「世界を動かすイノベーションを九州から」を合い言葉に、ハッカソンを起点とするイノベーション創出プログラムとして生まれた「イノベート・ハブ九州」。本プログラムは全4日間で構成され、8月6日に開催されたDay1のアイデアソンで提出された中から選ばれた44組が参加し、2日目・3日目となるDay2&Day3 ハッカソンが8月27日・28日に開催された。
事業化を前提としたハッカソンとして、IBM Bluemixを利用した具体的な開発、そして本戦となるDay4 DemoDayに向けてのプレゼンテーションが行なわれた、熱い2日間をレポートする。
九州にまつわるデータを利用するハッカソン
「INNOVATE Hack Kyushu」は、九州にある観光、エンターテインメント、スポーツ、地域に根ざしたテクノロジー産業などの「ビジネスのもと」を組み合わせ、ハッカソンを通じて発掘された事業化していく試みだ。日本アイ・ビー・エムが主催し、ソフトバンク、ゼンリン、西日本新聞社、フォレストホールディングス、ふくおかフィナンシャルグループ、安川電機ほか、多くの企業が協賛している。
大きな特徴としては、協賛企業から提供されたリアルなデータを組み合わせて使うことができること。たとえば、ソフトバンクからはWi-Fiの利用状況から割り出された、福岡空港や博多駅周辺の人の流動データ、ゼンリンからは地図データ、西日本新聞社からは記事データ、安川電機からは産業用ロボット操作にまつわるデータなど、普段入手できない生の情報を企画・開発に使えるのが魅力だ。
これらのデータは、開発環境となるクラウドを基盤としたプラットフォームのIBM BluemixのAPIとして、Watsonやデータベース、IoTなどのAPIとともに、参加者が自由に組み込んで開発が行なえるように準備。当日は、協賛企業の担当者を含めたメンタリングも行なわれ、より具体的に事業化に近づけるよう、参加チームをフォローしていた。
今回参加の44組は、事前に行なわれたアイデアソンを経て審査を通過したチーム。アイデアソンには250人が地元九州で参加、東京のサテライト会場に50人、さらにネットでの参加者が200人と、総勢500人が集まった。その中から80組の応募があり、当初25組が通過する予定であったが、没にするには惜しい企画が多く、最終的に44組が参加するハッカソンとなった。
当日は、予定されていた会場に収まらない規模となり、Day2は急遽会場を増やし、福岡県Ruby・コンテンツ産業振興センターとIBM福岡事業所の2会場で開催。Day3は全チームが入れるTKP博多駅前シティセンターが用意された。
参加チームは高校生から80代まで、その差、実に60歳以上という幅広い年齢層。学生、企業、行政、さらに、海外からの参加者など、多種多様なチームが開発を行なった。「街・暮らし」、「観光・エンタメ・スポーツ」、「ロボティクス」、「ヘルスケア」の4テーマに対しての企画・開発となる。
複数企業のデータを組み合わせることで生まれる新しい価値
ハッカソンは2日間の進行説明からスタートし、その後、プレゼンに向けての開発となる。どのチームも真剣な顔つきで開発に取り組んでおり、会場では多少打ち合わせをしている声は聞こえるものの、ほとんど水を打ったような静けさの中、開発が行なわれていた。
メンタリングは開発時間中に、その企画に興味を持った協賛企業の担当者を交え、開発についての意見やアドバイス提供が行なわれる。このハッカソンでは実際に事業化することが前提となっているため、必要な要素について直接企業から意見がもらえることや、リアルなデータが用意されていることについて、参加者からは「とてもいい経験になる」といった意見が多数聞かれた。
Pepperをインターフェイスとして利用し、産業用ロボットとAI、そして身体障害者の社会参加についての開発を行なっていたチーム「Nishida Lab.」は、「自分たちが持っているプログラムに、なかなか入手できないリアルなデータを組み合わせることができてたいへんありがたい」と語り、「1つの企業だけでは実現できないことをタッグを組んで開発できる」と、今回のハッカソンで様々なデータが提供されることへの意義を高く評価していた。
10代の参加者が3名いるという若手チーム「高専Fab-Lab」は、「こういう機会はあまりないのでうれしい」と語り、自転車好きが高じて「こういうのがあったらいいなと思うナビゲートアプリ」を人工知能・地図APIなどを組み合わせて開発していた。進捗状況については苦戦しているとの話で、「明日のプレゼンに向けてがんばるしかない状況」と、残り時間との戦いに挑んでいた。
こうした参加チームの声を踏まえて、開発時間中のメンタリングや技術サポートも担当していた、日本アイ・ビー・エムのアドバイザリーITスペシャリストである宇藤 岬氏にお話をお伺いした。
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