせが、今後の展開として期待できそうだ。

 ハード面では、現在の単3形だけでなく、単1形、単2形なども検討しているという。目指しているのは、現在の単3形ケースに単4形乾電池を装着するのではなく、各サイズの電池の中にMaBeeeの機能が内蔵されていることだ。もちろん、その場合には「将来的には充電型なども考えたいと思っている」と岡部氏は語る。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事