どこまで自動化できる?95兆円市場の問題点を解決
まずは電話応答から Fintechに取り残された投資信託を変えるロボット投信
パートナーを迎え事業は本格化
本格的に事業として展開していくために心強い味方も加わった。インキュベイトファンド3号投資事業有限責任組合を引受先とする第三者割当増資によって、1億円の資金調達を得た。さらに投資だけでなく、インキュベイトファンドの村田祐介氏が社外取締役として、山田優大氏がCFOとしてロボット投信に加わり、経営に参加する。
これは野口氏自身が強く望んで実現したことだ。「共同創業者として、ビジネス的にきちんと仕切ってくれるパートナーが必要だと感じていた。それで何社か回り、インキュベイトファンドのジェネラルパートナーである村田さんとアソシエイトの山田さんに出会った。村田さんは、現在はベンチャーキャピタリストとして仕事をしているが、自身がスタートアップとしての起業を経験し、また証券会社のシステム開発業務などに携わった経験があったことで共通項が多かった。日本の金融業界が、人対人のコミュニケーション依存度が高いことに対する問題意識も共通していた。一緒にやっていくことを決めた大きな理由がそこにある」
CFOとして加わった山田氏は、前職のグリーでは社長室でオリンピック協賛等のコーポレートブランディングや部門の予算管理、投資案件のデューデリジェンス等を担当し、さらに財務戦略部にてIR、子会社事業管理へ従事した経歴をもっている。経営体制が強化されたことで、社員を新たに迎える準備も整った。
投資信託のUI、UXを根本から変えるようなサービスを
ちょうど1年前、野口氏は、既存産業を根本からひっくり返す目的をもったシードアクセラレータープログラム「Supernova」の第1期として見いだされ、事業を練り上げ、2016年7月に開催されたデモデイのピッチでは優勝を果たしている。
Fintechと聞くとつい、ブロックチェーンや人工知能、API開放といったテクノロジーの仕組みばかりが目に付くが、それだけでないことに気付かされる。金融業界であっても対顧客などの営業面や、その先の顧客サービスでの仕組み作りでは一般の企業とそう変わらず、まだまだ変えるべき環境があるようだ。
とはいえ、ロボット投信の場合は、水面下にあった金融商品のデータをまとめられるデータマイニングの技術も持っている点がポイントだ。出そうと思えば、自動化した金融関連のニュースメディアもできると野口氏はかつて話していた。
自動化という点で、電話の自動応答という古い仕組みがインターフェースとして真っ先に出ている点も興味深い。本来ならばデータを優先して高度化できる部分があったようだが、あえてそこは残している。商品自体が複雑化して、販売モデルも固定化し、提供する側も変えることが難しくなってしまっていたレガシーな業界をいかに変えられるかに注目したい。
目下、盛り上がりを見せるFintechだが、AIを活用してFacebookメッセンジャーで会話を行いながら金融投資相談を自動的に受けるといった、これまでの概念とはまったく違ったサービスも登場するようになっている。もちろん、そういったサービスはロボット投信でも提供することもできるという。
「電話すらかけず、問い合わせを受ける、相談をするといったUI、UXをまったく変えるようなサービスをこの先で提供したい。ロボット投信のサイトには、『投信業務の読む、書く、話すを自動化』と書いてあるが、まずは『話す』の自動化に取り組んでいるのが現段階。まだまだ自動化できる部分があるので、パートナーと一緒にそれを実現していきたい」
投信という専門性の高い金融商品を変えていくためのサービス作り、そしてそのサービスを事業として展開していく準備が整い、ロボット投信の事業はいよいよ本格化しようとしている。投資信託から横に広がっていき、最終的にどこまで人間の業務は自動化できるだろうか。
●ロボット投信株式会社
2016年5月設立。投資信託のコールセンター業務を自動化して提供する仕組みや、マーケティングデータ配信など、BtoBでの金融サービスを展開。
2016年9月、インキュベイトファンド3号投資事業有限責任組合を引受先とした第三者割当増資によって、1億円の資金調達を実施。
社員数は2016年10月時点で5名。サービスが本格化するにあたって、クオンツ、エンジニア、システムのサポート要員を集めている。
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